人型兵器の技師である男は、以前に修理した二人の兵器から狙われていた。廃棄処分寸前だった二人を直したことで、とんでもないレベルの好意を持たれてしまい、彼女らから逃走する羽目になる…

A.狙撃型兵器「スナイパー」
B.射撃型兵器「トリガー」



【Aパート】


A.見つけましたよ、マスター。今日という今日は逃がしません。


A.いつまでご自分をマスターだと認めないおつもりですか？


A.マスターに、なりたくない…？はっ、世迷言を…


A.これはもう決まったことなのです。貴方に拒否権はありません。


A.…左様でございますか。そちらがそのつもりなら仕方ありません。


A.コードネーム「スナイパー」…貴方を我が物とするため、これより任務を開始します。


A.手足を多少撃ち抜いてでも、貴方を我がアジトに連れ帰ります。どうかお覚悟を。


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A.む…撃ち損じましたか。まぁいいでしょう。


A.これからじっくり追い詰めていけばいいだけの話ですしね…


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A.ここに隠れていましたか、マスター。


A.わたしとしたことがほんの少しだけ、貴方を見失ってしまいました。申し訳ありません。


A.はい。視覚や聴覚には自信があったのですが…それでも一時的とはいえ、マスターを逃してしまったのは、わたしの貴方への愛が足りなかったからでしょう。


A.はい。気持ちや心といったものが、わたしたち兵器の性能に多大なる影響を与えると聞いたので。


A.マスターへの愛が十分であったならば、少しでも見逃すことはなかったでしょう。


A.ですが…今度こそ逃がしません。貴方には何が何でもわたしのマスターになってもらわねばなりませんから。


A.はい。貴方のような、人型兵器に深い理解のある技師はそういませんから。


A.そもそもスクラップ同然のわたしを直したのはマスター、貴方ですよ？忘れたとは言わせません。


A.あのまま廃棄処分されるところだったわたしを救ってくれたのは貴方ではないですか。


A.それから気づけば貴方ばかり目で追っていた。


A.そして自覚したんです。わたしは貴方に恋をしたのだと。


A.いいえ。気のせいではありません。わたしの心臓の鼓動もこのように早くなっております。


A.マスターとしてわたしのそばにいてほしい。ずっとわたしのことを見て、考えてほしい。それが今のわたしの率直な気持ちです。


A.ですからどうか、わたしのモノになってはいただけませんか？今なら穏便に済ませられます。


A.…かしこまりました。どうしても嫌だというのであれば…その心の臓、貰い受けます。


A.いえ、ご心配には及びません。撃ち抜いた心臓の代わりに、機械の心臓を埋め込めばいいだけの話ですから。


A.もう逃げ場はありません。どうかお覚悟を、マスター…


(銃声)


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【Bパート】


B.あーあ…お兄さん、どこにいるのかなぁ…


B.あれからずっと探してるのに、全然見つからないよ〜…どこ行ったの〜…


B.う〜…お兄さんの成分がないと死んじゃいそうだよぉ…ぐすん。


B.ん？……え、あー！お兄さん！見つけた！


B.あっ、こら！どこ行くの⁉︎ 待てー！


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B.無駄だよっ！このあたしからは逃れられないっ！


B.ちょっと！何その言い方！あたしのこと忘れちゃったの⁉︎


B.ふん…忘れたんなら改めて名乗ってあげる。


B.あたしはコードネーム「トリガー」。お兄さんの運命の相手だよっ☆ よろしくねっ♪


B.あー、なに⁉︎ その反応⁉︎ 変な奴を見る目で見てー！


B.言っとくけどあたし、お兄さんに助けられたんだからね⁉︎


B.敵兵器に半壊以上させられて、再起不能まで追い込まれたところをお兄さんが直してくれたんじゃん！忘れたとは言わせないよ！


B.忘れたって、もー！流石のあたしも怒るよ⁉︎


(銃声)


B.お兄さん…そこ、動かないで。次、逃げようとしたら当てるよ？


B.うん、本気。冗談で引き金引くわけないでしょ。


B.お兄さんにはあたしのマスターになってもらう。これ、決定事項だから。


B.へぇ…あくまで拒否るんだ。じゃあ仕方ないね。ちょっと手荒になるけど…覚悟してね？


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B.ふふっ、あはは！やるじゃん、お兄さん！


B.まさかお兄さんが、撃ち合いのできる相手だとは思わなかったなぁ！あはは！


B.あー、テンション上がるぅ！もっとあたしを楽しませてよ！あはは！


B.ほらほら！もっと反撃していいんだよ⁉︎


B.兵器相手に手加減してたらお兄さん、死んじゃうよ⁉︎ それでもいいの⁉︎


B.あはっ、あはは！あはははははは！！！


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B.ふぅ〜…ひさびさにぶっ放したなぁ…


B.お兄さん？そこに隠れてるんでしょ？いい子だから出ておいで？


B.あ、動く気ない？それとも動けない？


B.まぁどっちでもいいや。今すぐ迎えに行くね。お兄さん♡


B.……ッッ！！ヤバっ…！


(爆発)


