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ダウナーな不良ゾンビ男に生きてることを全肯定される
written by 松平蒼太郎
  • ファンタジー
  • シリアス
  • 人外 / モンスター
  • ゾンビ
  • 不良 / ヤンキー
  • ツンデレ
  • ダウナー
  • ヤニカス
  • ハグ
公開日2023年03月19日 22:10 更新日2023年03月19日 22:10
文字数
2272文字(約 7分35秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
男性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
サラリーマンのゾンビ男
視聴者役柄
女子高生吸血鬼
場所
夜道→男の家
あらすじ
女子高生で吸血鬼の貴女は、良さげな男を見つけて襲いかかるが、その男の血はひどく不味く、その場で吐いてしまう。なぜなら、その男は生き血を持たないゾンビであったからだ…
本編
[夜道]


あ?なんだお前…いきなり襲いかかってきやがって…


…吸血鬼?なんだそりゃ…


ファンタジーごっこなら、よそでやれ。


おっさんは仕事で疲れてくたびれてんの。


悪りぃが、子どもの相手をしてる余裕はねぇ。俺のことはほっといてくれ。


イケメン?俺が?


お前、眼科行った方がいいぞ。


それか、最近の若いモンの社交辞令ってやつか?


まぁ、どっちでもいいけど。とにかく俺は帰って寝る。


お嬢ちゃんも悪い大人に捕まらねえように、とっとと家に帰っておねんねしな。


(首筋を噛みつかれる)


いっ…てぇなんて言うと思ったか?残念だったな。


バカがよ…むやみやたらに噛み付くからだ。


不味いだろ?俺の血…


なんせ生き血じゃねえからな、それ。


そ。俺は死人ってか、動く死体。


いわゆるゾンビってやつだな。


おい…そんなにゲーゲー吐くなよ。道が汚れるだろ。


はぁ?知るか。勝手に襲いかかって、血飲もうとしたのはそっちだろ。俺は何も悪くねぇ。


キーキーうるせぇガキ…これだからJKってやつは…


(深〜いため息)


ほら、エチケット袋。吐くならここに吐け。


……ん、どういたしまして。


それ、ちゃんとそっちで処分しとけよ。


いや、なんで俺が…吐いた本人が処分するのが常識だろ?


あーあー、うるさいうるさい…わかったって。


それ、寄越せ。こっちで処分しといてやる。


汚ねえなぁ…ったく、うら若き乙女が道端でゲロるんじゃねえよ…


責任?だから俺はなんも悪くねぇっつの。


お前さぁ……いや、やっぱいい。


とりあえず俺ん家来い。気分悪いなら、ちょっとだけ休んでけ。


襲わねえよ。お前、普通にストライクゾーン外だし。


それに襲っても意味ないしな。俺、ゾンビだから。


そ。お前が好みの女かどうか以前に、セックスによる快感を味わえねえっつーこと。


で?俺ん家来るの?来ねえの?


来ねえなら、このままほっといて帰るが。


へーへー…じゃあついてこいよ。案内すっから。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


[男の家の玄関]


そ。ここ俺ん家。まぁ、上がれよ。


ほっとけ。男の一人暮らしなんて大体こんなもんだ。


とりあえずなんか飲むか?お子様用のジュースならあるぞ?


生き血なんてあるわけねえだろ。いい加減にしろ。


…なんだよ、何笑ってんだよ?


あー、そう…潤いのない人生送ってきてんだな、お前…この程度のやり取りで笑えるなんてよ…


とりあえず、冷蔵庫のもん好きに漁っていいぞ。


俺はベランダでタバコ吸ってくるから。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


[男の家のベランダ]


(一服して火を消す)


…あ?何?お前の分のタバコはねえぞ?


タバコの味?知らん。味覚もないから。


……笑わねえって約束すんなら、話してやってもいいけど。


その、さ…生前にタバコ吸う姿がカッコいいって言われたんだよ。元カノにさ…


おい、こら。笑わねえっつったろ。


約束して数秒くらいしか経ってねえだろうが。


ふーん…?そりゃどうも。


タバコの似合うカッコいい男なんですね、俺は。今じゃ味は全く分かんねえけど。


…別に。今さら何とも思わねえ。


ゾンビとして蘇ってから、悲しいとも寂しいとも思わなくなっちまった。


人間らしい感情なんて、全然持ち合わせてねえし。


あ〜…くたびれたっつうのはアレだ。サラリーマンの方便的な?


うるせえ女…夜の吸血鬼ってこんなやかましいんだな…


え、やだよ。吸血鬼とはいえ、なぜ女子高生を家に泊めにゃならん。


……はぁ。タバコ臭い部屋でよければ。


どーいたしまして…いつの時代も、家庭に難ありの子どもは大変だな。


とりあえず先、シャワー浴びてこい。タバコの匂いが染みついたら大変だからな。


俺は後でいい。いいから行ってこいっつの。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


上がったか?じゃあ俺もひとっ風呂浴びて…


…え、もう帰んの?さっきと言ってたことが真逆だが。


…いい。これ以上喋んな。ちょっとこっち来い。


(女子高生を抱きしめる)


しんどい思いしてまで、笑顔作んな。気持ち悪りぃ。


泣きたいなら泣けよ…どーせ誰も見てねえんだ。


俺は死体だ。だから見てる人数にはカウントしねぇ。


(女子高生号泣、男がその背中をさする)


まぁ、その…なんだ?ここまでよく踏ん張ったな、お前。


友達いなくて、親きょうだいからも認められなくて…それなのに、よくここまで生きてきたな。


吸血鬼だからとか、そんなの関係ねぇ。


途中で中途半端に死んじまった俺より、お前のがずっと偉い。


当たり前だろ?生きてて偉いんだよ、お前は。


いきなり人様に襲いかかるのはいただけねえけど…それでも今ここで頑張って生きてるお前は凄えよ、ホントに。


いいから。俺に迷惑かけてんのは、今さらすぎる。


背中くらい、いくらでもさすってやる…


無理に泣き止まなくていい。涙なんて全部流しちまえ。


涙すら枯れ果てた俺と違って、お前はいくらでも泣けんだから…今は好きなだけ泣いちまえ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


……落ち着いたか?めちゃくちゃ長い号泣だったけど…


あー、忘れた忘れた。お前がわんわん泣いてたことなんて、一切合切忘れた。


つか、もう朝じゃん。


また出勤しなきゃいけねえのか。憂鬱すぎる…


バカ。ゾンビが寝不足になると思うか?


憂鬱にはなるけどな。働きたくねぇ…


んで、お前は?これからどうすんの?


さいですか…まぁ、学校行くってんなら、途中まで一緒に行くか。


何だよ、その顔は……俺、何か変なこと言ったか?


あ、そう…たしかに俺からお前を誘うのは初めてだけどさ…


俺、出勤の準備するから、お前も適当に準備してこい。化粧とか化粧とか。


うん。お化けみたいな顔んなってる。鏡見てこい。


(女子高生が洗面所で鏡を見て悲鳴を上げる)


あ〜、やっぱうっさ…


めちゃくちゃ脳みそに響く悲鳴上げてくれんな、アイツは…


とりあえず今日も頑張るか…とりあえず、な…
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
ダウナーな不良ゾンビ男に生きてることを全肯定される
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎
ライター情報
マツダイラソウタロウ
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