そこの貴方、その場を動かないで！

手に持ってる物を床に置いて、両手を頭の後ろで組みなさい！
こっちは武器を所持してるの、怪我をしたくなければ無駄な抵抗はしないで。
色々と聞きたい事はあるけど……そうね。

とりあえず、こんな時間に何をしているの？
ここ、今は立ち入り禁止のはずよ？
忘れ物を取りに来た……ね。
私の勘違いじゃなければそれ、この美術館の展示品に見えるんだけど？
ひょっとして貴方、ここに忍び込んだ泥棒？

ふぅん、泥棒じゃなくて怪盗……ね。
潔く正体を明かしてくれて助かるわ、これで面倒な手間が省けるもの。
それにしても、予告状なんて洒落た真似しておいた結果がコレとはね……
ポーカーフェイスを気取ってるけど、内心は気が気じゃないんじゃない？
ま、ひとまずこれ……手錠を掛けさせてもらうから。

ふぅん……抵抗しないのね。
これは、逃げるのを諦めたって事で良いのかしら？
もしそうなら、貴方に感謝しないといけないわね。
余計な手間も省けるし、世間を騒がせてる怪盗を捕まえたなんて事になれば大手柄──って、えぇ!?

な、なんで私が手錠で繋がれてるの⁉
いつの間に……というかどうやって⁉
怪盗相手に油断したからって……い、言ってくれるじゃない！

でも、油断してるのはそっちも同じじゃない？
貴方は廊下の手すりと私を手錠で繋いでくれたけど、もう片方の手はそのままにしてるでしょ？
つまり、手錠の鍵を持ってる私はこんなの簡単に──あれ？
お、おかしいわね……
確かにこのポケットに入れておいたはずなのに……あ。
そういえば制服を洗濯した時、ロッカーの中に置いたままだったっけ……

ちょっ、何よその顔!?
くっ……はいはい分かってますよ！
自分のうっかりでこの状況を打開できなくなっちゃいましたよ！
……ってちょっと、何処に行くつもりなの？
用は済んだから帰るって……も、目撃者を消さなくても平気なの？
もしも私が貴方の事を報告すれば、その時点で──はぁ!?

お前みたいなポンコツなら余裕で撒けるって……こ、このぉ！

いいわ、今日の所は負けを認めてあげる！
だけどね、もしも次会う機会があるなら、その時は絶対に捕まえてやるんだから……！
そんでもって、許される限りの手段で復讐してやる……！

この借りを返すまでは絶対……ゼッタイに諦めないんだからねっ！

・台本（ゆるボイ！）
【クール/ドジっ子】ぱっと見クールな警備員に捕まったけどポンコツ過ぎてどうにかなってしまった
https://x.com/yuru_voi

・台本制作者
霜月鷹