- 監禁
- インモラル
- 拘束
- ヤンデレ
- 警察 / 刑事
- 怪盗
公開日2021年09月12日 00:32
更新日2021年09月12日 00:32
文字数
5691文字(約 18分59秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
男性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
怪盗を追う警察
視聴者役柄
世界的な大怪盗
場所
秘密の監禁部屋
あらすじ
世界的な大怪盗であるあなたは、仕事で裏をかかれ、
とうとうあなたを追う刑事さんに捕まってしまいました。
でもその刑事さんは少し様子がおかしいです。
絶体絶命なあなたの運命やいかに。
※この台本はフィクションです。実在の人物や団体とは関係がありません。
※横文字や難しい言葉が出てくるので難易度は高めです。
※男性演者さん向けとして書きましたが、百合として女性演者さんにもご利用いただけると思います。
とうとうあなたを追う刑事さんに捕まってしまいました。
でもその刑事さんは少し様子がおかしいです。
絶体絶命なあなたの運命やいかに。
※この台本はフィクションです。実在の人物や団体とは関係がありません。
※横文字や難しい言葉が出てくるので難易度は高めです。
※男性演者さん向けとして書きましたが、百合として女性演者さんにもご利用いただけると思います。
本編
目が、覚めましたか?
おはよう。≪怪盗・ラブラ・ルバート≫
ふふふ……。
『ミュージアム・ミステリィ』
『メイガス・オブ・ムーンルット・ナイト』
『ファントム・シーフ・レディ』
『フェイスレス・クイーン』
全て、きみの二つ名だ。……本当に凄 いよ。
爽やかに流れるような美しい筆跡 の予告状、
犯行予告は決まって月の出る明るい夜、
増員された警備を嘲笑 うかのように現れ、
機械の目も人の目もかいくぐり、
美術品を盗み去っていく、神出鬼没 の怪盗。
その鮮やかさは盗まれた美術品──その当の本人すら盗まれたことに気付かない。
そんな風に評 されたこともあったね。
たとえ捕らえられたように見えても、
いつの間にか忽然 と姿を消している。
老若男女 の何者にも成り済ますことができる変装能力を持ち、
それはまるで、自分本来の顔を持たないかのようだ。
これまでに盗んできた美術品は100を超え、
ただの一度の失敗もない。
それでいて、殺人はおろか、直接的には人を傷つけたことすらない。
まさしく、物語に出てくる怪盗そのもの。いや、それよりも現実離 れしているかもしれないね、君は。
人々がある種のヒーローのように扱うのも分かる。
けれど──、勘違いするなよ。
君がやっていることは、単なる泥棒だ。
……。
状況がつかめなくて混乱しているね。
ああ、あまり藻掻 くのはおすすめしないよ。
君は今、目隠しをされた状態で、
椅子に座らされ、
両手を本物の手錠で繋 がれた上に、
麻縄 できつく、両の手足を縛られている。
たぶん手首が痛いと思う。
あまり無理に解こうとすると、
血が、滲 んでしまうかもしれない。
君の身体が傷つくのは……見たくない。
それは……、よくない。
だから、無駄な抵抗はしないでほしい。
すまない。
……手荒 なことをしておいて、勝手なことを言っているのは分かっている。
けれど、今以上に酷いことをするつもりはないんだ。
だから、しばらくおとなしくしてくれるとありがたい。
……、少し、状況がつかめたようだね。
手荒 なこと、とは言ったけれど、これは私なりのきみへの敬意でもあるんだ。
君は怪盗だ。
いかなる錠前 も君の前ではコンビニの入口が如 しだ。
だから、本当にすまないとは思いながらも、力いっぱい縛らせてもらった。
本当に遠慮 なく縛ったから、もしかしたら骨に罅 くらいは入っているかもしれないね。
……そこまでは痛くないかい? なら良かった。
実は縛るとき、このまま壊してしまうのじゃないかと、心配になったんだ。
さて、状況の説明をしよう。
私は、君を──≪怪盗ラブラ・ルバート≫を追う担当刑事だよ。
今はまだ目隠しをしていてわからないかもしれないけれど、
多分君も私の顔を見たことがあると思う。
……。
……ああ、その時に君が乗った気球から落ちたやつが私だよ。
覚えていてくれたんだね。
まあ、実際にはそこに乗っていたのはマネキンで、
君は全然別の手段で脱出していたということが分かったのは後になってからだったけどね。
光栄だよ。
……それもそうか。
私は、君の2件目の事件から、ずっと追い続けていたからね。
君が海外の美術品を狙った時は、特別に滞在許可を貰って捜査に当たったこともあった。
現地の当局から怪しまれたこともあったけれどね。
さて、昔話はいい。
君がこんな状況になっているのは……、
私に捕まったから。だよ。
……。ああ、……。
ああ、そうだね。
確かに君が言う通り。
──警察がこんな違法なやり口 で身柄の拘束をするはずがない。
じゃあ、考えられることは、何だと思う?
