周りの人に恵まれず、孤独の中にいる「彼女」は、ある時妖狐である「彼」に見初められ溺愛されます。

彼女の冷遇を黙って見ていられない彼は、彼女を自分の世界に連れていくため駆け落ちを提案。

まだ夜が明ける前、落ち合った2人は彼の世界へと旅立って行くのでした……

(彼女を見つけて)こっちこっち。あっ、暗いから足元に気をつけて。走らなくていいよ〜

(彼女が駆け寄り、胸に飛び込んでくる)わ、ふふっ。抱きついちゃって可愛いなあ。ぎゅー。よしよし。

いい子だね。荷物重たいでしょ。こっちに貸してごらん？

よいしょっと。……おっきい鞄だね。

うん、そうだよね。君の大事なもの全部入ってるんだもんね。忘れ物はないかな？

よし、オッケー。それじゃあ行こっか。ほら、手つなご？

(何度も後ろを振り向いている彼女に気がついて、)

……やっぱり、こっちの世界が名残惜しい？君が嫌なら、今日のところは……

わ、ごめんごめん、泣かないで。よしよし、いい子いい子。よしよし。

(しばらく頭を撫で続けて、彼女が落ち着いてから)

ごめんね、そういうつもりじゃなかったんだ。そうだよね、君がせっかく決意してくれたのに、本当にごめん。

僕は前にも言ったとおり、君を手放す気なんてさらさらないんだよ。

ただ、僕の世界に連れて行っちゃうと、人間界にはもう戻ってこられないから……

(彼女の言葉に相槌を打って)うん、うん。それでも僕と一緒にいたいって……うん。ありがとう。

絶対に君を幸せにするから。約束する。

……家族やお友達にはお別れの挨拶済ませてきたかな？

……うん、うん。

シカトされちゃった、か……そっか。

君の家族を悪く言いたくないけど、僕から見ても本当に腹ただしい奴らだ。

僕の術で懲らしめてやって……え、もういいのって？

君は本当に心優しい人だね。あんな仕打ちを受けて、彼らを庇うなんて……

僕はね、君に一目惚れした時から君のことが好きで好きでたまらないんだけど、君がここで幸せな生活を送っているなら身を引こうって思っていたんだ。

それで君の様子を影から見守っていたんだけど……あんな人間たちに傷つけられて、一人で涙を流している君が切なくていじらしくて。

絶対に僕たちの世界に連れ去ろうって決心したんだ。

ごめんね、愛が重くって。

(怒ったように、だんだん強い口調で)でも本当に許せないな。特に君の両親とあの屑の元彼といじめっ子と……やっぱりこの術で火に炙ってやればよかった

(彼女に声をかけられ、ハッとして)え？今が幸せだからもういいの……って？

貴方が私のこと沢山想ってくれるからもういい……(感激して)うん、うん！

僕があの人たちの分まで君のこと、愛して愛して、愛し抜くからね。

約束する。君のことを永遠に愛し続けるよ。

安心して。これからは僕が君の両親にも、兄にも、恋人にも、夫にもなって愛を注ぎ続けるから、ね？

うん、じゃあそろそろ行こうか。

ね、あっちに行ったら豪華な結婚式をあげようね。

え、貴方の世界の人達に受け入れてもらえるか不安……って？

大丈夫だよ。安心して。僕の運命の人を見つけたって言ったらみんな大喜びして、君のことを今か今かと心待ちにしているんだ。

きっといい友達もできると思う。ここと違って、向こうは優しい人たちばかりだから。

ねえ、ドレスはどんなのがいいかな？他にもやりたいことがあったら遠慮なく言ってね。

君の願いはなんでも叶えてあげたいんだ。

君の今までの人生の分、いや、それ以上に幸せにしてあげるからね。楽しいことがいっぱい待ってるから。

え？詳しいことは向こうについてからね。ふふ、楽しみにしてて。

よし、じゃあ本当にもう行こう。早くしないと朝が来て、誰かに見つかってしまうからね。ほら、もっと僕に近づいて。そう、いい子。

僕たち、これで永遠に一緒だよ。愛してる。大好きだよ……

END

・台本（ゆるボイ！）
妖狐な溺愛彼氏と駆け落ちする夜
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
夏芽