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公開日2022年06月07日 21:37
更新日2022年06月07日 21:40
文字数
2469文字(約 8分14秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
指定なし
演者人数
1 人
演者役柄
指定なし
視聴者役柄
指定なし
場所
指定なし
あらすじ
■アンティークショップ「風の丘」での一夜の物語。日常と非日常が混ざった、ファンタジーのお話です。
■主人のコガネは、“なんでも願い事を叶えてくれる“といわれているが、本当は本当は手品を使って緊張をやわらげ、悩み事を解決しているだけ。
今夜のお客様は、一人の少女のようで……?
■登場人物
・コガネ 店の主人、お兄さん。客から魔法使いと呼ばれることも。
・早良 未奈子(さわら みなこ) 店に来た少女。花、特にヒマワリが好き。
■その他
相変わらず前後に導入・終わりの台詞らしきものを書いていますが(口調とかは変えてください)、朗読本文だけでも、一部だけ読んでも大丈夫です。ご自由にどうぞ。
配信や動画投稿にいかがでしょうか。
■主人のコガネは、“なんでも願い事を叶えてくれる“といわれているが、本当は本当は手品を使って緊張をやわらげ、悩み事を解決しているだけ。
今夜のお客様は、一人の少女のようで……?
■登場人物
・コガネ 店の主人、お兄さん。客から魔法使いと呼ばれることも。
・早良 未奈子(さわら みなこ) 店に来た少女。花、特にヒマワリが好き。
■その他
相変わらず前後に導入・終わりの台詞らしきものを書いていますが(口調とかは変えてください)、朗読本文だけでも、一部だけ読んでも大丈夫です。ご自由にどうぞ。
配信や動画投稿にいかがでしょうか。
本編
〈キャラがある方はそれで〉
こんばんは、今夜も私の朗読を聞きに来てくれたんですね。
あまりお待たせするのも悪いですし、早速読むとしましょうか。
お布団にはいって、ゆっくりしながら聞いてくださいね。
ーーー朗読本文ーーー
「魔法使いの店」須藤水波(すどうみずは)・作
もしも、なんでも願い事を叶えてくれるお店があるとしたら、行ってみたいと思いませんか?
夜だけ開店する、アンティークショップ“風の丘(おか)”が、まさにそうです。
店の主人であるコガネは、お客さんたちから“魔法使い”と呼ばれています。
このお店には、色んな人が来ます。そして、今夜も。
カランカラン。ドアが開(ひら)いた合図に、ベルの音がします。続いて、かわいらしい声がしました。
「こんばんは」
「いらっしゃいませ。おや……」
出迎えようとしたコガネは、視線を下げました。お客さんは、大人ではなく、子どもでした。女の子のようです。
今は夜の十時(じゅうじ)。子どもが一人で出歩くには、危ない時間帯です。
「お母さんかお父さんは?」
「お家にいる」
「そうか」
コガネは、カウンターから出ると、手招きしました。
「おいで、ここに座って話そう」
「うん」
女の子は、コガネに手伝ってもらって、少し背が高い椅子に座りました。
「私はコガネという。君の名前を聞いてもいいかな?」
「わたしは、早良 未奈子(さわら みなこ)」
「未奈子ちゃんか。このお店に来るのは、初めてだね」
「うん。お願いを、なんでも叶えてくれるって、きいたから」
「誰から聞いたの?」
「お母さん。魔法使いだって言ってた」
「それは嬉しいな。でも、魔法使いではないよ。手品で喜ばせただけなんだ」
「ヒマワリを出してくれたんでしょ?」
「そうだよ」
「わたしも見たい」
コガネは、この時に気が付きました。
サワラという名字は、先日、お店に来た三人家族と同じなのです。
季節外れのヒマワリを見たい、そう言われて手品で出したところ、泣き出してしまった母親のことを、コガネは覚えていました。
ですから、未奈子という少女について、ある推測をしました。
それを確かめるために、尋ねます。
「いいよ。花は好きかな?」
「うん」
彼女がうなずいたのを見たコガネがパチン、と指を鳴らすと、赤いバラが一輪、出てきました。