≪怪盗・ラブラ・ルバート≫?
分からないかな。
じゃあ、今夜の流れを、一緒に思い返してみようか……。
今夜、きみが予告したのは、歴史の裏に消えたロマノフ王朝の秘宝。
『ユヴェリルニィ・アムリエト・グリゴリオサ』
ここでは、
『グレゴリオス・ジュエル・アミュレット』
の名前で公開された、秘宝中の秘宝。
ロマノフ王朝 の皇帝、ニコライ1世に献上 された、ウラル山脈産の希少鉱石 、
アレキサンドライト。
そのアレキサンドライトという宝石は
昼と夜で色が変わるという特異 な性質をもっていて、
昼間は透き通るような緑に、
夜には深く燃える赤に光る、奇妙な宝石。
その中でもひときわ深い色を湛 えたものを使って作られた、
厄除け、繁栄の祈りを込めたアミュレット。
『グレゴリオス・ジュエル・アミュレット』
それは、ニコライ1世から、宝石の名の由来となった
皇太子 のアレクサンドル2世の手に渡り、
それから孫にあたる皇帝ニコライ2世の手に渡った。
その後、『グレゴリオス・ジュエル・アミュレット』はニコライ2世から、
怪僧 の異名 で知られる、
グレゴリー・イフモヴィチ・ラスプーチンに下賜 され、
彼が暗殺される、その直前まで彼の元にあったとされている。
彼は暗殺の際に幾度 傷つけられようとも命を落とさず、
一度は黄泉還 ったという逸話から、
転じて、この『グレゴリオス・ジュエル・アミュレット』は
手にしたものに不死を与える、と言われるようになった──。
まあ、この辺りは眉唾 だけどね。
そのあたりの怪しい伝説や、ロマノフの秘宝だという
付加価値 を除いても、
特に大きく色が変化するロシアのウラル山脈原産のアレキサンドライトを用いた
100年を超える年月を刻むアンティークジュエリー、
超一流の金細工職人 によって施 された
力強 くも繊細 な装飾 。
それだけで、その価値は数百億にもなると言われている。
そこにロマノフ王朝 最後の秘宝であるとか、
不死の伝承……という価値が加われば……、
──もはやこの秘宝は金額で表すのが馬鹿らしいほどの代物 だ。
そんな特級 の大秘宝なぜこの国にあるのか、
という話は置いておくとして。
君が狙ったのは、……まあ、そういうアニメや小説も真っ青 なとんでもない秘宝だ。
そして……、
君は……、
無敗の怪盗、ラブラ・ルバートは。
仕事に失敗した。
今回も、君の仕事は華麗 だったよ。
特等席で見ていた私が保証する。
今回君が使ったのは、
怪人四十面相 が好んで用 いたのと同じ、
ごく単純で古典的な「ブラック=マジック」だね。
照明の具合と黒い布、見えにくい糸なんかを使って
「そこにあるものを見えなくする」奇術だ。
古くは江戸時代の見世物小屋 で、
口から牛を丸のみにしたように見せる呑牛術
というものがあってね……。
いや、この辺りは怪盗の君にとっては釈迦 に説法 か。
すまない。
さて、そういうわけで、
今回の『グレゴリオス・ジュエル・アミュレット』とブラック=マジックは相性がいい。
当てる光の種類で色が変わる、というアレキサンドライトの特性を生かすため、
その美術館では薄暗くした展示室のショーケースの中、
一定間隔で蛍光灯 と白熱灯 の光をゆっくりと切り替える、という方法で展示していた。
警護のために増員された警察官に変装した君は、予告時間に合わせて遠隔 で
全館を停電させると、予備電源 に切り替わるほんの十秒ほどの間に、
アミュレットを照らしていた照明の、その焦点をずらし、
そして、「宝を盗んだ」というメッセージをケースに貼り付けたんだ。
照らされる場所がちょっとズレただけ。
人間の目というのはたったそれだけで、『消えた』と認識してしまう。
そこにいた警備の者たちが、停電の復旧と共に、最初に観たものは、
