0
【ヤンデレ?】怪盗のあなたはとうとう捕まってしまいました【高難易度】
  • 監禁
  • インモラル
  • 拘束
  • ヤンデレ
  • 警察 / 刑事
  • 怪盗
公開日2021年09月12日 00:32 更新日2021年09月12日 00:32
文字数
5691文字(約 18分59秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
男性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
怪盗を追う警察
視聴者役柄
世界的な大怪盗
場所
秘密の監禁部屋
あらすじ
世界的な大怪盗であるあなたは、仕事で裏をかかれ、
とうとうあなたを追う刑事さんに捕まってしまいました。

でもその刑事さんは少し様子がおかしいです。

絶体絶命なあなたの運命やいかに。

※この台本はフィクションです。実在の人物や団体とは関係がありません。

※横文字や難しい言葉が出てくるので難易度は高めです。
※男性演者さん向けとして書きましたが、百合として女性演者さんにもご利用いただけると思います。
本編
目が、覚めましたか?

おはよう。≪怪盗・ラブラ・ルバート≫

ふふふ……。

『ミュージアム・ミステリィ』
『メイガス・オブ・ムーンルット・ナイト』
『ファントム・シーフ・レディ』
『フェイスレス・クイーン』

全て、きみの二つ名だ。……本当にすごいよ。

爽やかに流れるような美しい筆跡ひっせきの予告状、
犯行予告は決まって月の出る明るい夜、
増員された警備を嘲笑あざわらうかのように現れ、
機械の目も人の目もかいくぐり、
美術品を盗み去っていく、神出鬼没しんしゅつきぼつの怪盗。

その鮮やかさは盗まれた美術品──その当の本人すら盗まれたことに気付かない。
そんな風にひょうされたこともあったね。

たとえ捕らえられたように見えても、
いつの間にか忽然こつぜんと姿を消している。

老若男女ろうにゃくなんにょの何者にも成り済ますことができる変装能力を持ち、
それはまるで、自分本来の顔を持たないかのようだ。

これまでに盗んできた美術品は100を超え、
ただの一度の失敗もない。

それでいて、殺人はおろか、直接的には人を傷つけたことすらない。

まさしく、物語に出てくる怪盗そのもの。いや、それよりも現実離げんじつばなれしているかもしれないね、君は。

人々がある種のヒーローのように扱うのも分かる。

けれど──、勘違いするなよ。
君がやっていることは、単なる泥棒だ。

……。

状況がつかめなくて混乱しているね。

ああ、あまり藻掻もがくのはおすすめしないよ。

君は今、目隠しをされた状態で、
椅子に座らされ、
両手を本物の手錠でつながれた上に、
麻縄あさなわできつく、両の手足を縛られている。
たぶん手首が痛いと思う。
あまり無理に解こうとすると、
血が、にじんでしまうかもしれない。

君の身体が傷つくのは……見たくない。

それは……、よくない。

だから、無駄な抵抗はしないでほしい。

すまない。
……手荒てあらなことをしておいて、勝手なことを言っているのは分かっている。

けれど、今以上に酷いことをするつもりはないんだ。

だから、しばらくおとなしくしてくれるとありがたい。

……、少し、状況がつかめたようだね。

手荒てあらなこと、とは言ったけれど、これは私なりのきみへの敬意でもあるんだ。

君は怪盗だ。
いかなる錠前じょうまえも君の前ではコンビニの入口がごとしだ。

だから、本当にすまないとは思いながらも、力いっぱい縛らせてもらった。

本当に遠慮えんりょなく縛ったから、もしかしたら骨にひびくらいは入っているかもしれないね。

……そこまでは痛くないかい? なら良かった。

実は縛るとき、このまま壊してしまうのじゃないかと、心配になったんだ。

さて、状況の説明をしよう。

私は、君を──≪怪盗ラブラ・ルバート≫を追う担当刑事だよ。
今はまだ目隠しをしていてわからないかもしれないけれど、
多分君も私の顔を見たことがあると思う。

……。

……ああ、その時に君が乗った気球から落ちたやつが私だよ。

覚えていてくれたんだね。

まあ、実際にはそこに乗っていたのはマネキンで、
君は全然別の手段で脱出していたということが分かったのは後になってからだったけどね。

光栄だよ。

……それもそうか。

私は、君の2件目の事件から、ずっと追い続けていたからね。

君が海外の美術品を狙った時は、特別に滞在許可を貰って捜査に当たったこともあった。

現地の当局から怪しまれたこともあったけれどね。

さて、昔話はいい。

君がこんな状況になっているのは……、

私に捕まったから。だよ。

……。ああ、……。

ああ、そうだね。
確かに君が言う通り。
──警察がこんな違法なやりくちで身柄の拘束をするはずがない。

じゃあ、考えられることは、何だと思う?
≪怪盗・ラブラ・ルバート≫?

