街を歩いていると見知らぬ女性に声をかけられた。
いわれるがままお願いに従うとなんとサンタのアルバイトに巻き込まれてしまって…！？

くそっ。しつこいな！
あ！そこのお前！
少しだけ、私に話を合わせてくれないか？
黒スーツを着た男たちが来たら、「あっちに走っていった」と言ってくれ。
それまで、私はここに隠れているから。
質問はあと！…奴らが来た。よろしく頼むよ！
…ふぅ、行ったか。ありがとう。助かったよ。
まさかこんなところに人がいるなんてね。運が良かった。
…お前のお陰で何とかなりそうだ。ただ、一つ問題があってね…。
すまない！お前を巻き込んでしまった！
申し訳ないが、これから私と一緒に行動してもらう。
残念ながらお前に拒否権はない。
私…？まあ、本当は機密事項だが、巻き込んでしまった以上は話す必要があるな。
私について来てくれ。

// 歩きながら（足音SE）

ん？さっきの男たちのことか？
あいつらは…そうだな。
さしずめ…未だに夢から目を覚まさない大きな子供たち、と言ったところだ。
全然わからない…か。
具体的にはだな…
未だにクリスマスプレゼントはサンタさんがくれるものだと信じてやまない奴らだ。
プレゼントとしてサンタが欲しいと言って、こうして追いかけられてたって訳だ。
サンタには見えない、か…そうだろうな。
さ、着いたぞ。説明はこの中でする。入ってくれ。
…驚いたか？山のように積み上げた段ボール箱。
中にはゲームやスポーツ用品、その他様々な子供向けの荷物が詰まっている。
…お前にはこれから私と共にこの段ボールを全部配送してもらう。
だがその前に…この仕事は制服着用が義務なんだ。
お前の分も渡すから着てくれ。
これか？見れば分かると思うが…サンタの衣装だ。
…ようやく合点がいったって顔してるな。
そう、こんな日に一人で外を歩いてたお前にとってはあんまり興味が無いかもしれないが…
今日はクリスマスイブ。
1年間良い子にしていた子供たちがサンタからプレゼントをもらえる日だ。
だから私たちがサンタ代行としてプレゼントを届けにいく、これはそういうバイトだ。
割り当てられた区画にいる子供全員に届けにいくのが今回のノルマになっている。
説明は以上だ。分かったら制服に着替えてくれ。

…着替えたな。割と似合ってるじゃないか。
それなりに格好いいぞ。
コホン、今のは忘れてくれ、私らしくもない。
さ、いくぞ。助手席に乗り込んでくれ。
何これって…普通の軽トラだが？
あ？ソリ？お前さ…夢見すぎ。
そんなもの使うわけ無いだろ。
ソリは道路交通法上では軽車両扱いだ。
一晩のうちに全箇所回ろうとスピード出したら警察に赤切符切られるだろ？
それに目立ちすぎるとプレゼントを狙った強盗に遭うかもしれないからな。
夢を壊すようで悪いが、現代のサンタなんてこんなもんだ。
ようは子供たちに夢を見せればいいからな。
見えない部分はこうして割と現実的な内容にもなるさ。
さてと、最初の届け先は…ここか。
それで？ここの家の子供がお願いしたものは…お、あった。
プレステ5か…なかなか豪勢なものお願いするもんだな。
それじゃあ、今からプレゼントを渡す手本を見せてやるから、そこで見てろ。

// ここから営業口調で
// チャイム、ドア開閉音

ホーホーホー。
サ〇〇急便からサンタさんがプレゼントをお持ちしました！
あ、君だね？1年間いい子にしていた子は。
お父さんお母さんのいうことをしっかり聞けて偉いぞー。
そんな君に、サンタさんからプレゼントを準備したよ。
はい、これ。大事に使うんだよ？
来年も1年いい子にしていたら、また持って来てあげるからね。
それじゃあ、バイバイ！

// 演技やめ

…と、こんな感じだ。
次に回るところからはお前にも一緒にプレゼントを届けてもらうから、よく覚えておけよ。
…ん？子供たちに直接あっていいのか…って？
大丈夫大丈夫。
そもそもサンタが夜中に忍び込んでプレゼントを渡してる理由は…その…サンタの正体が…ごにょごにょ…だからだろ？
だから、サンタの格好をしてプレゼントを届けている以上は子供たちの夢を壊すことにはならない、ってことだ。
まぁ、気さくに話しかけているって点では恥ずかしがり屋なサンタのイメージとは違うかもしれないが。
愛想の悪いサンタのイメージを植え付けるのはよくないからな。
さ、あんまり長話してる暇はないぞ。
あんまり夜遅くなると子供はもちろん受け取り手の親まで寝てしまうからな。
そうなると不法侵入せずにプレゼントを渡すためには置き配しか出来なくなる。
それは子供にとっては起きた時にプレゼントが手元になくて不安だし、
親にとってもプレゼントが盗まれる心配があるだろう？
だから早めに回っておくことが大事だって訳だ。
それに…折角のイブの夜なんだ。
一晩中バイト漬けなんてむなしいだろ？

// あなたに彼氏っているんですか？と聞いてしまう。

あ…？
今なんか言ったか？
もし一緒に過ごす彼氏はいないのか…みたいなこと聞いてたとしたら…
元から赤い制服をもっと赤黒く染めるぞ？
なんて、流石に冗談だ。
おしゃべりはこれくらいにして、さっさと他の家も回るぞ。
クリスマスイブの夜は思ったより短いんだ。
幸せいっぱいな人々にとっても、私たちみたいなアルバイターにとっても、な。

// 配達終わり

ふぅ…これで、全部の家を回り終えたな。
お疲れさん。なかなか手際もサービスも良かったじゃないか。
少し感心したぞ。
そして…ほら、受け取れ。今日の分の給与だ。
20000は入ってるはずだ。確認してみてくれ。
高いって？そうだろうな。
もとよりクリスマスイブという働き手が少ない環境での深夜を含む日雇いバイト。
それも本来は非公開での求人だ。
これくらい貰って当然だろ。
ん？このメモ用紙か？
ああ、それはバイト仲間である私からの餞別だ。
書かれてる数字の並びはなんだ…って、言わせるなよ。恥ずかしい。
それじゃ、私はもう帰って寝るから。じゃあな。

…来年のクリスマスはこんなバイトに明け暮れずに済むといいな、お互い。

・台本（ゆるボイ！）
人助けをしたら一晩サンタアルバイトをする事になった
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
えとのわーる(Stella)