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公開日2021年11月26日 21:27
更新日2021年12月04日 07:41
文字数
5220文字(約 17分24秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
シスター
視聴者役柄
魔術師
場所
修道院、教会
本編
【○周目】
おかえりなさい、魔術師さん。
いえいえ、そんな…
この修道院はもう魔術師さんのお家ですから。
遠慮なく、くつろいでいってください。
汗かきましたよね?
この時間に帰ってくると思って、お風呂沸かしてますから、よければ…
いえいえ、どうぞごゆっくり。
着替えは脱衣所に置いておきますので。
そういえば魔術師さん。
そろそろ主の生誕祭があるんですけど…
その際に、うちの修道院が管理してる孤児院の子どもたちに何か贈ろうと思うんですけど、何がいいと思います?
マフラー?いいですね!
ちょうどこれから寒くなりますし!
みんなの分編んであげよっと!
え?人数?えーっと…30人くらい?
あ、あはは…
すみません、いつも思いつきでモノを言っちゃって…
え⁉︎いえいえ!
魔術師さんに手伝ってもらうなんて、そんな…!
いつもここに泊めてくれるお礼、ですか…
いえ、それは…
この修道院は魔術師さんに守ってもらってますから。
魔族がたまに襲撃してくる際も、魔術師さんがすべて撃退していますし…
だからタダで泊めてることは気にしなくていいんです。
わたしたちの方こそ、いつも魔術師さんのお世話になってますから。
どうせ暇だからって…ふふっ、わかりました。
では、少し手伝っていただきますね。
はい、まずは材料の買い出しからです。
あ……おはようございます。
あはは、ちょっと夜なべしちゃいました…
マフラー編むのに夢中になっちゃって…
すみません。でも大丈夫です。
さ、今日も頑張らないと!
そろそろですね。主の生誕祭。
はい!もちろん楽しみです!
一年に一度の、主がこの世に誕生されたおめでたい日ですから!
…?どうかされました?浮かない顔をして…
そうですか?ならいいんですけど…
体調が悪いなら、遠慮なく言ってくださいね?
主よ、どうか罪深き我らに安息の時を与えたまえ…
…っ⁉︎どうかしました⁉︎
え、魔族の襲撃⁉︎そんな…!
早くみんなを避難させないと…!
あ、魔術師さん!
すみませんが、少しの間、敵の襲撃を足止めしてくれませんか⁉︎
え…?遅かったかってどういう…?
あれ…?魔術師、さん…?
【○○周目】
おかえりなさい、魔術師さん。
いえいえ、そんな…
この修道院はもう魔術師さんのお家ですから。
遠慮なく、くつろいでいってください。
汗かきましたよね?
この時間に帰ってくると思って、お風呂沸かしてますから、よければ…
いえいえ、どうぞごゆっくり。
着替えは脱衣所に置いておきますので。
そういえば魔術師さん。
そろそろ主の生誕祭があるんですけど…
その際に、うちの修道院が管理してる孤児院の子どもたちに何か贈ろうと思うんですけど、何がいいと思います?
マフラー?いいですね!
ちょうどこれから寒くなりますし!
みんなの分編んであげよっと!
え?人数?えーっと…30人くらい?
あ、あはは…
すみません、いつも思いつきでモノを言っちゃって…
そう、ですね…
わたし一人で全部作るのも大変ですし、他のシスターにも声をかけてみます。
…?魔術師さん?どうかされました?
なんだか顔色が良くないような…
なんでもない?それならいいんですけど…
体調が悪くなったら遠慮なく言ってくださいね?
わたしたちシスターが交代で看病しますので。
はい…どうかご無理はなさらず。
魔術師さんが辛そうな顔するのは、わたしも見てて辛いですから。
そろそろですね。主の生誕祭。
はい!もちろん楽しみです!
一年に一度の、主がこの世に誕生されたおめでたい日ですから!
…魔術師さん?何か言いました?
わたし相手に遠慮なんてしなくていいですよ?
…?はい、魔術師さんがいいなら、それでいいのですが…
主よ、どうか罪深き我らに安息の時を与えたまえ…
…魔術師さん?こんなところまで来て、どうかしましたか?