分からないかな。
じゃあ、今夜の流れを、一緒に思い返してみようか……。

今夜、きみが予告したのは、歴史の裏に消えたロマノフ王朝の秘宝。
『ユヴェリルニィ・アムリエト・グリゴリオサ』

ここでは、
『グレゴリオス・ジュエル・アミュレット』
の名前で公開された、秘宝中の秘宝。

ロマノフ王朝おうちょうの皇帝、ニコライ1世に献上けんじょうされた、ウラル山脈産の希少鉱石きしょうこうせき
アレキサンドライト。

そのアレキサンドライトという宝石は
昼と夜で色が変わるという特異とくいな性質をもっていて、
昼間は透き通るような緑に、
夜には深く燃える赤に光る、奇妙な宝石。
その中でもひときわ深い色をたたえたものを使って作られた、
厄除け、繁栄の祈りを込めたアミュレット。
『グレゴリオス・ジュエル・アミュレット』

それは、ニコライ1世から、宝石の名の由来となった
皇太子こうたいしのアレクサンドル2世の手に渡り、
それから孫にあたる皇帝ニコライ2世の手に渡った。

その後、『グレゴリオス・ジュエル・アミュレット』はニコライ2世から、
怪僧かいそう異名いみょうで知られる、
グレゴリー・イフモヴィチ・ラスプーチンに下賜かしされ、
彼が暗殺される、その直前まで彼の元にあったとされている。

彼は暗殺の際に幾度いくたび傷つけられようとも命を落とさず、
一度は黄泉還よみがえったという逸話から、
転じて、この『グレゴリオス・ジュエル・アミュレット』は
手にしたものに不死を与える、と言われるようになった──。

まあ、この辺りは眉唾まゆつばだけどね。

そのあたりの怪しい伝説や、ロマノフの秘宝だという
付加価値ふかかちを除いても、
特に大きく色が変化するロシアのウラル山脈原産のアレキサンドライトを用いた
100年を超える年月を刻むアンティークジュエリー、
超一流の金細工職人きんざいくしょくにんによってほどこされた
力強ちからづよくも繊細せんさい装飾そうしょく

それだけで、その価値は数百億にもなると言われている。
そこにロマノフ王朝おうちょう最後の秘宝であるとか、
不死の伝承……という価値が加われば……、

──もはやこの秘宝は金額で表すのが馬鹿らしいほどの代物しろものだ。

そんな特級とっきゅうの大秘宝なぜこの国にあるのか、
という話は置いておくとして。

君が狙ったのは、……まあ、そういうアニメや小説も真っさおなとんでもない秘宝だ。

そして……、

君は……、
無敗の怪盗、ラブラ・ルバートは。
仕事に失敗した。

今回も、君の仕事は華麗かれいだったよ。

特等席で見ていた私が保証する。

今回君が使ったのは、
怪人四十面相かいじんしじゅうめんそうが好んでもちいたのと同じ、
ごく単純で古典的な「ブラック=マジック」だね。
照明の具合と黒い布、見えにくい糸なんかを使って
「そこにあるものを見えなくする」奇術だ。

古くは江戸時代の見世物小屋みせものこやで、
口から牛を丸のみにしたように見せる呑牛術どんぎゅうじゅつ
というものがあってね……。

いや、この辺りは怪盗の君にとっては釈迦しゃか説法せっぽうか。
すまない。

さて、そういうわけで、
今回の『グレゴリオス・ジュエル・アミュレット』とブラック=マジックは相性がいい。

当てる光の種類で色が変わる、というアレキサンドライトの特性を生かすため、
その美術館では薄暗くした展示室のショーケースの中、
一定間隔で蛍光灯けいこうとう白熱灯はくねつとうの光をゆっくりと切り替える、という方法で展示していた。

警護のために増員された警察官に変装した君は、予告時間に合わせて遠隔えんかく
全館を停電させると、予備電源よびでんげんに切り替わるほんの十秒ほどの間に、
アミュレットを照らしていた照明の、その焦点をずらし、
そして、「宝を盗んだ」というメッセージをケースに貼り付けたんだ。

