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- 掛け合い
公開日2022年09月06日 18:00
更新日2022年09月06日 18:00
文字数
4167文字(約 13分54秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
指定なし
演者人数
2 人
演者役柄
指定なし
視聴者役柄
指定なし
場所
放課後の部室
あらすじ
文芸部の部長(B)は最近読んだ本の影響を受けやすい。今回部長が読んだ本は推理小説。
いつも通り影響を受けた部長は、唯一の部員である後輩(A)に「推理勝負をしよう」と持ちかけた……。
いつも通り影響を受けた部長は、唯一の部員である後輩(A)に「推理勝負をしよう」と持ちかけた……。
本編
A「うぃーっす。お疲れ様でーす、先輩」
B「おぉ、お疲れ様。今日は来るのがいつもよりちょっとだけ遅かったね」
A「いや、ここに来る途中、先生に捕まって雑用を押し付けられたんですよ。それやってたらちょっと遅くなっちゃって……。すんません」
B「いやいや、別に遅れたことを責めているわけじゃないんだ。謝る必要はないさ。それより、部員もやっと揃ったことだしお茶でも淹れようか。何が飲みたい?」
A「コーラ。キンキンに冷えてたらなおよし」
B「そんなものは文芸部の部室にはない。飲みたかったら自動販売機にでも買いに行ってきたらどうだ。階段の上り下りだけで、足がパンパンに膨れ上がりそうだがな」
A「えー、じゃあコーヒー」
B「よろしい。ではすぐに準備しようか」
A「砂糖も入れてくださいね」
B「はいはい、わかってるよ。『甘すぎず苦すぎない程度に』だろ? 全く、相変わらず君はわがままだなぁ」
A「”こだわり”って言うんですよこういうのは。他人には絶対にわからないようなね」
B「物は言いようだな……」
======
B「はい、ご注文のコーヒー」
A「……うん、丁度良いですね。俺が求めていたのはこの味です」
B「そりゃどうも。……さて、それでは今日も文芸部の活動に入ろうと思うんだが……」
A「あっ!」
B「どうかした?」
A「あちゃー……。今日読むつもりだった本、教室に置いてきちゃったな……。すんません、すぐに取りに行ってきま────」
B「いやいい。今日はちょっといつもと違うことをやってみようと思っていたからね」
A「……いつもと違うこと?」
B「そうだ。ちょっと窓際まで来てもらえるかな」
A「……なんか、あるんですか? 別にいつもと同じ風景に見えますけど……」
B「うーん、そうだな……。よし、決めた。あの女子生徒が見えるか? 今丁度水飲み場で顔を洗っている、体操服を着たポニーテールの子だ」
A「えっと……はい、見つけました」
B「彼女はどの部活に所属していると思う?」
A「……は? なんでそんな質問をするんですか?」
B「今日の文芸部の活動はこれだよ。私が目をつけた学生が、どの部活に所属しているかを推理するゲームをしよう」
A「あー、……さては、またなんか本の影響受けましたね?」
B「その通り。つい先日読み終えた推理小説をかなり気に入ってしまってね、私もちょっとした推理ごっこがやりたくなったんだ」
A「……この前は、ファンタジー小説の影響で、『私も土地を開拓するんだ』とか言って園芸部に体験入部した結果散々な目にあったのに……。懲りない人ですね」
B「いやいや。あの体験入部はなかなか貴重な経験だったし、学ぶことも多かったぞ?」
A「そうですか?」
B「あぁ。毎日本ばかり読んでいるような貧弱な私に、土地の開拓なんて出来るわけがないと学べたからな」
A「馬鹿なんですか?」
B「馬鹿とはなんだ。成績なら私の方がずっと上だぞ? テストが近づくと毎回『勉強を教えてくれ』とせがんでくる馬鹿はどこのどいつだい?」
A「……くそっ。で、今日はその推理ごっことやらをやるんですね?」
B「あぁ。それで、さっきの女子生徒、どこの部活に所属していると思う? 今は水飲み場から離れて、友達と楽しげに雑談をしているな」
A「……このまま彼女がどの部活の練習場所に戻るのか待つのはダメですか?」
B「その場合は時間切れで君の負けということにしよう」
A「はぁっ!? なんで俺の負けになるんですか!」
B「悪知恵の働く君のことだ、悩んだふりをして時間切れまで粘るつもりだろう? そんな卑怯な手は認めない」