あ、主へのお祈りですか?なら一緒に…
え?今すぐここから逃げろってどういう…
魔術師さん…?そのお腹の傷…どうしたんですか?
これからこの教会を魔族の一団が襲撃してくるって…
じゃあその傷は魔族にやられて…⁉︎
嫌です!まだこの教会には多くの人々が残ってるんです!
わたし一人が逃げるなんて、できません!
はい、どうしてもです…!
ここでわたし一人が逃げて、命が助かったとしても、その命になんの価値があるというんですか…!
誰も助けられないなんて、シスター失格です…!
わたしは主に仕える者として、最後までここに残ります!
え……魔術師、さん…?何を……
【××周目】
おかえりなさい、魔術師さん。
いえいえ、そんな…
この修道院はもう魔術師さんのお家ですから。
遠慮なく、くつろいでいってください。
汗かきましたよね?
この時間に帰ってくると思って、お風呂沸かしてますから、よければ…
いえいえ、どうぞごゆっくり。
着替えは脱衣所に置いておきますので。
そういえば魔術師さん。
そろそろ主の生誕祭があるんですけど…
え?その日に教会への魔族の一団の襲撃があるから、それまでにこの街から逃げろって…
な、何言ってるんですか、魔術師さん。
冗談にしてもタチが悪いですよ。
神聖な主の誕生日に、そんな縁起の悪いことが起こるわけないじゃないですか。
ま、魔術師さん⁉︎落ち着いてください!
……ッッッ!!!
(ビンタする)
いくら魔術師さんでも、主に対する冒涜は許しません…!
主はわたしたちを救ってくださいます。必ず…!
あ………魔術師さん!
行っちゃった……
どうしたんだろう、すごく様子がおかしかっ、た、けど…
【○○○周目】
おかえりなさい、魔術師さん……
あれ?今何かすごいデジャブが…
気のせいだし、よくあること?
うーん…魔術師さんがそう言うなら、きっとそうなんでしょうね。
あ、それより、もうお風呂沸いてますので、どうぞゆっくり浸かってきてください。
うーん…何かおかしいような…
なんなんだろ、この違和感…
そ、それより今は孤児院の子どもたちに何を贈るか考えないと!
あ、魔術師さん!実は相談があって…
はい!うちの修道院が管理してる孤児院の子どもたちに何か贈ろうと思うんですけど……ッッ!!
マフラー…ですよね?
え、あ、あはは!なんでだろ!
魔術師さんが答えようとしてたこと、先に言い当てちゃうなんて!
超能力にでも目覚めたのかな〜、なんて…
魔術師さん…?
なんでそんな寂しそうな顔するんですか…?
終わらせないって、何がです…?
魔術師さん?その懐中時計、は、一体……
【×××周目】
あっ……そっか、そういうことだったんだ…!
魔術師さん…ダメ。
そんなことしちゃダメだよ…!
主よ、どうか力無き我が身に、哀れな子羊を救う力を与えたまえ…!
お願い…!お願いします…!
このままじゃ、また同じことを繰り返してしまう…!
どうか…どうか我が祈りを聞き入れたまえ…!
あ……魔術師、さん…
い、いえ!主に祈りを捧げていただけです!
はい………え?どうしてそのことを…
あっ……ち、違います!これは言葉の綾で…!
やめて……
もうこれ以上、同じことを繰り、返さな、いで…
【△△△周目】
主よ……哀れな子羊を…いいえ、わたしの大切な人を救うためにそのお力をお貸しください。
あの人は…今も苦しんでる。
自分の身を懸けて、わたしたちを護ろうとしている。
どのような代償も払ってみせますので…お願いします。
おかえりなさい、魔術師さん。
いえいえ、そんな…
この修道院はもう魔術師さんのお家ですから。
遠慮なく、くつろいでいってください。
あ、お風呂沸かしてあるんですけど…
その前にひとつ、いいですか?
そんなにお時間はとりません。
魔術師さん…もうこんなことはやめましょう?
