冥王星から来たと自称する女性を保護したあなた。
今日も電波なことを言う彼女と買い物に出かけた帰り道、何かが起こる――。

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あーあ、もう！
なんで地球ってこんなに暑いのー！

だからー、北海道出身とかじゃないって。
冥王星から来たの！

地球で言えば零下220度なんだよ！？
37度とか耐えられないー！

え、荷物？
大丈夫、これくらい持てるよ。

にひひ。
君ってやっぱり優しいよね。

君のおかげで助かったよ。
ありがとね。

本当は火星に着陸するはずだったんだけどさ、まさか、宇宙船が落下するなんて思わないじゃん。
まあ、土星人からの攻撃を受けたんだけど。

あー、またバカにしてるな！

宇宙人は存在してるんだぞっ！
ほぅら、君の前に！

それは、地球人に擬態してるからで。
本当はもうちょっと違う形なんだから。

そう、触手が生えてる。
君のスマホの入ってたえっちな画像みたいに。

にひひっ。
見ちゃったー。

ハッキングなんてお手の物。
だって私は冥王星のエージェントだからです！

信じてないな、もう。

はぁ、でも困ったなぁ。
私、帰らなきゃいけないのに、帰りたくなくなってきたー。

えー、だって地球居心地よすぎるんだもーん。
暑いのは嫌だけどさぁ。

誰も攻撃してこないし、クリーチャーはいないし。
何より君がいるもん。

ご飯くれるし、おうちに入れてくれるし、傷の手当してくれるし。
こんな優しさに触れたのは初めてだよぉ。

嬉しくって……泣いちゃう……。
（嘘泣き）

嘘泣きでしたー。

君のそういうお人好しなところ、大好きだよ！

褒めてるんだって！
照れるな照れるな。

おっと、公園発見！
いっくぞー！

ふふ、私は見たよ。
君がアイスを買っているのを。

にひひ、私は何でもお見通しなのだ！

え？　家で食べる？

外で食べよう。
なんか、楽しいじゃん。
こういうの粋って言うんじゃないの？

違う？
まあいいじゃん。

な！？
何で分かった！？
私が早くアイスを食べたいだけだって！

さては君もエスパーを！
地球人にそんな能力はないってレポートにあったのにな。

まあいっか。
君は悪用しなさそうだもんね。

ほらほら、座ろう！

私はー。
これこれ！　ソーダアイス！

君はバニラアイス？
あとで一口ちょーだい？

ダメ？
けちー。

いただきます。

んー！
冷たくておいしい！

一口どうぞ。

いらないのー？
ほらほら、食べなよー。

あ、落ちちゃった。
君が暴れるからー。

首元、冷たそう。

ハンカチ？

いらないでしょ。
こうやって――。

なに？
変な声出しちゃって。

ちょっと舐めただけじゃん。

まだついてる。
じっとして。

ふふ、君の汗と混ざって甘じょっぱいね。

ほらほら、早く食べないとぜーんぶ溶けちゃうよ。
私が食べてあげようか。

おーい。
返事はー？

もう、溶けちゃう！
食べちゃうぞー！！

あーん！

うわっ、バニラアイス美味しい！
あ、自分のアイスも食べなきゃ。
忙しいな、もう！

ごちそうさま！

何もぞもぞしてるのー。
顔も真っ赤だし。

まだ舐めたの怒ってるの？
あれくらい普通じゃん。

え？
地球人は普通、人の身体を舐めたりしない？

そうなの？

ん？　待って？
ってことは、普通じゃない時があるわけだ。

ふふーん、私ってば天才！

ねえねえ、どんな時、舐めるの？

ほらほら、教えてよー。

ねぇ、教えて？（囁き）

あはは！　びっくりしたー！
地球人っておもしろーい！

そういえば。
地球人って興奮してるときに顔に血が上るんだっけ。

もしかして、興奮してるの？

いいね。
君がそんな状態だと思ったら、私も楽しくなってきちゃった。

ねえ、もっと興奮することしてあげようか。

人目なんか気にしなくていいじゃん。
これは私と君のことなんだから。

大丈夫。
地球人のこともちょっとは勉強してるんだよ？

例えば、繁殖行動とか。

……っ。
じっとして。

誰かに見られてる。

違う。
もっと敵意のある何か。

伏せて！

そうよ、あれが土星人。

犬じゃない。
見て。
目からビームが出る。

ほら、来るよっ！

ベンチが焼け落ちたね。
君は逃げて。

いいから早く！

私は大丈夫。
なんたって、冥王星のエージェントだからね。

いくよ。

（銃声）

仕留めたか。

……？
どうしたの？

後ろ？

ッ！？

な、なんでかばったの！？
バカ！

確かにかすり傷だけど！！

ああもう！
弱いくせに！

ここでじっとしておいて。
いいから。

クソッ。
生け捕りにしようと思ったが。

私の大切な人を傷つけたお前に、生存の余地はない。

落ちろ。
二度と覚めない眠りにな。

（銃声音）

よし。

ねえ、大丈夫！？

はぁ……。
よかったぁ。

ん？　
そうだよ。

土星人は光の粒になって消滅する。
当たり前でしょ？

人間って死体が残るんだよね。
証拠隠滅不便じゃない？

え？
普通そんなこと、起こらない？

やっぱり、地球は平和だぁ。

でも、困ったな。

今ので君、土星人に目をつけられちゃったと思う。

だって、私をかばったんだよ？
敵の味方は敵でしょ。

うーん、君を危険な目に遭わせたくないんだけどな。
うーんうーん……。

ハッ！　閃いた！！
ねえねえ、私と恋人にならない！？

えっとえっと、同居？
ううん！　同棲！

そしたら、ずっと君のこと守ってあげられる！

え？　冥王星に帰らなくていいのかって？

うーん、確かに帰らないといけないけどー。
でも、君を放って帰るなんてそんなことはできないなー。
巻き込んだの私だし。

というのは言い訳で、君と一緒にいたいだけだったりして。

にひひ、冗談だよーだっ！

さあ、家に戻ろう。
傷の手当、しなきゃ。

それに、さっきの続きもしないといけないしね。

ん、何？

へぇ、また興奮しちゃった？
顔が赤いぞー。

ふふ、今度こそ逃がさないんだからね？

・台本（ゆるボイ！）
電波な彼女は今日も帰れない。
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
シノト