あなたはとある実験体の経過観察係という名のお世話係。
今日も上からの命令で実験体に投薬を開始するが…
「…なんであなたが泣きそうな顔してるんですか。」

実験体は鼻歌を唄っている
（ドアが開く音）

あ、お疲れ様です。毎日毎日休まずに大変ですね。
で、今日は何をされればいいんですか？
注射２本と錠剤の服用ですか。はいはい、分かりました。それならちゃっちゃと始めましょうか。

（道具を用意しながら注射を刺す）
…っ！…相変わらず注射するのは上手ですね。あとは、この錠剤のお薬飲めばいいんですよね。

（錠剤を飲み込む）
はい、終わりましたよ。ああそれから今回分の購入申請リスト書いておいたので、持って行って下さると助かります。
それから、なんですけど。…私が指摘するのもおかしい話ですが、注射一本打つの忘れてませんか？
全くもう、そんな反応したら隠してるってバレバレですよ。
先ほどちらっと私の報告書が見えた時に、注射注入「3本」って書いてありましたので。
そんなことしたら、あなたが上の人から怒られるんじゃないんですか。ほら、さっさと打っちゃってください。
…なんであなたがそんな泣きそうな顔してるんですか。もう、泣かないで下さいよ。ほら落ち着いてください。
さしずめその注射の副作用が酷いか、もしくはそれ以上の危険があるか…ってところですか？
ああほら、いい年した大人が鼻水たらさないでくださいよ。はぁ…これじゃあどっちが年上かわからないじゃないですか。

（実験体があなたを落ち着かせるため背中をたたく）
…あなたとこういう関係になってどれくらいが経ったんですかね。
私は気が付いたらこの場所に拘束されて、訳の分からないまま体のあちこちに薬入れられて。
さらには副作用のせいか体中が痛いし何度も吐いて暴れまわって。
確かに初めの方は抵抗してましたね。あなたにも酷いこと言ってしまったの覚えてます。
どうして私だけがこんな目に…！って何度も思いました。でも、心当たりが全くないわけじゃないんですよね。
実は、私の両親が借金してたんです。それもかなりの額の。
父と母がしたこととはいえ、所詮私はあの人たちの所有物みたいなものです。
おそらく私は何かの薬の実験体として売られたんですかね？
だからそれが原因でここにいるのかな～って考えるようにしてます。
ここには時計がないので正確にはわかりませんが、いつも同じ時間にあなたがやってきては薬を入れられて…苦しんでを何度も繰り返して…
時間の流れって恐ろしいですね。これも副作用の効果なのかもしれませんが、あなたに対する怒りや憎悪みたいなのはだんだんなくなっていきました。
むしろ、あなたがいっつも苦しそうな顔で私に投薬するから、何度も「ごめんなさい」と言って泣きながらここを出ていくから。
あなたも私と同じように誰かに言われてやってるのかなって。同情心？っていうんでしたっけ。こういうの。ストックホルム症候群みたいなのもあるんですかね？
それで今では、ここの生活を受け入れてしまってます。
まぁ毎日の投薬とそのあとの副作用を除けば、ある程度のことは許されてますしね。本も読めるし申請さえ通ればゲームもし放題ですし。えへへ。
それに、学校にも行かなくていいし、勉強だってしなくていい…ここは両親の借金を気にして身の振り方を考えなくていい、無理なアルバイトもしなくていいですから。怒られるかもしれませんが、それなりに幸せですよ。私。
…全く外の世界に未練がないわけではありません。でも、ここに来ることがなければ、あなたに出会うこともありませんでしたから。
もしも、ここではない場所で出会えていたら、私たちは…
いえ、ごめんなさい。なんでもありません。

（薬の副作用で実験体に睡魔が襲う）
あー…なんだろ…さっきの薬のせいですかね…すごく眠いです…お話してる途中なのにごめんなさい。
あの…寝てる間に…最後の一本注射しておいてくれると助かります…
…謝らなくていいんですよ…泣かなくていいんですよ…あなたは、悪くありません…だから、ほら、早く、お薬、打っておいて下さいね…

・台本（ゆるボイ！）
あなたは実験体のお世話係のようです
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
ソライヌ