何がだって…
もちろん、この同じ時間を繰り返すことです。
こんなことしても、貴方が苦しいだけです。
この先、何が起こるか分かってるんでしょう?
分かってるからこそ…貴方は停滞することを選んだ。
全部思い出したんです。
これまで繰り返してきた時間の記憶、すべてを。
どの時間軸でも、わたしたちは主の生誕祭の日に魔族の一団の襲撃を受け、全滅する。
わたしも貴方も修道院のみんなも…
貴方は最初その結果を変えるため、時間を巻き戻して襲撃してくる魔族を撃退しようとした。
けど魔族の力は強大で、貴方一人では太刀打ちできなかった。
そこで勇者のパーティや国の騎士団の力を借りようとしたけど、こんな辺境の地には誰も足を運ばなかった。
よしんば説得に成功したとしても、増援が到着する頃には、私たちは全滅してる。
そんなふうに何度も何度も巻き戻しているうちに…貴方は魔族を撃退することを諦めた。
どう足掻いても勝てないから…
だから貴方は、魔族が襲撃してくる前に時間を巻き戻すようになった。
幸せな時間を永遠に繰り返すために…
いいえ、誰も不幸な結末をむかえないために、貴方は停滞を選んだ…違いますか?
なぜわたしが今までの分の記憶を取り戻したのかって…
それは分かりません。
けどきっと、これは主の思し召しなんだと思います。
魔術師さん。貴方の選択はきっと間違っていない。けど間違ってる。
あはは…何言ってるかさっぱりですよね。わたしもです。
間違っていないのは、不幸な結末をむかえさせないという貴方の思い。
間違っているのは、停滞し続けることによって貴方が救われないという事実。
魔術師さんだって人間です。
こんなことを繰り返して、タダで済むはずないでしょう?
時間を操る禁術…やっぱりそうなんだ…
その禁術の代償は貴方自身。
つまり、使い続けることによって貴方という存在が、誰の記憶にも残ることなく消えてしまうということ…
…ザケナイデ。
ふざけないでって言ったの!!!
そんなこと、誰が頼んだの⁉︎
わたしは嫌だ!ヤダヤダ!
なんで魔術師さんが消えないといけないの⁉︎
誰の記憶にも残らないなんて…そんなの悲しすぎる…!
…答えて。
最終的にはどうするつもりだったの?
惚けないで。真面目に答えて。
貴方が消滅した後は…普通に考えれば時間は元通りになり、わたしたちは死んでしまう。
けどそうさせないための最終手段があるんでしょ?
……なんとなく予想してた通りだった。
「無かったことになった」これまでの膨大な時間をエネルギーに変換して、すべて自分にぶつける。
この旅支度……誰にも何にも言わず、この世界のどこかでひっそりと消えるつもりだったんでしょ?
そんなのダメ。貴方一人が消えるなんて絶対に許さない。
はい…だったらどうすればいいか、だよね。
わたしも最初は分からなかった。
主に祈り、すがりつくことしかできなかった。
けど…やっと手にしたんだ。
貴方を救うための力を。
見てて……開翼。
これが…貴方を救うために、主から授かった翼。
わたしみたいに翼を持つ人間のことを翼人っていうだね。初めて知った。
もう決めたことだからって…嫌。
貴方一人が消える結末なんて、わたしは認めない。
わたしは貴方と生きたい。
貴方と生きて、たくさん笑って、たくさん泣いて、たくさん怒って…
貴方との思い出をこれからもいっぱい作っていきたい。
さ、魔術師さん…わたしの手をとって。
これまでの全ての時間を集約して、元の時間軸に戻ろ?
わたしたちが本来いるべき元の時間軸に。
ううん、きっと大丈夫。
わたしと魔術師さんが二人で力を合わせれば。
未来に進むことを怖がらないで。
魔術師さんは一人じゃない。わたしがそばにいる。
魔術師さんを一人にしたりしないから。ね?
うん…二人でならきっと大丈夫。
今度こそ、本当のハッピーエンドを迎えられるように頑張ろ!
【⁇?周目】
…おかえりなさい、魔術師さん。
はい……やっと本当の意味で帰ってこられましたね…!