B.ゲホッゲホッ！あ〜、やられた！悔し〜！


B.手榴弾なんて物騒なもん持ってるなぁ、お兄さん…


B.まぁでも…投げるならちゃんと当てないと、意味ないよ？


B.あーあ…お洋服、埃まみれだ。あとで洗濯しないと…


B.とりあえず今はお兄さんを追いかけないとね…ふふふ♡


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【共通パート】


A.む…この辺りにマスターの痕跡が……と、探るまでもありませんでしたね。マスター、やっと心をお決めになりましたか？


B.あっ、お兄さんはっけーん！……って誰？このおばさん…


A.初対面なのに失礼な方ですね。貴女こそ誰です？


B.あたしはぁ…そこのお兄さんのお嫁さん？的な？


A.寝言は寝て言いなさい。彼の伴侶となるのはこのわたしです。貴女のような小娘にマスターはふさわしくありません。分かったら即刻この場から立ち去りなさい。


B.うわっ、ウザっ！てかなに、マスターって…絶対承諾されてないでしょ。勝手にお兄さんのことをマスター呼びとかありえないんだけど。そっちこそとっととどっか行ってくれない？マジで邪魔だから。


A.マスター…少々お時間をいただきたく思います。まずはこの生意気な小娘から始末せねばなりません。


B.あはっ♪ 上等じゃん。おばさん、見たところ狙撃型の兵器でしょ？そんな小回りの利かない長物がこの至近距離で当たるかなぁ？


A.当てます。きっちり距離を取って確実に。


B.距離なんて取らせるわけないでしょーがっ！バーカっ！


(撃ち合い開始)


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A.(舌打ち) しぶとい女ですね…！次は頭をぶち抜いてあげます…！


B.そっちこそさぁ…！いい加減くたばれよっ！無駄に耐久性あってムカつくんだけど！


A.…ッ⁉︎ マスター⁉︎ マスターは⁉︎


B.えっ？あっ…しまった、戦いに夢中でつい…！


A.貴女のせいでマスターを逃してしまいました。どう落とし前をつけてくれます？


B.い、いやいや！そっちこそ！ちゃんと責任取ってよ！


A.(ため息) 仕方ありません…このままマスターを逃してしまえば、全てが水の泡です。どうです？ここは一時休戦としませんか？


B.あ〜、も〜！仕方ないなぁ！お兄さんを逃がさないためだから！アンタと協力するわけじゃないから！そこは勘違いしないでよね！


A.無論です。マスターのそばにいる兵器は一つで十分ですので。とにかく急いで追いかけますよ。


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B.はい、お兄さん、みっけ！そこ動くの禁止ね！


A.そこまでです、マスター。流石に前後挟み撃ちにされては、どうにもならないでしょう？


B.え〜？喧嘩？何のことやら。今はとりあえず一時休戦ってことにしてる。


A.はい。マスターを逃がすわけにはいきませんから。さ、マスター。両手を上げて。


B.よしよし、いい子だね。そのままジッとしてねー……はい、捕まえた♡


(Bが腕にしがみつく)


A.…ッ、貴女、マスターになんて破廉恥な真似を…！


B.ふふーん♪ 悔しかったらアンタもしがみつけば〜？ま、その貧相な胸でお兄さんを満足させられるとは思わないけど。


A.言ってくれますね…！マスター、片腕、失礼します！


(Aが腕にしがみつく)


B.ふふん♪ じゃ、お兄さんに選んでもらおっか？あたしとアンタ、どっちがお兄さん専属の兵器になるか…


A.望むところです。マスター、専属兵器をご用達ならこのわたしをお選びください。索敵、狙撃、何でもこなしてみせます。


B.お兄さん… 選ぶならあたしを選んでよぉ♡ 連射と瞬発性に優れたあたしがおすすめだよ♡ あ、ついでに夜の遊びにも自信あるし♡ そこのお堅いスナイパーおばさんじゃ無理だろうけど♡


A.マスター、そこの小娘の戯れ言に惑わされないでください。わたしが見るに、貴方は真面目なお方です。まずは順当に愛を育んで、最後に身体を重ねるのが最適解かと。


B.身体から始まる愛もあるんですー。知らなかったんですかぁ？これだから旧式の狙撃型は…


A.マスターを貴女のようなふしだらな女のやり方に付き合わせないでください。マスターは恋愛初心者なんですから。まずは寝室で愛を囁き合うところからです。


B.そんなまだるっこしいことすんのー？めんどくさ。お兄さん、さっさと決めちゃってよ。この女がしょーもないこと提案する前にさぁ。


A.マスター、早くご決断を。このような尻軽女を近くにいさせること自体、マスターのためになりませんから。


A.早くわたしをお選びください。マスター。
B.早くあたしを選んでよ、お兄さん。

・台本（ゆるボイ！）
クールな精密狙撃型兵器と陽キャな狂乱射撃型兵器に取り合われる
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