それを見た未奈子の瞳が、キラキラと輝き始めます。
コガネは、もう一度、パチンと指を鳴らしました。
今度は、バラよりも大きな、黄色い花びらが優しく輝く、ヒマワリが出てきます。
「すごい!」
未奈子の声音が、明るくなりました。
「まだあるよ」
コガネは、未奈子にバラとヒマワリを渡すと、パチンと指を鳴らします。次に出てきたのは、白いユリでした。
「わぁ、きれい!」
「次は、何色の花を見たい?」
「青がいい!」
「じゃあこれはどうかな」
パチン。
指を鳴らすと、ブルースターの花束が出てきました。
さっきまで一輪の花だったのが、いきなり花束になったので、未奈子はとても驚き、そして、顔をほころばせました。
「とってもきれい! なんていう、お花なの?」
「ブルースターだよ。この花が意味するものは、幸せな愛。君は、とても愛されているみたいだからね」
「なんでわかるの?」
「お母さんから聞いたんだ。名前を聞いてわかったよ」
ヒマワリのこと。
大切にされて、病気で亡くなった未奈子のこと。
すべてを、コガネは察していました。
「このお店には、君みたいな子どもが一人で来ることは稀(まれ)だから。しかも、死んでしまった人なんて」
それを聞いた未奈子の顔が、かたまりました。
そして、うつむきながらも、泣くのをこらえるように、一生懸命作り笑いをしています。
「……それも、お母さんから聞いたの?」
「そうだよ。病気で苦しんで、辛かったろう」
「いいの。お父さんも、お母さんも、そばにいてくれた。弟の奏汰(かなた)も……」
「ブルースターは、男の子の誕生日にあげる花でもあるんだ。君の双子の弟に、ぴったりじゃないかい?」
「……うん。とてもいい」
ようやく、未奈子に本当の笑顔が戻りました。
口を開けて、にっこり笑います。
「ねえ、お兄さんから、奏汰に渡してあげてくれない?」
「……それが、君のお願いってことかな?」
「そう。本当は、誰にも姿を見せちゃだめなんだって。でも、家族に、ありがとうって言いたくって」
「私に君が見えているのは、不思議な力のおかげってことか」
「うん。今日だけ、今だけだよ」
「わかった。ちゃんと、君のお家に届けよう」
「わたしが来たってことは言わないでね」
「約束する」
コガネが真剣なまなざしで、未奈子の瞳を見つめます。
彼女は、うん、と嬉しそうにうなずきました。
「みんなに、ヒマワリを見せてくれてありがとう」
「どういたしまして」
「そろそろ、行かないといけないみたい」
「そうか。じゃあ、これを持っていったらどう?」
そういって、コガネは、パチンと指を鳴らします。
一輪のブルースターが出てきました。
未奈子に差し出すと、彼女は、小さな手でそれを受け取りました。
少しだけふれた指先は、まるで氷のように冷たいものでした。それが、生きてはいないことを示しているようで。
コガネは、少しだけ、困ったように眉尻を下げました。
それは、悲しみと、さみしさと、慈しみ。
「かわいくて、きれいなお花。……ありがとう」
「こちらこそ。お願いはちゃんと叶えるよ」
「うん!」
未奈子は、ブルースターとヒマワリ、それからバラにユリを抱えて、ドアから出ていきました。
カランカラン、ドアが動く度に音がします。
ユリの匂いが、鼻の奥をくすぐります。
コガネは、深呼吸をするように、目をゆっくり閉じて、開きました。
もう、ドアベルの音はしません。
カウンターのテーブルの上には、コガネが手品で出した、ブルースターの花束が残っていました。
ーーーここまでーーー
〈キャラがある方はそれで〉
お話はここでおしまいです。
訪問客の女の子は、幽霊だったようですね。
いえ、そんな表現はふさわしくないかもしれませんが。
ブルースターの花束が、家族に無事に届けられますように。
それでは、聞いてくださりありがとうございました。
ゆっくり、おやすみください。
こんばんは、今夜も私の朗読を聞きに来てくれたんですね。
あまりお待たせするのも悪いですし、早速読むとしましょうか。
お布団にはいって、ゆっくりしながら聞いてくださいね。
ーーー朗読本文ーーー
「魔法使いの店」須藤水波(すどうみずは)・作
もしも、なんでも願い事を叶えてくれるお店があるとしたら、行ってみたいと思いませんか?