よかった…本当によかった…!
(抱きしめられる)
あ……初めてですね。
魔術師さんからそうやって接触してきてくれたの。
全部君のおかげだって…
いいえ、わたしは主のお力をお借りして、それを行使したに過ぎません。
魔術師さんが勇気を出して、わたしの差し出した手をとってくれたからこそですよ。
はい…魔族の一団は主の力に恐れをなして逃げていきましたね。
どの時間軸でもあれだけ暴れ回っていたのが嘘みたいでした。
え?もう一度君の綺麗な黄金の翼が見たい、ですか?
あまり人に見せびらかすものでもないですけど…
他ならぬ魔術師さんになら構いませんよ……開翼。
どう、ですか?
鏡で見るとなんだかメルヘンチックで、ちょっと恥ずかしいです…
あ、あはは。天使じゃないですよ、翼人です。
わたしはあくまで主のお力を借りている人間に過ぎないので。
さ、それより主の生誕祭も終わって、次は年が明ける準備をしなければなりませんね!
へ?今なんて?
え、えええっ⁉︎そ、そんな大袈裟な…!
俺の人生はすべて君に預けるって…そ、それはその…!
わ、わたしは主に仕える身ですので、その、結婚は…!
え?そうじゃなくて、僕(しもべ)にして欲しい?
〜〜〜ッッッ!も、もう!!紛らわしいよ!
人生をすべて預けるなんて言われたら、そっちの意味だと思っちゃうじゃん!
あ……(咳払い) いえ、敬語が取れたのはすみませんでした。
え、結構前から取れてた⁉︎嘘⁉︎
う、う〜…!魔術師さんの意地悪…!
もう…頭撫でて誤魔化そうったって、そうはいかないからね?
も〜!魔術師さんのバカバカ!おたんこなす!
ふふっ、あはは!
あはは……うん、そうだね。
敬語はとって、こっちの話し方にさせてもらうね。
魔術師さん。これから買い物に付き合って。
うん、年明けに向けて買わなきゃいけないものがたくさんあるから。
その、だから…手、繋ぎながら行こ?
うん…!これからまた改めてよろしくね。ふふっ♪
おかえりなさい、魔術師さん。
いえいえ、そんな…
この修道院はもう魔術師さんのお家ですから。
遠慮なく、くつろいでいってください。
汗かきましたよね?
この時間に帰ってくると思って、お風呂沸かしてますから、よければ…
いえいえ、どうぞごゆっくり。
着替えは脱衣所に置いておきますので。
そういえば魔術師さん。
そろそろ主の生誕祭があるんですけど…
その際に、うちの修道院が管理してる孤児院の子どもたちに何か贈ろうと思うんですけど、何がいいと思います?
マフラー?いいですね!
ちょうどこれから寒くなりますし!
みんなの分編んであげよっと!
え?人数?えーっと…30人くらい?
あ、あはは…
すみません、いつも思いつきでモノを言っちゃって…
え⁉︎いえいえ!
魔術師さんに手伝ってもらうなんて、そんな…!
いつもここに泊めてくれるお礼、ですか…
いえ、それは…
この修道院は魔術師さんに守ってもらってますから。
魔族がたまに襲撃してくる際も、魔術師さんがすべて撃退していますし…
だからタダで泊めてることは気にしなくていいんです。
わたしたちの方こそ、いつも魔術師さんのお世話になってますから。
どうせ暇だからって…ふふっ、わかりました。
では、少し手伝っていただきますね。
はい、まずは材料の買い出しからです。
あ……おはようございます。
あはは、ちょっと夜なべしちゃいました…
マフラー編むのに夢中になっちゃって…
すみません。でも大丈夫です。
さ、今日も頑張らないと!
そろそろですね。主の生誕祭。
はい!もちろん楽しみです!
一年に一度の、主がこの世に誕生されたおめでたい日ですから!
…?どうかされました?浮かない顔をして…
そうですか?ならいいんですけど…
体調が悪いなら、遠慮なく言ってくださいね?
主よ、どうか罪深き我らに安息の時を与えたまえ…
…っ⁉︎どうかしました⁉︎
え、魔族の襲撃⁉︎そんな…!
