夜中、彼氏が目を覚ますと 彼女がスマホを見ています。どうやら寝つけない様子。
スマホを置いて 寝るように言うと、彼女はお話をねだってきます。彼女は彼の声が大好き。彼氏は彼女のリクエストにこたえて、やさしい声でお話をしてくれます。

―――深夜・寝返りの音―――

あれ？起きてるの？

いや、眩しくないよ、大丈夫。
それより、ずっと起きてたの？

何か、あったのか？

ただ眠れないだけ…か。
でも そろそろ寝ないと明日 起きられないぞ。

うん…って言いながら全然スマホ置く気配ないじゃん。眠れない時のスマホは 逆効果！ま、俺もつい見ちゃうんだけどさ。
ほら、終わりにして 寝よ。

はい、没収〜〜

やーだ じゃないよ、寝るの。
ほら もうちょっと こっち来て。腕枕してあげるから。

―――笑いながら―――
お前のその 腕枕すると必ず肩口に おでこ ぐりぐりってするの なんなの？ちょっと くすぐったいんだけど（笑）

いや、やめなくていい、ってか、やめないで。めちゃくちゃ可愛くて愛おしくなる。愛おしすぎて ぎゅーってしたくなる。
ほら、このまま ぎゅーってして 寝よう。

え？なんか お話して？また？

「俺の声きいてると 落ち着くから」？
「声、大好きなんだー」って、ちょ、そんなかわいく言われたら 断れないじゃん。まぁ、かわいい彼女のお願い、断るつもりなんてなかったけど。
何の話がいい？

星の話？お前好きだなー、星の話。
じゃあ、あの話にする？お前の1番好きな話。

―――咳払い―――

夏の夜空に 一際明るく輝く3つの一等星。こと座のベガ、わし座のアルタイル、はくちょう座のデネブ。この3つの星をつないでできる大きな三角形が、「夏の大三角」です。
比較的見つけやすいのが 東の空に明るく光るベガ、天の川をはさんで 反対側に光るのが アルタイル。
さぁ、ベガ、アルタイル、天の川…ときたら…？
そう。お前の大好きな七夕伝説だな。

こら、そんな わくわくした顔で俺のこと 見てないの！寝るんだから 目 瞑って聞きなさい。

はーい、いいお返事（笑）
じゃあ、続きな。


昔、天の川のほとりに「織姫」という とても美しい娘がいました。織姫はとても綺麗な布を織ることができ、朝から晩まで布織りの仕事をしていました。一生懸命働く織姫の姿を見た父の天帝は、織姫にお婿さんを探そうと考えました。そして、牛飼で 大変真面目な「彦星」という青年を連れてきました。
織姫と彦星は結婚しましたが 毎日遊んでばかりで 仕事を怠けるようになってしまいました。天帝は 何度も二人に きちんと仕事をするように言いましたが、ちっとも言うことをききませんでした。怒った天帝は 織姫と彦星を 天の川をはさんだ東と西に引き離してしまいました。
離ればなれになった二人は とても悲しみ、仕事もせずに 毎日泣いて過ごしました。
そこで天帝は、1年に1度、7月7日の七夕の夜にだけ、二人が会うことを許しました。
それ以来、織姫と彦星は 1年にたった1度のその日を楽しみに 真面目に仕事をするようになったということです。


いつも思うけど、年1回で我慢できるってすごいよな。出張で２･３日離れるのだって寂しいのに…。

え、違う、俺のことじゃないって！お前がいつも寂しがるだろ。
俺が出張に行くってなると、決まったその日からメソメソしてるもんな（笑）それを見て、俺は毎回後ろ髪をひかれる思いで出かけてんの（笑）

だからさ、年に1回しか会えない、その別れ際の辛さなんか想像もできないよな…

俺だったらそもそも そんな条件受け入れられないな。だってさ、実際は 16光年くらい離れてるんだぞ。気の遠くなる距離だろ？そんなに離れてて、しかも でっかい川の向こうで、お前が泣いてるかもって思ったら、たぶん いても立ってもいられない。
天帝に怒られても こうやって お前のこと抱きしめて絶対離さない。

―――布団の擦れる音―――

おぉ、なんだよ、そんな強く抱きついてきて…ん？あ、寝てるのか…。（笑）まったく 眠ってても甘ったれだな〜。ってか、コイツ、俺の熱い想いを聞いてなかったな。…ま、まぁ、聞かれなくて良かったか（笑）

ふふ、可愛い寝顔。
あんな事言ったけど、出張期間すら離れたくなくて、寂しがってるのは 俺の方なんだよな…

―――彼女を抱きしめなおして―――

ずっと 俺の隣にいてくれよ…

・台本（ゆるボイ！）
眠れない夜、年上彼氏のやさしいお話
https://x.com/yuru_voi

・台本制作者
美俐