A「ちっ、全部お見通しか。変なところで察しがいいんだから困っちまうよ本当に……」
B「あと、君が案外負けず嫌いなこともちゃんと知っているぞ? 私との勝負事は特にね」
A「まぁそうですけど……」
B「今回の勝負に君が勝ったら、お望みのキンキンに冷えたコーラでもおごってやろう」
A「じゃあ俺、本気でやりますよ?」
B「それじゃあ早速始めよう、あまりのんびりとしている暇もなさそうだからね」
A「……まず、屋内競技の部活ではないでしょうね。グラウンドや専用のコートでやるような競技の部活……野球部とテニス部、それからサッカー部と陸上部くらいですね」
B「だいぶ数が絞れたな」
A「この候補の中からだと、野球部はないですね。あそこは女性部員を募集してませんから」
B「マネージャーという可能性は?」
A「その可能性はゼロです。うちの学校は、どこの部活にもマネージャーがいないというのは広く知られてますから」
B「ふむ」
A「次に候補から外れるのはサッカー部。あそこは練習中は必ずゼッケンをつけるよう言われているので、ゼッケンを着ていない彼女はサッカー部ではない」
B「……そのようだね。となると、テニス部か陸上部の二択か。では今度は私が推理してもいいかな?」
A「どうぞ」
B「野球部やサッカー部についての意見は私も全く同じだ。残された候補はテニス部と陸上部。実に悩ましい二択だが、彼女がどちらの部活に所属しているのかは私はもうなんとなく見当がついている」
A「もうですか、早いですね」
B「ひとつのことに目を奪われず、周りを広く観察してみたまえ。陸上部とテニス部。休憩中なのはどっちかな?」
A「……ざっと様子を見た感じ、テニス部でしょうか」
B「かたや陸上部は部員全員が練習真っ只中。そんな中、ひとりだけ練習を抜け出し、他の部活の生徒と楽しげに雑談をする余裕があるだろうか」
A「……つまり?」
B「彼女が所属しているのはテニス部だ」
A「なるほど……」
B「徹夜して推理小説を読んだ甲斐があったよ。さて、それでは私はゆっくり結果を見守るとしようか……」
A「…………ふっふっふっふ」
B「何を笑っているんだ。君も早く結論を出さないか、さもないと負けるぞ?」
A「いや、俺は勝ちますよ。この勝負」
B「……ほう?」
A「突然始まったこの勝負ですが、それでも俺は先輩よりも絶対有利な位置にいると俺は確信しています。だから断言しよう、アンタの推理は間違っている!」
B「なっ、どういうことだ!」
A「広い範囲を見すぎて注意力が疎かになってるんですよアンタは。見てください、彼女の靴紐の色を!」
B「靴紐の色……? あれは、赤色の靴紐か……」
A「そう、彼女の靴紐は赤色なんです。そしてこの学校では学年ごとに靴紐の色が違う。そして、今年の一年生の靴紐の色は赤色。つまり彼女は一年生」
B「だから何だと言うんだ」
A「次に話すのが、今回の勝負の一番の決め手です。あの子が今も楽しげに会話をしている女子生徒、彼女は俺と同じクラスの子です。そして俺は、彼女に仲の良い後輩が2人いることも耳にしています。ひとりは吹奏楽部、もうひとりはバドミントン部に所属しているということもね」
B「……なっ、まさか!」
A「吹奏楽部が外に出て練習をするわけがない、そもそも、彼女たちが今も練習の真っ只中なのは、遠くの方から聞こえてくる楽器の音が証明しています」
B「し、しかし、だからと言って彼女がバドミントン部とは限らないだろう! 第一、『屋内競技の部活ではない』と最初に言い出したのは君じゃないか!」
A「あんなもん、ハッタリに決まってるじゃないですか。この勝負が始まった時点で、いや、この勝負が始まる前からずっと、俺はもう答えがわかってたんですよ」
B「勝負が始まる前……から?」
A「俺、部室に来るの遅れたじゃないですか。先生に雑用を押し付けられて」
B「あ、あぁ、たしかにそんなことを言っていたな」
A「その時に見たんですよ。証拠口で、バドミントン部の学生たちと一緒になって外に走っていく彼女の姿をね! バドミントン部に所属している俺の友人の姿もその集団の中に発見したので、間違いありません」
B「……つまり、君の出す結論は」
A「彼女が所属しているのは、バドミントン部です」
B「…………お互いに答えを出し合ったところで、あとは結果を待つのみか」
A「コーラの代金、財布から出しておいたらどうです?」
B「いやまだだ、まだわからんぞ」