早くみんなを避難させないと…!
あ、魔術師さん!
すみませんが、少しの間、敵の襲撃を足止めしてくれませんか⁉︎
え…?遅かったかってどういう…?
あれ…?魔術師、さん…?
【○○周目】
おかえりなさい、魔術師さん。
いえいえ、そんな…
この修道院はもう魔術師さんのお家ですから。
遠慮なく、くつろいでいってください。
汗かきましたよね?
この時間に帰ってくると思って、お風呂沸かしてますから、よければ…
いえいえ、どうぞごゆっくり。
着替えは脱衣所に置いておきますので。
そういえば魔術師さん。
そろそろ主の生誕祭があるんですけど…
その際に、うちの修道院が管理してる孤児院の子どもたちに何か贈ろうと思うんですけど、何がいいと思います?
マフラー?いいですね!
ちょうどこれから寒くなりますし!
みんなの分編んであげよっと!
え?人数?えーっと…30人くらい?
あ、あはは…
すみません、いつも思いつきでモノを言っちゃって…
そう、ですね…
わたし一人で全部作るのも大変ですし、他のシスターにも声をかけてみます。
…?魔術師さん?どうかされました?
なんだか顔色が良くないような…
なんでもない?それならいいんですけど…
体調が悪くなったら遠慮なく言ってくださいね?
わたしたちシスターが交代で看病しますので。
はい…どうかご無理はなさらず。
魔術師さんが辛そうな顔するのは、わたしも見てて辛いですから。
そろそろですね。主の生誕祭。
はい!もちろん楽しみです!
一年に一度の、主がこの世に誕生されたおめでたい日ですから!
…魔術師さん?何か言いました?
わたし相手に遠慮なんてしなくていいですよ?
…?はい、魔術師さんがいいなら、それでいいのですが…
主よ、どうか罪深き我らに安息の時を与えたまえ…
…魔術師さん?こんなところまで来て、どうかしましたか?
あ、主へのお祈りですか?なら一緒に…
え?今すぐここから逃げろってどういう…
魔術師さん…?そのお腹の傷…どうしたんですか?
これからこの教会を魔族の一団が襲撃してくるって…
じゃあその傷は魔族にやられて…⁉︎
嫌です!まだこの教会には多くの人々が残ってるんです!
わたし一人が逃げるなんて、できません!
はい、どうしてもです…!
ここでわたし一人が逃げて、命が助かったとしても、その命になんの価値があるというんですか…!
誰も助けられないなんて、シスター失格です…!
わたしは主に仕える者として、最後までここに残ります!
え……魔術師、さん…?何を……
【××周目】
おかえりなさい、魔術師さん。
いえいえ、そんな…
この修道院はもう魔術師さんのお家ですから。
遠慮なく、くつろいでいってください。
汗かきましたよね?
この時間に帰ってくると思って、お風呂沸かしてますから、よければ…
いえいえ、どうぞごゆっくり。
着替えは脱衣所に置いておきますので。
そういえば魔術師さん。
そろそろ主の生誕祭があるんですけど…
え?その日に教会への魔族の一団の襲撃があるから、それまでにこの街から逃げろって…
な、何言ってるんですか、魔術師さん。
冗談にしてもタチが悪いですよ。
神聖な主の誕生日に、そんな縁起の悪いことが起こるわけないじゃないですか。
ま、魔術師さん⁉︎落ち着いてください!
……ッッッ!!!
(ビンタする)
いくら魔術師さんでも、主に対する冒涜は許しません…!
主はわたしたちを救ってくださいます。必ず…!
あ………魔術師さん!
行っちゃった……
どうしたんだろう、すごく様子がおかしかっ、た、けど…
【○○○周目】
おかえりなさい、魔術師さん……
あれ?今何かすごいデジャブが…
気のせいだし、よくあること?
うーん…魔術師さんがそう言うなら、きっとそうなんでしょうね。
あ、それより、もうお風呂沸いてますので、どうぞゆっくり浸かってきてください。
うーん…何かおかしいような…
なんなんだろ、この違和感…
そ、それより今は孤児院の子どもたちに何を贈るか考えないと!