明るく照らし出されたショーケースの中の何もない床。
そして、次に目に入るのが、「お宝を盗んだ」というメッセージ。というわけだ。
流石の怪盗であっても、停電している十秒足らずの時間で、
あれだけ強固 に守られたショーケースからアミュレットを盗み出すなんていう芸当 はできない。
それは誰でも分かることだ。
けれど、怪盗・ラブラ・ルバートは狙った獲物を決して逃 さない。
その怪盗が既 に盗んだ、と言っている。
ならば、その到底 不可能な芸当 は達成されてしまった。
そこに居た者たちは、全員がそう思った。
そんな時に、君はいかにもどこかに居そうな警察官の声で言う。
「向こうに逃げたぞ!」
ってね。それで、そこに居た全員は君の術中にはまって部屋から出る。そして、いないはずの怪盗の影を追うというわけだ。
あとは手薄になったショーケースからゆっくり、目的の秘宝を盗み出せばいい。
ゆっくり、とは言ったが、君には1分もあれば十分だったようだけどね。
あとは、周囲を捜索する警察官に交じって逃走する。
それで、君の今回の仕事は完遂 される……はず、だった。
……驚いているね。
私は君の手口を何度も見て、そして参考になるかもしれないと、
とある奇術師に弟子入りしたんだ。
おかげで、たいていのマジックショーは面白くなくなってしまったけれどね。
でも、こうして君をつかまえることができた。
……。そうだよ。
君は今回必ずブラック=マジックを使う。
私はそれを確信して、初めから何があっても動じないつもりで、
展示室の隅 に隠れていた。
そして、
『グレゴリオス・ジュエル・アミュレット』を手にして、一瞬気が緩んだ君を、
背後から襲った。
流石の怪盗も、死角からのスタンガンには対応ができなかったようだね。
気を失った君の身体は驚くほどに華奢 だったよ。
そして、君は、敗北した。
……。ん? ああ、この場所か。
ここはね、私の秘密基地……みたいなものなんだ。
君が完璧な警察官に変装してくれていて助かったよ。
おかげで、『体調不良で倒れた警察官を現場から退避させる』
という形で、堂々と、
君をここまで連れてくることができた。
……。
ああ、そうだね。
私がやっていることは、拉致監禁 。
でも仕方がないよ。
だって……どうしても、君を捕まえたかったからね。
逮捕……という意味じゃないよ。
君の身体も、心も、全てを奪いつくして、
自分のものにしたい。
そういう、……意味合いだよ。
君のことは、一目見たときから心を奪われたよ。
月光 の下 、美術館の尖塔 の上に立ち、
無様にも慌てふためく私たち警察を睥睨 するその不敵な姿。
それはまるで、御伽噺 のようで、私は心を奪われた。
私は警察だ。君のことは捕まえなければいけない。
そして、法の下 で、
然 るべき裁 きを受けさせなければならない。
だけど、君が予告を出して、
そして、美術館で君に会うたびに、
私は君に惹 かれていった。
君を追いかけていると、必ず警護する対象の大秘宝と対面する。
けれど、そのどれも、私の心には響かなかった。
だって、私は、この世のどんな芸術品よりも美しい、
君という存在を知ってしまったんだから。
君を、自分のものにしたい。
君の全てを、奪いたい。
君の──、
屋根の上を軽々と跳ね回る、
猫科の肉食獣めいた柔軟な筋肉をもった脚を、
私のものにしたい。
君の──、
いかなる錠前をも篭絡 する
白雪 のように穢 れなき繊細な指を、
私のものにしたい。
君の──、
月光に照らされて怪しく輝く美しい瞳を、
私のものにしたい。
私は、どうしようもなく君に惚 れてしまった。
他の誰にも渡さない。
……渡したくない。
だから私は、死角からのスタンガンなんていう、