照らされる場所がちょっとズレただけ。
人間の目というのはたったそれだけで、『消えた』と認識してしまう。

そこにいた警備の者たちが、停電の復旧と共に、最初に観たものは、
明るく照らし出されたショーケースの中の何もない床。
そして、次に目に入るのが、「お宝を盗んだ」というメッセージ。というわけだ。

流石の怪盗であっても、停電している十秒足らずの時間で、
あれだけ強固きょうこに守られたショーケースからアミュレットを盗み出すなんていう芸当げいとうはできない。
それは誰でも分かることだ。

けれど、怪盗・ラブラ・ルバートは狙った獲物を決してのがさない。

その怪盗がすでに盗んだ、と言っている。
ならば、その到底とうてい不可能な芸当げいとうは達成されてしまった。

そこに居た者たちは、全員がそう思った。

そんな時に、君はいかにもどこかに居そうな警察官の声で言う。
「向こうに逃げたぞ!」
ってね。それで、そこに居た全員は君の術中にはまって部屋から出る。そして、いないはずの怪盗の影を追うというわけだ。

あとは手薄になったショーケースからゆっくり、目的の秘宝を盗み出せばいい。

ゆっくり、とは言ったが、君には1分もあれば十分だったようだけどね。

あとは、周囲を捜索する警察官に交じって逃走する。

それで、君の今回の仕事は完遂かんすいされる……はず、だった。

……驚いているね。

私は君の手口を何度も見て、そして参考になるかもしれないと、
とある奇術師に弟子入りしたんだ。

おかげで、たいていのマジックショーは面白くなくなってしまったけれどね。

でも、こうして君をつかまえることができた。

……。そうだよ。

君は今回必ずブラック=マジックを使う。
私はそれを確信して、初めから何があっても動じないつもりで、
展示室のすみに隠れていた。

そして、
『グレゴリオス・ジュエル・アミュレット』を手にして、一瞬気が緩んだ君を、
背後から襲った。

流石の怪盗も、死角からのスタンガンには対応ができなかったようだね。

気を失った君の身体は驚くほどに華奢きゃしゃだったよ。

そして、君は、敗北した。

……。ん? ああ、この場所か。

ここはね、私の秘密基地……みたいなものなんだ。

君が完璧な警察官に変装してくれていて助かったよ。

おかげで、『体調不良で倒れた警察官を現場から退避させる』

という形で、堂々と、

君をここまで連れてくることができた。

……。

ああ、そうだね。

私がやっていることは、拉致監禁らちかんきん

でも仕方がないよ。

だって……どうしても、君を捕まえたかったからね。

逮捕……という意味じゃないよ。

君の身体も、心も、全てを奪いつくして、
自分のものにしたい。

そういう、……意味合いだよ。

君のことは、一目見たときから心を奪われたよ。

月光げっこうもと、美術館の尖塔せんとうの上に立ち、
無様にも慌てふためく私たち警察を睥睨へいげいするその不敵な姿。

それはまるで、御伽噺おとぎばなしのようで、私は心を奪われた。

私は警察だ。君のことは捕まえなければいけない。
そして、法のもとで、
しかるべきさばきを受けさせなければならない。

だけど、君が予告を出して、

そして、美術館で君に会うたびに、

私は君にかれていった。

君を追いかけていると、必ず警護する対象の大秘宝と対面する。
けれど、そのどれも、私の心には響かなかった。

だって、私は、この世のどんな芸術品よりも美しい、
君という存在を知ってしまったんだから。

君を、自分のものにしたい。

君の全てを、奪いたい。

君の──、
屋根の上を軽々と跳ね回る、
猫科の肉食獣めいた柔軟な筋肉をもった脚を、
私のものにしたい。

君の──、
いかなる錠前をも篭絡ろうらくする
白雪しらゆきのようにけがれなき繊細な指を、
私のものにしたい。

君の──、
月光に照らされて怪しく輝く美しい瞳を、
私のものにしたい。

私は、どうしようもなく君にれてしまった。

他の誰にも渡さない。
……渡したくない。

だから私は、死角からのスタンガンなんていう、
反則を使った。

そうしてでも、君を奪いたかった。

私以外の、他の誰にも君をとらえさせたくなかった。

君という至高しこうの芸術品を、
私の部屋の額縁がくぶちに閉じ込めてしまいたかった。

そういう点では、私たちは同類、だね。

……。

そうだよ。