あ、魔術師さん!実は相談があって…
はい!うちの修道院が管理してる孤児院の子どもたちに何か贈ろうと思うんですけど……ッッ!!
マフラー…ですよね?
え、あ、あはは!なんでだろ!
魔術師さんが答えようとしてたこと、先に言い当てちゃうなんて!
超能力にでも目覚めたのかな〜、なんて…
魔術師さん…?
なんでそんな寂しそうな顔するんですか…?
終わらせないって、何がです…?
魔術師さん?その懐中時計、は、一体……
【×××周目】
あっ……そっか、そういうことだったんだ…!
魔術師さん…ダメ。
そんなことしちゃダメだよ…!
主よ、どうか力無き我が身に、哀れな子羊を救う力を与えたまえ…!
お願い…!お願いします…!
このままじゃ、また同じことを繰り返してしまう…!
どうか…どうか我が祈りを聞き入れたまえ…!
あ……魔術師、さん…
い、いえ!主に祈りを捧げていただけです!
はい………え?どうしてそのことを…
あっ……ち、違います!これは言葉の綾で…!
やめて……
もうこれ以上、同じことを繰り、返さな、いで…
【△△△周目】
主よ……哀れな子羊を…いいえ、わたしの大切な人を救うためにそのお力をお貸しください。
あの人は…今も苦しんでる。
自分の身を懸けて、わたしたちを護ろうとしている。
どのような代償も払ってみせますので…お願いします。
おかえりなさい、魔術師さん。
いえいえ、そんな…
この修道院はもう魔術師さんのお家ですから。
遠慮なく、くつろいでいってください。
あ、お風呂沸かしてあるんですけど…
その前にひとつ、いいですか?
そんなにお時間はとりません。
魔術師さん…もうこんなことはやめましょう?
何がだって…
もちろん、この同じ時間を繰り返すことです。
こんなことしても、貴方が苦しいだけです。
この先、何が起こるか分かってるんでしょう?
分かってるからこそ…貴方は停滞することを選んだ。
全部思い出したんです。
これまで繰り返してきた時間の記憶、すべてを。
どの時間軸でも、わたしたちは主の生誕祭の日に魔族の一団の襲撃を受け、全滅する。
わたしも貴方も修道院のみんなも…
貴方は最初その結果を変えるため、時間を巻き戻して襲撃してくる魔族を撃退しようとした。
けど魔族の力は強大で、貴方一人では太刀打ちできなかった。
そこで勇者のパーティや国の騎士団の力を借りようとしたけど、こんな辺境の地には誰も足を運ばなかった。
よしんば説得に成功したとしても、増援が到着する頃には、私たちは全滅してる。
そんなふうに何度も何度も巻き戻しているうちに…貴方は魔族を撃退することを諦めた。
どう足掻いても勝てないから…
だから貴方は、魔族が襲撃してくる前に時間を巻き戻すようになった。
幸せな時間を永遠に繰り返すために…
いいえ、誰も不幸な結末をむかえないために、貴方は停滞を選んだ…違いますか?
なぜわたしが今までの分の記憶を取り戻したのかって…
それは分かりません。
けどきっと、これは主の思し召しなんだと思います。
魔術師さん。貴方の選択はきっと間違っていない。けど間違ってる。
あはは…何言ってるかさっぱりですよね。わたしもです。
間違っていないのは、不幸な結末をむかえさせないという貴方の思い。
間違っているのは、停滞し続けることによって貴方が救われないという事実。
魔術師さんだって人間です。
こんなことを繰り返して、タダで済むはずないでしょう?
時間を操る禁術…やっぱりそうなんだ…
その禁術の代償は貴方自身。
つまり、使い続けることによって貴方という存在が、誰の記憶にも残ることなく消えてしまうということ…
…ザケナイデ。
ふざけないでって言ったの!!!
そんなこと、誰が頼んだの⁉︎
わたしは嫌だ!ヤダヤダ!
