彼氏は、自分に厳しすぎる彼女が、最近 徐々に自分を傷つけ始めているように見えて不安になります。彼女が 自傷行為等に安らぎを求める前に…普段俺様気質な彼が、不器用な言葉ながらも 彼女を大切に思う自分の気持ちを話します

―――歩く足音―――

あー、今日も寒いなぁ。早くあったかい部屋に入りた…
あれ？あそこにいるのって…あいつ…だよな。
おーい！
あれ？気づかない…てか、様子変だな…。

―――走る足音―――

おい、なにやってんだ？
この寒いのにそんな薄着で！身体冷えちゃってんじゃん！
《自分のコートをぬぐ》
とりあえず これ着て！

オレは大丈夫！
ほら、帰ろ。

このベンチがお気に入りなのは知ってるけど！今日は寒すぎるから、ね？
よし。

―――間―――
―――マグカップを置く音―――

はい、ココア。

コーヒーが良かった？
何言ってんだ。飲めないじゃん コーヒー。

甘さより苦さが必要な時もある？
まーた、訳わかんないこと言って。
《しょうがないなぁという感じのため息》
最近、どうした？
この雨は 土砂降りの中あのベンチに座ってた。
今日は あんなに冷たい風が吹いてる中にいたし、甘いものより苦いもの？
俺の彼女はどうして そんなに虐められてるのかな？

―――彼女 無言―――

《小さく笑う》
ま、ちょっと甘いもの飲んでホッとしよ？
落ち着いたら ゆっくりでいいから 話、聞かせてくれる？

『私は甘えているから』？
どういうこと？

なんか無気力だし、訳もなくイライラするし、落ち込むし…とにかく息苦しい…か…。
それはさ、心も身体も休憩したいと思ってるって事じゃないか？別に甘えてはいないだろ。

いや だから、なんで そうなる？
疲れたなんて言っちゃいけない、なんてことある訳ないって。

だって？

うん…うん…

え？別に生理とかPMSじゃなくても甘えたらいいじゃん。

それに？

あー、そういうことか。
そりゃ、さ、生まれ持った体質で生きづらい思いをしてる人や、精神的な病気で苦しんでる人は日々大変だと思うよ。でも、だからってお前が『自分は 何でもないんだから クヨクヨしちゃいけない、弱い自分に腹が立つ！』なんて思わなくてもいいと思うよ。

うーん…どんな事も跳ねのけて生きていける人も中にはいるかもいれないけど、案外そう見えてるだけかもしれないし、ほとんどの人が 疲れたり無気力になる事、よくあるんじゃないかな。
すごく敏感に物事や人の言葉や気持ちに反応してしまう人たちは、日常に大変なことがたくさんあるんだと思う。お前は、友だちのそういう姿をずっと側で見てきたから余計に 思うところがあったのかもな。
でも、理由がなきゃ疲れちゃいけないわけじゃない。普段 心が元気でも、落ちこんだり息苦しさを感じることは 誰にだってあるし、あって当たり前だと思う。

―――彼女、納得できない様子―――

だからー、弱音を吐いちゃいけない人間なんていないんだって。休む理由なんて『疲れた』だけで十分。
ダメだーって 諦めることで心を守れることだってある。
今必要なのは ちょっと休むための努力じゃないかな？

まだ不満？(笑)

しょうがないなぁ。
あのさ、自分に厳しいのは 悪いことじゃない。でも、理想の自分じゃないからって、あんまり虐めないで欲しいんだ。
あ、ほら、お前のこと 虐めていいのは俺だけなんだし(笑)

いや、ふざけてない。けっこう真面目に話してる。
お前、他人に優しい分、自分には容赦ないから エスカレートしそうで 正直 怖いんだよ…。

《少し慌てて》
あぁ、悪い。責めてるつもりじゃないよ。
ただ、だいじなんだ、お前のこと…。

謝らなくていい。何も悪くないから。
でも俺の気持ち、わかって欲しい。

さ、今日は、もう寝ようか。
睡眠には、嫌な今日を終わりにして、新しい明日を始める力があるんだって。
一旦、リセットしよう。

大丈夫、眠れるよ。
だって、今から、俺の大切な彼女を虐めたお仕置するんだから(笑)

んー？それはー・・・『湯たんぽの刑』!!
《ギュッと抱きしめる》
今夜は、寒がりな俺の為に こうやって俺にハグされたまま眠るの！一緒にぐっすり 眠ってもらうからな(笑)

―――少しの間―――

ねぇ、自分のこと傷つけるより、こうやって俺の温もりで、存在価値を感じて欲しい。お前がお前のままここにいることの大切さに気づいて欲しい。…俺、そんなに大きい人間じゃないけど、一緒に悩んだり 考えたりすることはできる。
だから、苦しくなったらここに来い。
な？
みんな、誰かの大切な人。
お前は俺の大切な人。
それだけは、絶対忘れるな。


――END――

・台本（ゆるボイ！）
みんな誰かの大切な人
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
美俐