A「さぁどうだか」
B「……彼女、雑談を終えて解散するようだな。……なっ!? テニスコートではなく校舎の方に向かっている!」
A「ふっ……。俺の勝ち、ですね」
B「いや、この目で直接答えを確かめなければならん! 彼女の後を追うぞ!」
A「あっ、ちょっと先輩! 廊下を走るのはまずいですって! 転びますよ!」
B「この私の推理が間違ってるはずがないんだぁぁぁぁ!」
======
A・B「はぁ……」
B「コーラ、奢るよ」
A「いや、いいっすよ。どうせ自販機近くにあるんで、自分で買います……」
B「…………まさか、吹奏楽部だったとはね。予想外の一撃を喰らってしまって、まだ目の前がふらふらしている気がするよ。今回は引き分けだね」
A「肺活量と持久力を鍛えるのが目的で、たまに他の部活と一緒に走り込みに行っている、と言われても……なんか腑に落ちませんね」
B「……そうだな。やはり、推理というのはそう単純なものじゃないな。論理的思考力と観察力、そして運が同時に求められる、実に厄介なものだな……」
A「…………でも、なんか楽しかったですよ。たまになら、こういう遊びもアリかなって」
B「そうか、ならよかった」
A「ところで、先輩がつい最近読み終えた推理小説。今度借りてもいいですか」
B「もちろんだ。実は、君にも読んでもらいたくて持ってきていたんだ。部室に戻ったら君に渡そう」
A「おぉ、ではありがたく読ませていただきます」
B「君が読み終えたら一緒に感想を共有しようか。それならネタバレの心配もないからね」
A「俺、結構あの時間好きですよ。特に先輩の考察は聞いてて飽きないですし」
B「ハッハッハ、そう言ってもらえると、文芸部部長としてはなんだか嬉しいね」
A「あっ、俺そこの自販機でコーラ買ってくるんで、ちょっと待っててもらえますか。……なんなら、先輩の本貸してくれるお礼に、何か奢りますよ」
B「いや、そこの自販機には私の好きな紅茶が入ってないんだ。だから遠慮しておくよ」
A「なっ、紅茶なんてどれも一緒でしょうに!」
B「いや、あの紅茶が一番美味しいんだ、これだけは譲れない。それでも奢りたいのなら、別の場所の自販機まで一緒に行ってくれるかな?」
A「……わかりましたよ、じゃあそこで俺もコーラ買います。全く、わがままな先輩だなぁ」
B「こういうのは”こだわり”、と言うのだろう? 他人には絶対に理解してもらえないような」
A「…………絶対次は勝つ。必ず勝つ」
B「のぞむところだ」
B「おぉ、お疲れ様。今日は来るのがいつもよりちょっとだけ遅かったね」
A「いや、ここに来る途中、先生に捕まって雑用を押し付けられたんですよ。それやってたらちょっと遅くなっちゃって……。すんません」
B「いやいや、別に遅れたことを責めているわけじゃないんだ。謝る必要はないさ。それより、部員もやっと揃ったことだしお茶でも淹れようか。何が飲みたい?」
A「コーラ。キンキンに冷えてたらなおよし」
B「そんなものは文芸部の部室にはない。飲みたかったら自動販売機にでも買いに行ってきたらどうだ。階段の上り下りだけで、足がパンパンに膨れ上がりそうだがな」
A「えー、じゃあコーヒー」
B「よろしい。ではすぐに準備しようか」
A「砂糖も入れてくださいね」
B「はいはい、わかってるよ。『甘すぎず苦すぎない程度に』だろ? 全く、相変わらず君はわがままだなぁ」
A「”こだわり”って言うんですよこういうのは。他人には絶対にわからないようなね」
B「物は言いようだな……」
======
B「はい、ご注文のコーヒー」
A「……うん、丁度良いですね。俺が求めていたのはこの味です」
B「そりゃどうも。……さて、それでは今日も文芸部の活動に入ろうと思うんだが……」
A「あっ!」
B「どうかした?」
A「あちゃー……。今日読むつもりだった本、教室に置いてきちゃったな……。すんません、すぐに取りに行ってきま────」
B「いやいい。今日はちょっといつもと違うことをやってみようと思っていたからね」
A「……いつもと違うこと?」
B「そうだ。ちょっと窓際まで来てもらえるかな」
A「……なんか、あるんですか? 別にいつもと同じ風景に見えますけど……」
B「うーん、そうだな……。よし、決めた。あの女子生徒が見えるか? 今丁度水飲み場で顔を洗っている、体操服を着たポニーテールの子だ」
A「えっと……はい、見つけました」
B「彼女はどの部活に所属していると思う?」
