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沈丁花
written by 水谷 翡翠
  • 甘々
  • シリアス
  • 純愛
  • 切ない
  • 歴史
  • 戦国時代
  • 和風
  • ひすいの台本
公開日2022年12月25日 13:29 更新日2023年01月09日 23:13
文字数
728文字(約 2分26秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
指定なし
演者人数
2 人
演者役柄
指定なし
視聴者役柄
指定なし
場所
逢引きした布団の中
あらすじ
こちらは拙作の愛憎一重の前日譚(約1年前のお話)になります。人物紹介等はそちらを参考にしてください。


・"時鳥鳴くや五月のあやめ草 あやめも知らぬ恋もするかな"→あやめ(道筋)も分からないほど恋焦がれている短歌。梅雨入り前の戦場という緊張感ある場所から送るには少し不謹慎。
・菖蒲→花言葉"幸せな便り"
・"月草に衣は摺らむ 朝露にぬれての後はうつろひぬとも"→月草(露草)で染めた衣は色落ちがしやすい、気持ちが移ろいやすい相手に一夜だけでもそばにいたいという想いの夏の短歌。月は日々姿を変える不安定なものだが、月が出ている間しか愛を囁けない相手への意趣返しも込めていた。
・露草→花言葉"尊敬"

・竜田姫→紅色の振袖を着た秋の女神。裁縫と染物が得意。恋歌にもよく出てくる。
・紺屋→染物屋
・車輪梅(しょくりんばい)→バラ科の植物。虫除け効果がある。染めても色が抜けやすい。花言葉は"愛の告白"
・蘇芳(すおう)→花言葉"不信" 冒頭の焚き込めた香の匂い

・沈丁花(じんちょうげ)→花言葉"永遠、叶わぬ想い"
本編
★ふと夜着(よぎ)を引き寄せれば焚き込めた香が一層濃く薫った。

★「この香り…、陣中から届いたお花を思い出しまする。」
☆「嗚呼、"時鳥(ほととぎす)鳴くや五月の菖蒲草(あやめぐさ)"……」
★「ふふ…、返歌(かえしうた)を送る間もなく帰城(きじょう)されますれば嬉しゅうございました。」
☆「あの頃は歌や花を嗜(たしな)むと知らなかったからな。」

★一年(ひととせ)も立たず随分と近づいてしまったと思う。絡めた掌は熱く、夜着の中だけは寒さを感じなかった。

★「"月草(つきくさ)に衣(ころも)は摺(はす)らむ朝露(あさつゆ)に、ぬれての後(のち)はうつろいぬとも"」
☆「……。それは…、聞けなかった当時の歌か?」
★「今も…と申しましたら、どうなさいます?」

☆体温を分け合ってもまだ冷えている肩はどこか某への想いのような寒さを感じる。
某(それがし)から何時(いつ)でも手が離せるように用意された愛では足りず、然(さ)りとて全て寄越せと言えなくなるほど愛してしまった。


☆「月草ではなく竜田姫(たつたひめ)の衣を贈ろう。」
★「それは……、些(いささ)か荷が勝ちまする。」
☆「謙遜するな。今もお前が仕立てた綿衣(めんごろも)を着ている。そうだ、春が来たら柄糸(つかいと)を新調したい。染めてくれるか?」
★「私めは染物をしたことがありませぬ。僭越ながら紺屋(こんや)に御頼みしておきましょう。」
☆「お前、分かって言っているだろう……」
★「車輪梅(しゃりんばい)を使いますれば、此度(こたび)戦場(いくさば)でもお役に立ちましょう。これが私の精一杯で御座いますれば、何も聞かずお納めくださいませ」
☆「……そう言ってお前はいつも某を喜ばせるな」

★でも、貴方様は知らないのだろう。淡く優しい色ほど褪(あ)せるのも早く、染めることも容易(たやす)いと。

★「心から、お慕い、しておりまする」
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
沈丁花
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
水谷 翡翠
ライター情報
和物を書くことが好きです。
もともとはnanaで書いていましたが、他媒体でも読んでもらえるように一部をこちらに掲載いたします。主に90秒前後で読める台本や台詞が多いです。
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・各台本の一人称の変更はお好きにしていただいて構いません。
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