君には……、≪怪盗・ラブラ・ルバート≫には今日で引退してもらう。

君は海外でも活躍していて、インターポールに国際手配もされているからね。

万一逮捕されてしまえば、海外に引き渡されて、
おぞましい刑罰を受けるかもしれないだろう。

そんなことは──耐え切れない。

だから、一生ここで暮らすんだよ。

…………。

ああ、もちろん。

君が稀代きだい天才大怪盗てんさいだいかいとうであることは、
重々承知じゅうじゅうしょうちしている。

どんな錠前じょうまえでもいともたやすく破ってしまう君を、
物理的に逃げ出さないようにするなんてことは、事実上不可能だ。

その時は出入り口をふさいだコンクリートの箱にでも入れるか、
いっそ君の手足でももぎ取ってしまうしかない。

……そう怯えないで。

私は、君の今の姿が至高の宝物ほうもつそのものだと思っている。

そんなひどいことはしないよ。

だから、君にはこれを使おうと思う。

何かわかるかい?

これは媚薬びやくれ薬。そういった類のものだ。

……。

……ああ、確かに科学的じゃない。
でも、それは今更じゃないかい。

私は君が獲物にした美術品の中に、ファンタジーとしか思えないような
摩訶不思議現象まかふしぎげんしょうを引き起こす
アーティファクトも含まれていたってことを知っているよ。
なんたって、ずっと君を追いかけてきたんだからね。

これもそういった、君を追う中で手に入れた
ファンタジーに片足を踏み入れた代物しろものさ。

これは筋肉に注射をする媚薬びやくで、打ってからしばらくすると
『目の前の人と一つにならなければ死ぬのではないか』
という強烈な強迫観念きょうはくかんねんを植え付け、燃え上がらせる薬だ。

その強迫観念の効果は短く、せいぜい2、3日だそうだが、その短い間に
肉体と魂を完全に溺れさせてしまうのだそうだ。

そうなったが最後、というと聞こえは悪いけれど、
そうなるともはや、その人とげるのが当たり前だと、
そんな風に、持っている常識が書き換わってしまうのだそうだ。

今からこれを打つよ。

ふふ、抵抗はしないほうがいい。
刺している途中に針がズレたらとっても痛いよ。

そうにらまないで。さあ、……すぐに良くなるからね。

ああ、そんな表情も素敵だ。

その瞳、……やはり、どんな宝石より美しい。

……。

(うろたえて)

いや待て。何かがおかしい……。なんだ……?

なんで私を睨んでいる。……いや、そうじゃない。

君には、目隠しをしていたはずだ。

どうして目隠しを外しているんだ?

……いや、一体いつから、目隠しを外していた!

どうやって外した!!

なんでそんな不敵な表情でわらっているんだ!

な、嘘だろ!! あの拘束をどうやって──

まて、なんでっ!!!

ヴァアッ!!!

(間)

はあ……はあ……、

……。

にげ……られた。

あの……、状況……から……?

スタンガン……。

私は、スタンガンで、
気絶させられた……のか?

はっ、……予告……状……?

…………。

「『グレゴリオス・ジュエル・アミュレット』と、あなたの心、確かにいただきました。
あなたの師匠より」

……あなたの……し、しょう?

まさか……。

いや……、そうか『フェイスレス・クイーン』。

何者にもなれる完璧な変装能力。

あの奇術師のじいさんが、君……だったのか……。

私は、初めから……君のてのひらの上……だったのか。

はは、はははははは!!

さながら私は、釈迦しゃかの指に名前を書いて小便をする斉天大聖せいてんたいせいじゃないか……。

はは……は……。

畜生!!!

≪怪盗・ラブラ・ルバート≫! 次こそは絶対に!!!
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
【ヤンデレ?】怪盗のあなたはとうとう捕まってしまいました【高難易度】
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
剣城・アイスドーラ・凍子
ライター情報
つるぎ あいすどーら とうこ
剣城・アイスドーラ・凍子です。

駆け出しの台本師

Twitter:@Ice_dola

いろんな設定のシチュエーションを書いていきます。
有償販売利用の条件
連絡先までご相談ください。
利用実績(最大10件)
剣城・アイスドーラ・凍子 の投稿台本(最大10件)