反則を使った。
そうしてでも、君を奪いたかった。
私以外の、他の誰にも君を捕 えさせたくなかった。
君という至高 の芸術品を、
私の部屋の額縁 に閉じ込めてしまいたかった。
そういう点では、私たちは同類、だね。
……。
そうだよ。
君には……、≪怪盗・ラブラ・ルバート≫には今日で引退してもらう。
君は海外でも活躍していて、インターポールに国際手配もされているからね。
万一逮捕されてしまえば、海外に引き渡されて、
おぞましい刑罰を受けるかもしれないだろう。
そんなことは──耐え切れない。
だから、一生ここで暮らすんだよ。
…………。
ああ、もちろん。
君が稀代 の天才大怪盗 であることは、
重々承知 している。
どんな錠前 でもいともたやすく破ってしまう君を、
物理的に逃げ出さないようにするなんてことは、事実上不可能だ。
その時は出入り口を塞 いだコンクリートの箱にでも入れるか、
いっそ君の手足でももぎ取ってしまうしかない。
……そう怯えないで。
私は、君の今の姿が至高の宝物 そのものだと思っている。
そんなひどいことはしないよ。
だから、君にはこれを使おうと思う。
何かわかるかい?
これは媚薬 。惚 れ薬。そういった類のものだ。
……。
……ああ、確かに科学的じゃない。
でも、それは今更じゃないかい。
私は君が獲物にした美術品の中に、ファンタジーとしか思えないような
摩訶不思議現象 を引き起こす
アーティファクトも含まれていたってことを知っているよ。
なんたって、ずっと君を追いかけてきたんだからね。
これもそういった、君を追う中で手に入れた
ファンタジーに片足を踏み入れた代物 さ。
これは筋肉に注射をする媚薬 で、打ってからしばらくすると
『目の前の人と一つにならなければ死ぬのではないか』
という強烈な強迫観念 を植え付け、燃え上がらせる薬だ。
その強迫観念の効果は短く、せいぜい2、3日だそうだが、その短い間に
肉体と魂を完全に溺れさせてしまうのだそうだ。
そうなったが最後、というと聞こえは悪いけれど、
そうなるともはや、その人と添 い遂 げるのが当たり前だと、
そんな風に、持っている常識が書き換わってしまうのだそうだ。
今からこれを打つよ。
ふふ、抵抗はしないほうがいい。
刺している途中に針がズレたらとっても痛いよ。
そう睨 まないで。さあ、……すぐに良くなるからね。
ああ、そんな表情も素敵だ。
その瞳、……やはり、どんな宝石より美しい。
……。
(うろたえて)
いや待て。何かがおかしい……。なんだ……?
なんで私を睨んでいる。……いや、そうじゃない。
君には、目隠しをしていたはずだ。
どうして目隠しを外しているんだ?
……いや、一体いつから、目隠しを外していた!
どうやって外した!!
なんでそんな不敵な表情でわらっているんだ!
な、嘘だろ!! あの拘束をどうやって──
まて、なんでっ!!!
ヴァアッ!!!
(間)
はあ……はあ……、
……。
にげ……られた。
あの……、状況……から……?
スタンガン……。
私は、スタンガンで、
気絶させられた……のか?
はっ、……予告……状……?
…………。
「『グレゴリオス・ジュエル・アミュレット』と、あなたの心、確かにいただきました。
あなたの師匠より」
……あなたの……し、しょう?
まさか……。
いや……、そうか『フェイスレス・クイーン』。
何者にもなれる完璧な変装能力。
あの奇術師の爺 さんが、君……だったのか……。
私は、初めから……君の掌 の上……だったのか。
はは、はははははは!!
さながら私は、釈迦 の指に名前を書いて小便をする斉天大聖 じゃないか……。
はは……は……。
畜生!!!
≪怪盗・ラブラ・ルバート≫! 次こそは絶対に!!!