A「……は? なんでそんな質問をするんですか?」
B「今日の文芸部の活動はこれだよ。私が目をつけた学生が、どの部活に所属しているかを推理するゲームをしよう」
A「あー、……さては、またなんか本の影響受けましたね?」
B「その通り。つい先日読み終えた推理小説をかなり気に入ってしまってね、私もちょっとした推理ごっこがやりたくなったんだ」
A「……この前は、ファンタジー小説の影響で、『私も土地を開拓するんだ』とか言って園芸部に体験入部した結果散々な目にあったのに……。懲りない人ですね」
B「いやいや。あの体験入部はなかなか貴重な経験だったし、学ぶことも多かったぞ?」
A「そうですか?」
B「あぁ。毎日本ばかり読んでいるような貧弱な私に、土地の開拓なんて出来るわけがないと学べたからな」
A「馬鹿なんですか?」
B「馬鹿とはなんだ。成績なら私の方がずっと上だぞ? テストが近づくと毎回『勉強を教えてくれ』とせがんでくる馬鹿はどこのどいつだい?」
A「……くそっ。で、今日はその推理ごっことやらをやるんですね?」
B「あぁ。それで、さっきの女子生徒、どこの部活に所属していると思う? 今は水飲み場から離れて、友達と楽しげに雑談をしているな」
A「……このまま彼女がどの部活の練習場所に戻るのか待つのはダメですか?」
B「その場合は時間切れで君の負けということにしよう」
A「はぁっ!? なんで俺の負けになるんですか!」
B「悪知恵の働く君のことだ、悩んだふりをして時間切れまで粘るつもりだろう? そんな卑怯な手は認めない」
A「ちっ、全部お見通しか。変なところで察しがいいんだから困っちまうよ本当に……」
B「あと、君が案外負けず嫌いなこともちゃんと知っているぞ? 私との勝負事は特にね」
A「まぁそうですけど……」
B「今回の勝負に君が勝ったら、お望みのキンキンに冷えたコーラでもおごってやろう」
A「じゃあ俺、本気でやりますよ?」
B「それじゃあ早速始めよう、あまりのんびりとしている暇もなさそうだからね」
A「……まず、屋内競技の部活ではないでしょうね。グラウンドや専用のコートでやるような競技の部活……野球部とテニス部、それからサッカー部と陸上部くらいですね」
B「だいぶ数が絞れたな」
A「この候補の中からだと、野球部はないですね。あそこは女性部員を募集してませんから」
B「マネージャーという可能性は?」
A「その可能性はゼロです。うちの学校は、どこの部活にもマネージャーがいないというのは広く知られてますから」
B「ふむ」
A「次に候補から外れるのはサッカー部。あそこは練習中は必ずゼッケンをつけるよう言われているので、ゼッケンを着ていない彼女はサッカー部ではない」
B「……そのようだね。となると、テニス部か陸上部の二択か。では今度は私が推理してもいいかな?」
A「どうぞ」
B「野球部やサッカー部についての意見は私も全く同じだ。残された候補はテニス部と陸上部。実に悩ましい二択だが、彼女がどちらの部活に所属しているのかは私はもうなんとなく見当がついている」
A「もうですか、早いですね」
B「ひとつのことに目を奪われず、周りを広く観察してみたまえ。陸上部とテニス部。休憩中なのはどっちかな?」
A「……ざっと様子を見た感じ、テニス部でしょうか」
B「かたや陸上部は部員全員が練習真っ只中。そんな中、ひとりだけ練習を抜け出し、他の部活の生徒と楽しげに雑談をする余裕があるだろうか」
A「……つまり?」
B「彼女が所属しているのはテニス部だ」
A「なるほど……」
B「徹夜して推理小説を読んだ甲斐があったよ。さて、それでは私はゆっくり結果を見守るとしようか……」
A「…………ふっふっふっふ」
B「何を笑っているんだ。君も早く結論を出さないか、さもないと負けるぞ?」
A「いや、俺は勝ちますよ。この勝負」
B「……ほう?」
A「突然始まったこの勝負ですが、それでも俺は先輩よりも絶対有利な位置にいると俺は確信しています。だから断言しよう、アンタの推理は間違っている!」
B「なっ、どういうことだ!」
A「広い範囲を見すぎて注意力が疎かになってるんですよアンタは。見てください、彼女の靴紐の色を!」
B「靴紐の色……? あれは、赤色の靴紐か……」
A「そう、彼女の靴紐は赤色なんです。そしてこの学校では学年ごとに靴紐の色が違う。そして、今年の一年生の靴紐の色は赤色。つまり彼女は一年生」
B「だから何だと言うんだ」
