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森のアルラウネさんに囚われる
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  • 少女
  • 人外 / モンスター
公開日2022年02月12日 00:27 更新日2022年02月12日 00:27
文字数
3107文字(約 10分22秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
指定なし
演者人数
1 人
演者役柄
モウセンゴケのアルラウネ(花妖精)
視聴者役柄
魔獣ハンター
場所
あらすじ
行方不明になった騎士団員の捜索のため、魔獣の潜み棲む森に立ち入った魔獣ハンターのあなた。
そこまで深く立ち入ったわけではなかったが、不意に足場が崩れ、落下してしまう。
そこで、あなたは一人の少女に出会う。
彼女はアルラウネなのだという。

※タイトルは自由に改変して構いません。
本編
きゃっ!

お、おにいさん?

あの……大丈夫ですか?

お怪我は、無かったですか?

はー、それは良かったです。

ここら辺は草が生い茂っているのに足元が悪いですから、

天然の落とし穴みたいになっていて、

こういう窪地くぼちに気付かずに足を滑らせて落ちてしまう方が多いんです。

ええと、それで……どうされたんですか?

こんな山奥まで。

ここ、普通の人が立ち入るのは難しい場所なんですけど……。

お兄さん、もしかしてハンターさんですか?

なるほど、やはりそうでしたか。

あ、わたしは名乗るほどの者ではありません。

この辺りに自生している草花くさばなの妖精です。

アルラウネ、と言えば通りが良いでしょうか?

それにしても、お兄さんよく骨折とかしませんでしたね?

……なるほど、魔獣専門のハンターさんでしたか。

それなら、高いところから落ちても、うまく受け身をとるのも朝飯前、というわけですね。

魔獣専門のハンターさん、ということは、こちらの山には何かの依頼で?

ふむふむ……『この山に入ったきり帰らない騎士団員の捜索』……ですか……。

……え? 情報……ですか?

うーん、王国の騎士団の方となると、相当に腕が立つとお聞きします。

そんな方がこのあたりで行方不明とは……。

このあたりに、騎士団の方を打ち負かすような強い魔獣さんはいませんよ?

それにしても、どうしてその方は、ひとりでこんな森なんかに?

希少な植物の……密売……ですか。

なるほど……騎士団にもそういう素行そこうの悪い方がいらっしゃるのですね。

あ、すみません、大したお話もできなくて。

そればかりか、わたしばっかりお話をきいて。

いえいえ、お礼されるようなことはなにも!

あ……血が……

お兄さん、……足から血が出ています。

多分ですが、落ちてきたときに木の枝とか、刺のある葉っぱとかで切ったのだと思います……。

止血しないとですね。

このあたりは毒を持った花もありますから……ちゃんと手当をしないと危ないです。

おにいさん、ちょっとこちらへ。

あ、この緑と赤の触手みたいなのは、私が操ってるものです。

怖がらなくて大丈夫ですよ?

これ私の身体の一部、みたいなものですから。

多分ですが、この傷、落ちたことでびっくりして痛みに気付かなかったのだと思います。

こうやって、足に巻き付いて、とりあえずこのくらいで良いかな?

強いですか? 痛い?

でも、ちゃんと圧迫しないと止血できませんから、ちょっと我慢してくださいね?

わかりますか? この触手みたいなのから出ている粘液。

これには止血作用とか、殺菌作用、みたいなものもあるのですよ。

おにいさん? どうしたんですか? そんな怖い顔して。

ふふふ。

あれ? もしかしてお兄さん、私が悪い魔物だと判断しちゃってません?

あー、確かに、今の私、おにいさんの自由を奪う、魔物……ですね。

お兄さん、もしかして剣を抜こうとしてます?

……お探し物はこれですか?

すみません、こんな泥棒みたいな真似をするつもりは無かったんですが、

突然落ちてきた人が剣を持っていましたので、つい。

さっきの触手みたいなので絡めとっちゃいました。

正確には触手じゃなくて、ねばねばの毛って書いて、粘毛ねんもうっていうのが生えてる、細長い葉っぱなんですけど。

私の葉っぱ、こんなふうに粘毛ねんもうからねばねばしてくっつく粘液を出していまして、

その上、こんなふうに、うにょうにょと自由にうごかせるので、

持ち物を奪う、みたいなことは簡単にできちゃうんです。

ああ、そんなに心配しないでください。

私が悪い魔物じゃないってことを分かってもらったら、ちゃんとお返ししますよ。

わたし、別にあなたをとって食おうだなんて思っていませから。

そんなに警戒しないでくださいよ。

……ですから、これはただ止血のためのものですよ?