おはよう。≪怪盗・ラブラ・ルバート≫
ふふふ……。
『ミュージアム・ミステリィ』
『メイガス・オブ・ムーンルット・ナイト』
『ファントム・シーフ・レディ』
『フェイスレス・クイーン』
全て、きみの二つ名だ。……本当に
爽やかに流れるような美しい
犯行予告は決まって月の出る明るい夜、
増員された警備を
機械の目も人の目もかいくぐり、
美術品を盗み去っていく、
その鮮やかさは盗まれた美術品──その当の本人すら盗まれたことに気付かない。
そんな風に
たとえ捕らえられたように見えても、
いつの間にか
それはまるで、自分本来の顔を持たないかのようだ。
これまでに盗んできた美術品は100を超え、
ただの一度の失敗もない。
それでいて、殺人はおろか、直接的には人を傷つけたことすらない。
まさしく、物語に出てくる怪盗そのもの。いや、それよりも
人々がある種のヒーローのように扱うのも分かる。
けれど──、勘違いするなよ。
君がやっていることは、単なる泥棒だ。
……。
状況がつかめなくて混乱しているね。
ああ、あまり
君は今、目隠しをされた状態で、
椅子に座らされ、
両手を本物の手錠で
たぶん手首が痛いと思う。
あまり無理に解こうとすると、
血が、
君の身体が傷つくのは……見たくない。
それは……、よくない。
だから、無駄な抵抗はしないでほしい。
すまない。
……
けれど、今以上に酷いことをするつもりはないんだ。
だから、しばらくおとなしくしてくれるとありがたい。
……、少し、状況がつかめたようだね。
君は怪盗だ。
いかなる
だから、本当にすまないとは思いながらも、力いっぱい縛らせてもらった。
本当に
……そこまでは痛くないかい? なら良かった。
実は縛るとき、このまま壊してしまうのじゃないかと、心配になったんだ。
さて、状況の説明をしよう。
私は、君を──≪怪盗ラブラ・ルバート≫を追う担当刑事だよ。
今はまだ目隠しをしていてわからないかもしれないけれど、
多分君も私の顔を見たことがあると思う。
……。
……ああ、その時に君が乗った気球から落ちたやつが私だよ。
覚えていてくれたんだね。
まあ、実際にはそこに乗っていたのはマネキンで、
君は全然別の手段で脱出していたということが分かったのは後になってからだったけどね。
光栄だよ。
……それもそうか。
私は、君の2件目の事件から、ずっと追い続けていたからね。
君が海外の美術品を狙った時は、特別に滞在許可を貰って捜査に当たったこともあった。
現地の当局から怪しまれたこともあったけれどね。
さて、昔話はいい。
君がこんな状況になっているのは……、
私に捕まったから。だよ。
……。ああ、……。
ああ、そうだね。
確かに君が言う通り。
──警察がこんな違法なやり
じゃあ、考えられることは、何だと思う?
≪怪盗・ラブラ・ルバート≫?
