親を亡くし、身寄りがなくなった少女はあるお屋敷に引き取られ、一人娘のお嬢様と家族同然に暮らすことになる。
やがて、成長した少女はメイドとして屋敷として働くようになり、学業と両立させながら忙しい日々を過ごしていた。
そんなある日、お嬢様から眠れないと声をかけられ、話の流れから添い寝をすることになってしまい……

お嬢様、お呼びですか？
こんな夜更けにどうされました？
……寝付けないのですか？
……では、温かい飲み物でもお持ちいたしましょうか？
……それとも、眠れるまでおそばに居た方が？
ふふふ
今日は素直ですね？
こんな月夜は昔を思い出しますか？
……ええ、そうですね
こんな満月の日に、お嬢様が寝付けないからと……
添い寝をしたことがありましたね
あれは、何年前でしたか……
ずいぶんと懐かしい気がしますね
では、失礼いたしますね

//足音などの演出

//ベッドに座る衣擦れの音

本日はいかがいたしますか？
詩の朗読や、寝つきに良さそうな歌でも歌いますか？
それとも、日常のたわいのないお話をお好みですか？
夜明かしをしたいのであれば……
お嬢様の寝顔を見るまで、お供いたしますね
……あら？
寝顔を見られるのが恥ずかしいのですか？
ふふふ
朝の身支度も手伝っている者相手でも、寝顔を見られるのはお嫌ですか？
乙女心は複雑ですね
……いえ、嫌うなどと
私はお嬢様の成長を喜ばしく思っておりますし
使える幸せをかみしめているところです
本当に、立派になられましたね
……ふふ、年寄りくさい……ですか
そうですね、そうかもしれませんね
それこそ、姉妹のように扱っていただいた頃が懐かしいです
身寄りを無くした私を奥様はわが娘同然に育てて下さり……
お嬢様と同じ時間をすごせたことを、私は生涯忘れません
こうして、おそばに居られるだけで、幸せを感じております
……ただ、そうですね
昔の癖で少し……イタズラをしたくなることもありますが
ふふふ
お嬢様のそういった顔、久しぶりに見ますね
昔のように、名前でお呼びしましょうか？
……はい
そうですね
私は意地悪な姉であり、幼馴染であり、お嬢様のメイドです
ですから、なおさらお嬢様の成長が喜ばしいですし……
苦しくもあります
……なぜ、苦しいのか……ですか？
お嬢様は、考えたことがありませんか？
自分が愛する人が、特別な誰かを選んだとき……
特別でない誰かは、その地位を失うのです
いえ、性格には、優先順位が下がるというだけなのですが……
私はメイドですから、お嬢様の特別にはなれないのです
それが使えるものの定めですから
ふふふ
そうですね、わかりやすく言えば嫉妬です
私は、まだ現れぬお嬢様のお相手になる方に対して
今から嫉妬しているだけです
……意外ですか？
では、忘れてください
昔を懐かしんだ人間の、世迷言です
さぁ、気を取り直して……何をいたしましょうか？
……もっと、話を聞きたい……ですか？
ええと、その……
私にも羞恥心というものがあってですね……
改めて聞かれると、その……
恥ずかしい……の、ですが……
……はぁ、どうしてもと申されますと
……かしこまりました
交換条件をつけさせていただいても？
……では、添い寝をさせてください
メイドという立場では、話し辛いので
仕事を離れて、個人として……
お話したい……です
こうしていると……
その、どうしも……距離をとってしまいますので
……お嫌ですか？
……ありがとう、ございます
それでは、お隣に……失礼します

//衣擦れ

//囁き

ふふふ
こんなに近い距離でお話をするのは、久しぶりですね
髪を整えたり、身支度を手伝ったりしても……
向き合う時間は少ないですから
……どうされました？
……綺麗に、なった？
ふふふ、ありがとうございます
お世辞でも、うれしいですね
お嬢様も、綺麗になりましたよ
だからこそ、すぐに巣立つのだろうなと……
考えてしまうのですが

//距離少し話して

……早い……ということはないはずです
いずれお嬢様にも、気になる人はできるはずなので
それが大人になるということかと
……私……ですか？
考えたこともありませんね
学業に、メイドの仕事に追われていますし……
そもそも男性と知り合う機会が滅多にありませんし……
……いえ、お休みは十分にいただいています
ただ、その……
外に出るよりも、お屋敷の中に居た方が落ち着くので
……そういえば、お互い女学校に通っていて、異性と知り合う機会自体あまりなかったのですね
盲点でした
……お嬢様は、学友の方から恋愛の話などを聞かれたりしないのですか？
……ふふ、そうでしたね
お嬢様は昔から本の虫でしたから
二人で遊ぶときも、言葉遊びをしたり、お互い読んだ本の感想を交換したり
そういうことばかりしていましたね
恋愛よりも、気になることがたくさんありますよね
……ふふ、なんだか、少し安心してしまいました
私達には……現実の恋愛はまだ早いのかもしれませんね

//囁き

でも、本の中で気になる男性はいないんですか？
……その、真顔で聞き返されると、返答に困るのですが
ガールズトークは難しいですね……
少し憧れていたのですが、私には女子力が足りなさそうです
私は……
いつも、お嬢様に似合うかどうかで男性を考えてしまうので……
私の中心には、いつもお嬢様がいるのです
私がこの家に来たときに、さしだされたあの手は一生忘れません
あの時から、私にとって、最も大切な人はお嬢様になったのです
……あ、いえ、その
こ、告白という類のものではなく
あくまで比喩として……
……あ、でも、そうなんでしょうか？
でしたら、私…

お嬢様に……一目ぼれ……していたことになりますね

……あ、あの、お嬢様？
どう、されましたか
……え、はい
ベットから出るのは構いませんが……
一人で眠れますか？


//距離離す

……あ、あの、そんなに私がお嫌ですか？
そうではないなら、何に問題が？
……はい、わかりました
私が居たら眠れないというのでしたら、今日はここで

//衣擦れ

今日は、お邪魔してしまって申し訳ありませんでした
今度はもう少し、寝つきが良くなるような話題を考えて参りますね
……返事は……今度？
私、何かお嬢様に質問などしましたでしょうか？
……あ、はい
休みます
それでは、お休みなさいませ

//足音

・台本（ゆるボイ！）
メイドとお嬢様の添い寝
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
しらたま。