ん? 魔法陣? お兄さん魔術も使えるんですか。

それはそうか。魔獣ハンターさんでしたもんね。

それは火の魔術の詠唱ですね。

では、ごめんなさい、さっきのねばねば葉っぱで口も塞いじゃいますね。

はい。

人の魔術はすごいのですが、詠唱しないといけないのが大変ですよね……。

こうやって、口を塞がれたら、何もできない。

ああ、そんなにもだえないでください。

安静にさせるために、もっとねばねば葉っぱを増やさないといけないじゃないですか。

ふふふ、お兄さん、もう全身、ねばねばで巻き付かれちゃいましたね?

ああ、でも怯えないで?

私のねばねば、温かくてきもちいいでしょう?

ふふふ、心配しないでください?

さっきから言っているじゃないですか。

私、あなたに危害なんて加えるつもりはありませんって。

でも、そんなに激しく動かれると……。

危害を加えないといけなくなっちゃう、かもしれないですよ?

ようやく落ち着いてくれましたか?

怖がらせちゃって、ごめんなさい。

おにいさん、……あのですね。

わたし、おにいさんを見て、びびっと来ちゃいました。

あの、こういうことを言うと、軽い女って思われるかもしれないのですが、

恋に、落ちちゃいました。

……恋って落とし穴みたいですね。

何もないと思っていつもと同じように歩いていたら、突然落ちてしまう。

ねえ、おにいさん。

魔獣ハンターなんて危ないことはやめて、私と一緒に、ここで暮らしませんか?

どうしたんですか? そんな怯えた顔して。

もう、無視しないでなにか返事してくださいよ……。

あ、ごめんなさい。口を塞いだままでしたね。

え? ……はっ、ごめんなさい!

片付けていませんでした。

ひどくはしたないところをお見せしてしまって、すいません。

ああ、あの方でしたら、先日こちらに落ちてきた戦士さんですかね。

この方は、私を見るなり倒そうと攻撃してきましたので、養分になりました。

ごめんなさい、ちょっと見えないところにどかしておきますね。

あれ……言っていませんでしたっけ。

私は草花の妖精の中でもアルラウネ・ドロセラといって、モウセンゴケの妖精です。

分かりますか? モウセンゴケって。

ねばねばの粘液を葉っぱから出して、飛んできた虫を絡めとって、養分にしてしまう。

食虫植物、というやつです。

ちょっと残酷、と思う方もいると思いますが……。

私たちも生きるために必要なことをした、というだけなのですよ。

え? あの方、くだんの騎士団員さんだったのですか。

これはすみません。

王国の騎士は強いと聞いていましたから、

あんまり弱かったので、そうと気が付きませんでした。

……。

大丈夫ですよ。

おにいさんの事は養分にしたりはしないです。

言ったじゃないですか。

……危害を加えるようなことはしないって。

さっきの言葉に嘘偽りはありませんよ。

私、あなたに恋をしてしまったんです。

ねえ、おにいさん、ずっとここで暮らしましょうよ?

この辺りに強い魔獣がいないの、全部私が養分にしちゃったから、なんですよ。

おにいさんが、どうしてハンターをやっているかはわかりませんが、

安心できるくらしのために、狂暴な魔獣を倒すっていう利害は一致していると思いませんか?

それに、私、おにいさんのこと、守ってあげます。

私、食虫植物なので、おにいさんにつく悪い虫も、全部退治してあげます。

……それに、私のこの粘毛から出ている粘液……とってもきもちいいのですよ?

……え? ちょ、違います。そういう意味じゃないです……。

おにいさんのえっち。

お返事……聴かせてはもらえませんか?

……そうですか。

確かに、さっき会ったばかりでは、何とも言えない、というのも、一理あります。

私は、おにいさんを見たときに、びびっと来て、もう運命の人だって思ったのに。

おにいさんはそうじゃなかったんですね。

それは、少し残念です。

でも、私、諦めませんよ。

おにいさんは、物理的に、私から逃れることはできないのですから。

だから、これから時間をかけて、おにいさんに私の良さ、知ってもらおうと思うんです。

絶対に、私のこと好きになってもらいますから。

……よろしくお願いしますね。おにいさん。
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
森のアルラウネさんに囚われる
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
剣城・アイスドーラ・凍子
ライター情報
つるぎ あいすどーら とうこ
剣城・アイスドーラ・凍子です。

駆け出しの台本師

Twitter:@Ice_dola

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