分からないかな。
じゃあ、今夜の流れを、一緒に思い返してみようか……。
今夜、きみが予告したのは、歴史の裏に消えたロマノフ王朝の秘宝。
『ユヴェリルニィ・アムリエト・グリゴリオサ』
ここでは、
『グレゴリオス・ジュエル・アミュレット』
の名前で公開された、秘宝中の秘宝。
ロマノフ
アレキサンドライト。
そのアレキサンドライトという宝石は
昼と夜で色が変わるという
昼間は透き通るような緑に、
夜には深く燃える赤に光る、奇妙な宝石。
その中でもひときわ深い色を
厄除け、繁栄の祈りを込めたアミュレット。
『グレゴリオス・ジュエル・アミュレット』
それは、ニコライ1世から、宝石の名の由来となった
それから孫にあたる皇帝ニコライ2世の手に渡った。
その後、『グレゴリオス・ジュエル・アミュレット』はニコライ2世から、
グレゴリー・イフモヴィチ・ラスプーチンに
彼が暗殺される、その直前まで彼の元にあったとされている。
彼は暗殺の際に
一度は
転じて、この『グレゴリオス・ジュエル・アミュレット』は
手にしたものに不死を与える、と言われるようになった──。
まあ、この辺りは
そのあたりの怪しい伝説や、ロマノフの秘宝だという
特に大きく色が変化するロシアのウラル山脈原産のアレキサンドライトを用いた
100年を超える年月を刻むアンティークジュエリー、
超一流の
それだけで、その価値は数百億にもなると言われている。
そこにロマノフ
不死の伝承……という価値が加われば……、
──もはやこの秘宝は金額で表すのが馬鹿らしいほどの
そんな
という話は置いておくとして。
君が狙ったのは、……まあ、そういうアニメや小説も真っ
そして……、
君は……、
無敗の怪盗、ラブラ・ルバートは。
仕事に失敗した。
今回も、君の仕事は
特等席で見ていた私が保証する。
今回君が使ったのは、
ごく単純で古典的な「ブラック=マジック」だね。
照明の具合と黒い布、見えにくい糸なんかを使って
「そこにあるものを見えなくする」奇術だ。
古くは江戸時代の
口から牛を丸のみにしたように見せる
というものがあってね……。
いや、この辺りは怪盗の君にとっては
すまない。
さて、そういうわけで、
今回の『グレゴリオス・ジュエル・アミュレット』とブラック=マジックは相性がいい。
当てる光の種類で色が変わる、というアレキサンドライトの特性を生かすため、
その美術館では薄暗くした展示室のショーケースの中、
一定間隔で
警護のために増員された警察官に変装した君は、予告時間に合わせて
全館を停電させると、
アミュレットを照らしていた照明の、その焦点をずらし、
そして、「宝を盗んだ」というメッセージをケースに貼り付けたんだ。
照らされる場所がちょっとズレただけ。
人間の目というのはたったそれだけで、『消えた』と認識してしまう。
そこにいた警備の者たちが、停電の復旧と共に、最初に観たものは、
明るく照らし出されたショーケースの中の何もない床。
そして、次に目に入るのが、「お宝を盗んだ」というメッセージ。というわけだ。
流石の怪盗であっても、停電している十秒足らずの時間で、
あれだけ
それは誰でも分かることだ。
けれど、怪盗・ラブラ・ルバートは狙った獲物を決して
その怪盗が
ならば、その
そこに居た者たちは、全員がそう思った。
そんな時に、君はいかにもどこかに居そうな警察官の声で言う。
「向こうに逃げたぞ!」
ってね。それで、そこに居た全員は君の術中にはまって部屋から出る。そして、いないはずの怪盗の影を追うというわけだ。
あとは手薄になったショーケースからゆっくり、目的の秘宝を盗み出せばいい。
ゆっくり、とは言ったが、君には1分もあれば十分だったようだけどね。
あとは、周囲を捜索する警察官に交じって逃走する。
それで、君の今回の仕事は
……驚いているね。
私は君の手口を何度も見て、そして参考になるかもしれないと、
とある奇術師に弟子入りしたんだ。
おかげで、たいていのマジックショーは面白くなくなってしまったけれどね。
でも、こうして君をつかまえることができた。
……。そうだよ。
君は今回必ずブラック=マジックを使う。
私はそれを確信して、初めから何があっても動じないつもりで、
展示室の
そして、
『グレゴリオス・ジュエル・アミュレット』を手にして、一瞬気が緩んだ君を、
背後から襲った。
流石の怪盗も、死角からのスタンガンには対応ができなかったようだね。
気を失った君の身体は驚くほどに
そして、君は、敗北した。
……。ん? ああ、この場所か。
ここはね、私の秘密基地……みたいなものなんだ。
君が完璧な警察官に変装してくれていて助かったよ。
おかげで、『体調不良で倒れた警察官を現場から退避させる』
