風邪をひいて寝込んでしまったら、
ヤンデレっぽい雰囲気の彼氏が来てくれた。

《SE：ピンポーン》

《SE：ガチャ》

　なんだ、ただの風邪ですか。

『死にそうだ』みたいなLINEきたんで、期待して来たんですけどね。

《SE：ガサガサ》

　あ、これ、買ってきたんですけど、いります？

　残りは冷蔵庫いれとくんで。

　あとで料金は頂きます。

　別にあとで良いです。

　あなたには、借りがあった方が何かと便利なんで。

《SE：バタン》

　薬、飲みました？

　ダメですよ。粉だろうとなんだろうと、我慢して飲んで下さい。

　飲まないなら、無理矢理、飲ませますよ？

《SE：コポ……》

　はい、うまく、飲めましたね。

　じゃあ、寝てください。

　え？　いいですけど、僕なんかが隣にいて、眠れるんですか？

　僕としては、むしろ危機を感じて欲しいんですがね。

　まぁ、辛い時に一人が不安なのは分かります。

　なんです？　その手。

　握って欲しいんですか？

　じゃあそう言って下さい。

……熱いですね。

　熱、上がったんじゃないですか？

　ちょっとおでこ出して下さい。

　こっち向いて下さい、おでこ当たらないじゃないですか。

《SE：コン》

　やっぱり熱いですね。

　眠らなきゃ下がりませんよ。

　え？　寝てもいなくなったりしませんよ。

　だから、安心してください。

　良いですよ、側にいますから……
　ゆっくり、寝て下さい。

　ゆっくり……。


《SE：モゾ……》

　あ、起きました？

　顔色は、良いですね。

　おでこ出して下さい。

《SE：コン》

　まぁ、熱は下がってますね。

　何か飲みます？

　あぁ、薬も飲んで下さい。

　ダメですよ。完全に治るまで飲まないと意味がありません。

《SE：コポ…》

　飲みましたね。

　え？　別に前と同じ薬でしょ。

　あなたの味覚まで知りませんよ。

　すっかり元気になりましたね。

　良かったです。

　先に死んじゃったらどうしようかと思ってたんです。



《SE：バタン》

　あ、薬、効いてきました？

　えぇ、そうです。
　僕がすり替えました。

　僕の手作りはいかがですか？

　別に、それじゃ、死にませんよ。

　だって、自分で殺せなきゃ、意味無いじゃないですか。

　あなたの最後を頂くのは僕です。
　困るんですよね、風邪なんかで死なれたら。

　本当、元気になって良かった。

　あぁ、体が動かなくなってきたでしょう？

　あなたは、また眠ります。

　そして起きた時には……



　肌が綺麗になってます。



　あ、髪もつやつやになります。



　なんです？その顔。

　あなた気にしてたから、わざわざ高いサプリをブレンドしたんです。

　僕は別に今のままでも、綺麗だと思いますけど。

《SE：ガサゴソ》

　ちょっと！
　抱きつくの、やめてください。

　だから寝てくださいって！
　あなたは、そうやってちょっと良くなると、すぐ調子にのる。

　もっと眠くなる風邪薬混ぜるんでした。

　は？

　入ってませんよ。

　ドキドキする成分も、好きになる成分も混ぜてません。

　勝手な事、言わないでください。
　あなたの思い込みです！

　やめてください。
　今、キスしたら、風邪がうつる！

　だから、そんな成分は
　混ぜてなーー

《SE：お好きな音を》

　あぁ、もう……
　これでうつったら、
　あなたのせいですから。

　責任とって看病してくださいね。

　死んだら、どうするんです。

　ほんっとに、もう……

　あなたの最後を頂くのは僕ですが、

　僕の最後をみるのも、
　あなたですからね。


　（了）

・台本（ゆるボイ！）
ヤンデレ彼氏に看病されて自作の薬を飲まされる。
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
哀井田圭一