夜だけ開店する、アンティークショップ“風の丘(おか)”が、まさにそうです。
店の主人であるコガネは、お客さんたちから“魔法使い”と呼ばれています。
このお店には、色んな人が来ます。そして、今夜も。
カランカラン。ドアが開(ひら)いた合図に、ベルの音がします。続いて、かわいらしい声がしました。
「こんばんは」
「いらっしゃいませ。おや……」
出迎えようとしたコガネは、視線を下げました。お客さんは、大人ではなく、子どもでした。女の子のようです。
今は夜の十時(じゅうじ)。子どもが一人で出歩くには、危ない時間帯です。
「お母さんかお父さんは?」
「お家にいる」
「そうか」
コガネは、カウンターから出ると、手招きしました。
「おいで、ここに座って話そう」
「うん」
女の子は、コガネに手伝ってもらって、少し背が高い椅子に座りました。
「私はコガネという。君の名前を聞いてもいいかな?」
「わたしは、早良 未奈子(さわら みなこ)」
「未奈子ちゃんか。このお店に来るのは、初めてだね」
「うん。お願いを、なんでも叶えてくれるって、きいたから」
「誰から聞いたの?」
「お母さん。魔法使いだって言ってた」
「それは嬉しいな。でも、魔法使いではないよ。手品で喜ばせただけなんだ」
「ヒマワリを出してくれたんでしょ?」
「そうだよ」
「わたしも見たい」
コガネは、この時に気が付きました。
サワラという名字は、先日、お店に来た三人家族と同じなのです。
季節外れのヒマワリを見たい、そう言われて手品で出したところ、泣き出してしまった母親のことを、コガネは覚えていました。
ですから、未奈子という少女について、ある推測をしました。
それを確かめるために、尋ねます。
「いいよ。花は好きかな?」
「うん」
彼女がうなずいたのを見たコガネがパチン、と指を鳴らすと、赤いバラが一輪、出てきました。
それを見た未奈子の瞳が、キラキラと輝き始めます。
コガネは、もう一度、パチンと指を鳴らしました。
今度は、バラよりも大きな、黄色い花びらが優しく輝く、ヒマワリが出てきます。
「すごい!」
未奈子の声音が、明るくなりました。
「まだあるよ」
コガネは、未奈子にバラとヒマワリを渡すと、パチンと指を鳴らします。次に出てきたのは、白いユリでした。
「わぁ、きれい!」
「次は、何色の花を見たい?」
「青がいい!」
「じゃあこれはどうかな」
パチン。
指を鳴らすと、ブルースターの花束が出てきました。
さっきまで一輪の花だったのが、いきなり花束になったので、未奈子はとても驚き、そして、顔をほころばせました。
「とってもきれい! なんていう、お花なの?」
「ブルースターだよ。この花が意味するものは、幸せな愛。君は、とても愛されているみたいだからね」
「なんでわかるの?」
「お母さんから聞いたんだ。名前を聞いてわかったよ」
ヒマワリのこと。
大切にされて、病気で亡くなった未奈子のこと。
すべてを、コガネは察していました。
「このお店には、君みたいな子どもが一人で来ることは稀(まれ)だから。しかも、死んでしまった人なんて」
それを聞いた未奈子の顔が、かたまりました。
そして、うつむきながらも、泣くのをこらえるように、一生懸命作り笑いをしています。
「……それも、お母さんから聞いたの?」
「そうだよ。病気で苦しんで、辛かったろう」
「いいの。お父さんも、お母さんも、そばにいてくれた。弟の奏汰(かなた)も……」
「ブルースターは、男の子の誕生日にあげる花でもあるんだ。君の双子の弟に、ぴったりじゃないかい?」
「……うん。とてもいい」
ようやく、未奈子に本当の笑顔が戻りました。
口を開けて、にっこり笑います。
「ねえ、お兄さんから、奏汰に渡してあげてくれない?」
「……それが、君のお願いってことかな?」
「そう。本当は、誰にも姿を見せちゃだめなんだって。でも、家族に、ありがとうって言いたくって」
「私に君が見えているのは、不思議な力のおかげってことか」
「うん。今日だけ、今だけだよ」
「わかった。ちゃんと、君のお家に届けよう」
「わたしが来たってことは言わないでね」
「約束する」
コガネが真剣なまなざしで、未奈子の瞳を見つめます。
彼女は、うん、と嬉しそうにうなずきました。
「みんなに、ヒマワリを見せてくれてありがとう」
「どういたしまして」
「そろそろ、行かないといけないみたい」
「そうか。じゃあ、これを持っていったらどう?」
そういって、コガネは、パチンと指を鳴らします。
一輪のブルースターが出てきました。
未奈子に差し出すと、彼女は、小さな手でそれを受け取りました。
少しだけふれた指先は、まるで氷のように冷たいものでした。それが、生きてはいないことを示しているようで。
コガネは、少しだけ、困ったように眉尻を下げました。
それは、悲しみと、さみしさと、慈しみ。
「かわいくて、きれいなお花。……ありがとう」
「こちらこそ。お願いはちゃんと叶えるよ」
「うん!」
未奈子は、ブルースターとヒマワリ、それからバラにユリを抱えて、ドアから出ていきました。
カランカラン、ドアが動く度に音がします。
ユリの匂いが、鼻の奥をくすぐります。
コガネは、深呼吸をするように、目をゆっくり閉じて、開きました。
もう、ドアベルの音はしません。
カウンターのテーブルの上には、コガネが手品で出した、ブルースターの花束が残っていました。
ーーーここまでーーー
〈キャラがある方はそれで〉
お話はここでおしまいです。
訪問客の女の子は、幽霊だったようですね。
いえ、そんな表現はふさわしくないかもしれませんが。
ブルースターの花束が、家族に無事に届けられますように。
それでは、聞いてくださりありがとうございました。
ゆっくり、おやすみください。
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