ん？この気配…お客さんだな。

最近、ひっきりなしにやってくるが…

やれやれ、仕方ねえな。

ちょっくら出迎えに行くか。



ほぉ〜…こりゃ驚いた。

まさか勇者が女だったなんてな。

いや？別に悪かねえよ。

ただ、女の勇者ってのを初めて見ただけだ。

は？おいおい、そりゃ濡れ衣ってやつだ。

俺はその辺のドラゴンと違って、人里でむやみやたらに暴れ回ったりしねえよ。

聞く耳なし、か。やれやれ…

しかし、参ったな…いや、マジで困った。

ん？あぁ俺な、女と戦う趣味ねえんだわ。

いや、なめてるわけじゃねえよ。

俺、女は愛でるもんだと思ってるから。

その麗しい顔に傷でもついたら大変だろ？

それをなめてるって言うんだって…

そうなんの？やっぱ。

おっと……落ち着けよ、お転婆なお嬢さん。

その余裕ぶった態度がムカつくし、その汚らわしい手を離せって……

初対面でそこまで嫌われると、俺の立つ瀬がなくなるぜ。

しゃーねぇ…じゃ、こうすっか。

お前が勝ったら、そのまま俺を討伐してもらって構わねえよ。

ただし、俺が勝ったら…お前は俺のモンだ。

つまり、俺と一生を添い遂げろっつーこと。わかる？

ははっ、なんだ？今さら怖気付いたのか？

ドラゴンの嫁になんのは、やっぱ怖えか？

なんでって、そりゃお前…

可愛いからに決まってんだろ。

ははっ、一回可愛いって言われたくらいで照れんなよ。興奮するだろ？

へー、怒った顔も可愛いな。やっぱ元が良いからか。

へいへい。そんじゃ、少しだけお戯れに付き合ってあげますよ、お嬢様。



結構強えじゃん。やるな、お前。

バカにしてねえよ。素直に感心しただけだ。

んなことより、どうする？

だいぶ息切れしてるみたいだけど。降参するか？

おっ？これから本気出すってか？

面白えな。かかってこいよ。

お前の愛、全部受け止めてやっから。



あー、いつつ…こりゃ見誤ったな…

まさかお嬢さん、竜殺し(ドラゴンスレイヤー)だったとはな…

へへっ、おかげでどてっ腹に穴開いちまった…

いんや？まだ負けてねえよ？

俺もこう見えて結構負けず嫌いなんだわ、これが。

女に追い詰められるなんてシチュエーション、初めてでゾクゾクするわ。

貴重な経験さしてくれてありがとよ。

っつーわけで、こっからは俺のターンな。

本当はブサイクになるから、この姿は見せたくなかったんだけどな…そうも言ってられねえか。

本物のドラゴンの強さってやつを教えてやるよ。覚悟しな。



よっ。目ぇ覚めたか？

安心しろ。怪我は全部治してやったから。

どうやってって…ほれ。こうやって血垂らして。

竜血って言ってな、人間の怪我の治癒に役立つらしい。

ま、風の噂で聞いただけだから、実際に治るかどうかは分かんなかったけどな！ははは！

どうどう。んな怒んなよ。

あー、お前の剣？

わり、壊しちまった。

流石に俺の腹貫いた剣置いとくのは、あんまいい気分しねえから。悪いな。

竜殺しの剣か…

おっそろしいもん作り出すんだな、人間ってのは。

んながっかりすんなよ。

あんなもん、これから俺の嫁になるお前には必要ねえだろ。

は？じゃねえよ。

最初にした約束、もう忘れたのか？

今さら嫌とは言わせねえよ。

約束は約束だからな。ちゃんと守ってもらうぜ。

その悔しそうな顔も悪くねえな。ありだ。

…ったく。その生意気なお口はチャック、だ。

(キス)

ははっ、なんだその満更でもなさそうな顔。

これは脈ありか？

おいおい、そっぽ向くなよ。ちゃんと俺を見ろ。

そう、その可愛い瞳に俺をしっかり映せ。

安心しろ、痛いことは何もしねえから。

お前は今日から俺の嫁。

きちんと可愛がってやるからよ…

・台本（ゆるボイ！）
俺様な竜人は自分を討伐しにきた女勇者を嫁にしたい
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