えっと、この時間帯の挨拶は……こんばんは、これで良いんだっけ？
こんな時間に呼び出しちゃってごめんね、今日はどうしても君に伝えたいことがあったんだ。
うん、すっごい大事な事……まぁでも、そんなに身構える必要はないよ。
とりあえずさ、歩きながら話でもしない？
ありがとね、それじゃあ行こうか……そうだな、ひとまず駅の方まで歩いて行かない？
ボク、あの辺りの景色が好きなんだ～
ほらほら、人間がよくやってる「手をつなぐ」っていうのをしながら、一緒に歩こうね♪

（足音）

そういえばさ、こういうのって君達の言葉だと「デート」って言うんだっけ？
君達が使う言葉はボクの星の言葉に負けず劣らず複雑で難しいけど、そのおかげで色んな響きがあって……なんだかとっても良いね。
あのね……実はこの前、仲間から聞いたんだけど、この陸地……国の外側、ここじゃない国では使っている言葉が違うって本当なのかい？
そうなんだ……この星って本当にすごいね、ボク達の星では皆が使う言葉は一種類しかないんだ。
言葉が複数に分かれるなんて状況になる事もなかったから、なんというか……すっごい驚きだったよ。
でもでも、この星に来てから一番の驚きは……やっぱり、君と食べたこの星の食べ物かな。
星が違えば食べる物も変わってくるだろうけど、それにしたってこの星の食べ物は本当に美味しいね。
ボク、この星が本当に気に入っちゃったよ。
あのさ、今更かもしれないけど……君、ボクにこんなに良くしてくれて本当にありがとうね。
ボクが「地球の外から来た生物」だって言っても信じてくれて、ボクにこの星の色んな事を教えてくれて……君のおかげで、ボクは色んな事を学べたんだ。
そのせいかな……ボクはね、どうにも君に惹かれてしまったみたいなんだ。
君の事を考えると胸の辺りが温かくなって、なんだかフワフワした……ボクの星の言葉じゃ上手く言い表せない気持ちになるんだ。
この国では、今のボクみたいな状態を「恋」っていうらしいね。
恋……うん、ボクの好きな言葉リストに追加決定だ♪
あれ、君……なんだか顔が赤くなってるけど、大丈夫？
体温も上がってるみたいだ……人間は具合が悪いと体温が上がるって聞いたけど、もしかして体の調子が悪いのかい？
「照れてるだけ」……なるほど、人間はそういう時にも体温が上昇するんだね。
そっか……それじゃあ、これから君は、もっと体温が上昇しちゃうかもしれないね。

あのね、ボクの大事な話っていうのはね……その、ボクと……生殖行動を、してほしいんだ。

あのさ、ボク達がこの星に来た理由……初めて会った時に話したの、君は覚えてる？
うん、ボク達は自らの種族を進化せる為に「パートナー」になり得る種族を探してたんだ。
色んな星を旅してきたけど、ボク達のパートナーになれるような生き物はちっとも見つからなくて……でもね、この星の人間について学習していた時に分かったんだ。
君達となら、理論上ではあるけどボクの種族は生殖活動を行える……君達とボク達の遺伝子は、お互いに固く結びつくことが出来るんだ。
それでね、その実験をする為にボクが選ばれたんだ……皆は「相手が人間なら誰でも良い」って言ってたけどね、ボクはその……君が良い……ううん、相手は……相手は君じゃないと嫌なんだ。
だってボク、君に恋をしてる……君と結ばれたいって心の底から想ってる。
初めて子孫を残す相手は君じゃなきゃ嫌なの……ダメ、かな？

ありがとう……嬉しい……でも君、さっきより顔が赤くなってる……それに体温もすっごい高くなってる……そんなに照れてるの？
「君も人の事を言えないよ」って……本当？
あ、本当だ……ボク、全身が熱くなってる……これが照れてるって気持ちなんだね、なんだかその……不思議な感じだね。
あのさ、それじゃあ……目的地にも着いたし、その……ここ、入ろう？
うん、ホテル……人間は繁殖行動をする時にこの施設を使うって聞いたよ……だから、うん……料金はボクが出すから気にしないで。
ほら、早く行こうよ……？
ボク、もう我慢できない……早く君の遺伝子が欲しいの。
だから早く……早く行こう？

（足音）（ドアの開閉音）

へぇ……これがホテル、なんだか思ってたところと少し違うかも。
まぁ良いや、それじゃあさ──
（布の擦れる音）
人間は繁殖行動をする時に服を脱ぐんでしょ？
ほら、ボクの準備はもうできてるよ。

だからはやく、君の遺伝子をいっぱい……僕にちょうだい？

・台本（ゆるボイ！）
君の恋人は「地球の外」から来たボクだけだよ？
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
霜月鷹