という形で、堂々と、
君をここまで連れてくることができた。
……。
ああ、そうだね。
私がやっていることは、
でも仕方がないよ。
だって……どうしても、君を捕まえたかったからね。
逮捕……という意味じゃないよ。
君の身体も、心も、全てを奪いつくして、
自分のものにしたい。
そういう、……意味合いだよ。
君のことは、一目見たときから心を奪われたよ。
無様にも慌てふためく私たち警察を
それはまるで、
私は警察だ。君のことは捕まえなければいけない。
そして、法の
だけど、君が予告を出して、
そして、美術館で君に会うたびに、
私は君に
君を追いかけていると、必ず警護する対象の大秘宝と対面する。
けれど、そのどれも、私の心には響かなかった。
だって、私は、この世のどんな芸術品よりも美しい、
君という存在を知ってしまったんだから。
君を、自分のものにしたい。
君の全てを、奪いたい。
君の──、
屋根の上を軽々と跳ね回る、
猫科の肉食獣めいた柔軟な筋肉をもった脚を、
私のものにしたい。
君の──、
いかなる錠前をも
私のものにしたい。
君の──、
月光に照らされて怪しく輝く美しい瞳を、
私のものにしたい。
私は、どうしようもなく君に
他の誰にも渡さない。
……渡したくない。
だから私は、死角からのスタンガンなんていう、
反則を使った。
そうしてでも、君を奪いたかった。
私以外の、他の誰にも君を
君という
私の部屋の
そういう点では、私たちは同類、だね。
……。
そうだよ。
君には……、≪怪盗・ラブラ・ルバート≫には今日で引退してもらう。
君は海外でも活躍していて、インターポールに国際手配もされているからね。
万一逮捕されてしまえば、海外に引き渡されて、
おぞましい刑罰を受けるかもしれないだろう。
そんなことは──耐え切れない。
だから、一生ここで暮らすんだよ。
…………。
ああ、もちろん。
君が
どんな
物理的に逃げ出さないようにするなんてことは、事実上不可能だ。
その時は出入り口を
いっそ君の手足でももぎ取ってしまうしかない。
……そう怯えないで。
私は、君の今の姿が至高の
そんなひどいことはしないよ。
だから、君にはこれを使おうと思う。
何かわかるかい?
これは
……。
……ああ、確かに科学的じゃない。
でも、それは今更じゃないかい。
私は君が獲物にした美術品の中に、ファンタジーとしか思えないような
アーティファクトも含まれていたってことを知っているよ。
なんたって、ずっと君を追いかけてきたんだからね。
これもそういった、君を追う中で手に入れた
ファンタジーに片足を踏み入れた
これは筋肉に注射をする
『目の前の人と一つにならなければ死ぬのではないか』
という強烈な
その強迫観念の効果は短く、せいぜい2、3日だそうだが、その短い間に
肉体と魂を完全に溺れさせてしまうのだそうだ。
そうなったが最後、というと聞こえは悪いけれど、
そうなるともはや、その人と
そんな風に、持っている常識が書き換わってしまうのだそうだ。
今からこれを打つよ。
ふふ、抵抗はしないほうがいい。
刺している途中に針がズレたらとっても痛いよ。
そう
ああ、そんな表情も素敵だ。
その瞳、……やはり、どんな宝石より美しい。
……。
(うろたえて)
いや待て。何かがおかしい……。なんだ……?
なんで私を睨んでいる。……いや、そうじゃない。
君には、目隠しをしていたはずだ。
どうして目隠しを外しているんだ?
……いや、一体いつから、目隠しを外していた!
どうやって外した!!
なんでそんな不敵な表情でわらっているんだ!
な、嘘だろ!! あの拘束をどうやって──
まて、なんでっ!!!
ヴァアッ!!!
(間)
はあ……はあ……、
……。
にげ……られた。
あの……、状況……から……?
スタンガン……。
私は、スタンガンで、
気絶させられた……のか?
はっ、……予告……状……?
…………。
「『グレゴリオス・ジュエル・アミュレット』と、あなたの心、確かにいただきました。
あなたの師匠より」
……あなたの……し、しょう?
まさか……。
いや……、そうか『フェイスレス・クイーン』。
何者にもなれる完璧な変装能力。
あの奇術師の
私は、初めから……君の
はは、はははははは!!
さながら私は、
はは……は……。
畜生!!!
≪怪盗・ラブラ・ルバート≫! 次こそは絶対に!!!
クレジット
ライター情報
剣城・アイスドーラ・凍子です。
駆け出しの台本師
Twitter:@Ice_dola
いろんな設定のシチュエーションを書いていきます。
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