なんで魔術師さんが消えないといけないの⁉︎
誰の記憶にも残らないなんて…そんなの悲しすぎる…!
…答えて。
最終的にはどうするつもりだったの?
惚けないで。真面目に答えて。
貴方が消滅した後は…普通に考えれば時間は元通りになり、わたしたちは死んでしまう。
けどそうさせないための最終手段があるんでしょ?
……なんとなく予想してた通りだった。
「無かったことになった」これまでの膨大な時間をエネルギーに変換して、すべて自分にぶつける。
この旅支度……誰にも何にも言わず、この世界のどこかでひっそりと消えるつもりだったんでしょ?
そんなのダメ。貴方一人が消えるなんて絶対に許さない。
はい…だったらどうすればいいか、だよね。
わたしも最初は分からなかった。
主に祈り、すがりつくことしかできなかった。
けど…やっと手にしたんだ。
貴方を救うための力を。
見てて……開翼。
これが…貴方を救うために、主から授かった翼。
わたしみたいに翼を持つ人間のことを翼人っていうだね。初めて知った。
もう決めたことだからって…嫌。
貴方一人が消える結末なんて、わたしは認めない。
わたしは貴方と生きたい。
貴方と生きて、たくさん笑って、たくさん泣いて、たくさん怒って…
貴方との思い出をこれからもいっぱい作っていきたい。
さ、魔術師さん…わたしの手をとって。
これまでの全ての時間を集約して、元の時間軸に戻ろ?
わたしたちが本来いるべき元の時間軸に。
ううん、きっと大丈夫。
わたしと魔術師さんが二人で力を合わせれば。
未来に進むことを怖がらないで。
魔術師さんは一人じゃない。わたしがそばにいる。
魔術師さんを一人にしたりしないから。ね?
うん…二人でならきっと大丈夫。
今度こそ、本当のハッピーエンドを迎えられるように頑張ろ!
【⁇?周目】
…おかえりなさい、魔術師さん。
はい……やっと本当の意味で帰ってこられましたね…!
よかった…本当によかった…!
(抱きしめられる)
あ……初めてですね。
魔術師さんからそうやって接触してきてくれたの。
全部君のおかげだって…
いいえ、わたしは主のお力をお借りして、それを行使したに過ぎません。
魔術師さんが勇気を出して、わたしの差し出した手をとってくれたからこそですよ。
はい…魔族の一団は主の力に恐れをなして逃げていきましたね。
どの時間軸でもあれだけ暴れ回っていたのが嘘みたいでした。
え?もう一度君の綺麗な黄金の翼が見たい、ですか?
あまり人に見せびらかすものでもないですけど…
他ならぬ魔術師さんになら構いませんよ……開翼。
どう、ですか?
鏡で見るとなんだかメルヘンチックで、ちょっと恥ずかしいです…
あ、あはは。天使じゃないですよ、翼人です。
わたしはあくまで主のお力を借りている人間に過ぎないので。
さ、それより主の生誕祭も終わって、次は年が明ける準備をしなければなりませんね!
へ?今なんて?
え、えええっ⁉︎そ、そんな大袈裟な…!
俺の人生はすべて君に預けるって…そ、それはその…!
わ、わたしは主に仕える身ですので、その、結婚は…!
え?そうじゃなくて、僕(しもべ)にして欲しい?
〜〜〜ッッッ!も、もう!!紛らわしいよ!
人生をすべて預けるなんて言われたら、そっちの意味だと思っちゃうじゃん!
あ……(咳払い) いえ、敬語が取れたのはすみませんでした。
え、結構前から取れてた⁉︎嘘⁉︎
う、う〜…!魔術師さんの意地悪…!
もう…頭撫でて誤魔化そうったって、そうはいかないからね?
も〜!魔術師さんのバカバカ!おたんこなす!
ふふっ、あはは!
あはは……うん、そうだね。
敬語はとって、こっちの話し方にさせてもらうね。
魔術師さん。これから買い物に付き合って。
うん、年明けに向けて買わなきゃいけないものがたくさんあるから。
その、だから…手、繋ぎながら行こ?
うん…!これからまた改めてよろしくね。ふふっ♪
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