A「次に話すのが、今回の勝負の一番の決め手です。あの子が今も楽しげに会話をしている女子生徒、彼女は俺と同じクラスの子です。そして俺は、彼女に仲の良い後輩が2人いることも耳にしています。ひとりは吹奏楽部、もうひとりはバドミントン部に所属しているということもね」
B「……なっ、まさか!」
A「吹奏楽部が外に出て練習をするわけがない、そもそも、彼女たちが今も練習の真っ只中なのは、遠くの方から聞こえてくる楽器の音が証明しています」
B「し、しかし、だからと言って彼女がバドミントン部とは限らないだろう! 第一、『屋内競技の部活ではない』と最初に言い出したのは君じゃないか!」
A「あんなもん、ハッタリに決まってるじゃないですか。この勝負が始まった時点で、いや、この勝負が始まる前からずっと、俺はもう答えがわかってたんですよ」
B「勝負が始まる前……から?」
A「俺、部室に来るの遅れたじゃないですか。先生に雑用を押し付けられて」
B「あ、あぁ、たしかにそんなことを言っていたな」
A「その時に見たんですよ。証拠口で、バドミントン部の学生たちと一緒になって外に走っていく彼女の姿をね! バドミントン部に所属している俺の友人の姿もその集団の中に発見したので、間違いありません」
B「……つまり、君の出す結論は」
A「彼女が所属しているのは、バドミントン部です」
B「…………お互いに答えを出し合ったところで、あとは結果を待つのみか」
A「コーラの代金、財布から出しておいたらどうです?」
B「いやまだだ、まだわからんぞ」
A「さぁどうだか」
B「……彼女、雑談を終えて解散するようだな。……なっ!? テニスコートではなく校舎の方に向かっている!」
A「ふっ……。俺の勝ち、ですね」
B「いや、この目で直接答えを確かめなければならん! 彼女の後を追うぞ!」
A「あっ、ちょっと先輩! 廊下を走るのはまずいですって! 転びますよ!」
B「この私の推理が間違ってるはずがないんだぁぁぁぁ!」
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A・B「はぁ……」
B「コーラ、奢るよ」
A「いや、いいっすよ。どうせ自販機近くにあるんで、自分で買います……」
B「…………まさか、吹奏楽部だったとはね。予想外の一撃を喰らってしまって、まだ目の前がふらふらしている気がするよ。今回は引き分けだね」
A「肺活量と持久力を鍛えるのが目的で、たまに他の部活と一緒に走り込みに行っている、と言われても……なんか腑に落ちませんね」
B「……そうだな。やはり、推理というのはそう単純なものじゃないな。論理的思考力と観察力、そして運が同時に求められる、実に厄介なものだな……」
A「…………でも、なんか楽しかったですよ。たまになら、こういう遊びもアリかなって」
B「そうか、ならよかった」
A「ところで、先輩がつい最近読み終えた推理小説。今度借りてもいいですか」
B「もちろんだ。実は、君にも読んでもらいたくて持ってきていたんだ。部室に戻ったら君に渡そう」
A「おぉ、ではありがたく読ませていただきます」
B「君が読み終えたら一緒に感想を共有しようか。それならネタバレの心配もないからね」
A「俺、結構あの時間好きですよ。特に先輩の考察は聞いてて飽きないですし」
B「ハッハッハ、そう言ってもらえると、文芸部部長としてはなんだか嬉しいね」
A「あっ、俺そこの自販機でコーラ買ってくるんで、ちょっと待っててもらえますか。……なんなら、先輩の本貸してくれるお礼に、何か奢りますよ」
B「いや、そこの自販機には私の好きな紅茶が入ってないんだ。だから遠慮しておくよ」
A「なっ、紅茶なんてどれも一緒でしょうに!」
B「いや、あの紅茶が一番美味しいんだ、これだけは譲れない。それでも奢りたいのなら、別の場所の自販機まで一緒に行ってくれるかな?」
A「……わかりましたよ、じゃあそこで俺もコーラ買います。全く、わがままな先輩だなぁ」
B「こういうのは”こだわり”、と言うのだろう? 他人には絶対に理解してもらえないような」
A「…………絶対次は勝つ。必ず勝つ」
B「のぞむところだ」
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羽衣(ハゴロモ)ロロモンです。
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