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冥府の死神耳かき
written by くるっくー
  • ファンタジー
  • 耳かき
公開日2022年06月23日 23:32 更新日2022年06月23日 23:32
文字数
1752文字(約 5分51秒)
推奨音声形式
バイノーラル
推奨演者性別
指定なし
演者人数
1 人
演者役柄
死神
視聴者役柄
訳もわからず冥府に迷い込んだ、生きた人間
場所
冥府
あらすじ
貴方は気が付くと、全く見たこともない場所にいた。
そこへ現れたのは、鎌を携えた死神。彼(彼女)が言うには、ここは冥府で、貴方は偶然生きたまま飛ばされてしまったらしい。
現世に帰るには、耳かきで魂を取り出す必要があるとのことだが、
貴方は耳かきをされていくうち、どんどん癒されていってしまう。
本編
……む?
おい、そこにいるのは、人間か?

……そんなに怯える必要はない。
どうやら、今の状況が理解できていないようだな。

簡単に説明してやる。
ここは死後の魂が行き着く場――冥府だ。
そして、私はこの冥府の管理者である。死神、といえばわかるだろう。

……いや、お前は間違いなく、生きた人間だ。
今のお前には身体がついているが、本来ここに集うのは、肉体から離れた霊魂だからな。
何らかの要因で、お前のいたところがここに繋がってしまったんだろう。

安心しろ。こういった場合は元の世界に送り返すことになっている。
だが、そのためには、一度お前の魂を入れ物から取り出す必要がある。
二つ、方法がある。好きなほうを選ぶといい。

一つは、この鎌を使い、一気に刈り取るか。
もう一つは、この耳かきで、少しずつ掻き出していくかだ。
……まあ、そちらを選ぶだろうな。では……こちらへ来い。

(耳かき開始)

この耳かきは、お前たちが普段使うようなものとは違う。
耳元に魂を引き寄せて、これで掻き出すことで「かけら」として取り出していく。そうして集めたかけらを再び構築し直すことで、身体と魂の分離が完了するんだ。
とはいえ、感覚としてはお前たちが普段するものとさほど変わらないだろう。お前は何も考えず、じっとしていればいい。

……何か言いたいことがあるのか?

……緊張? ああ、魂を刈り取られることに怯えているのか。無理はない。
だが、先ほども言ったように、お前はただじっとしていれば……

何? 私の容姿のせいで緊張していると言いたいのか?
お前は、この行為にどういう意味を見出そうとしている?

……先ほどから、わけのわからないことを言っているが……。
これはお前の身体から魂を取り出すだけの作業だ。
お前たちのする耳かきも、対象が耳垢という違いはあれど、同じような認識のはずだ。違うか?

……わかった。ひとまずこの話はよそう。
とりあえず、取り残しのないように、次は梵天を入れていくぞ。

(梵天開始)

……おい、正気か? こんなところで居心地の良さなどというものを覚えるんじゃない。
ここは次の転生を控えた者が一時的に滞在する場所であり、お前は本来、いてはいけない者だというのに……。

確かに、苦しみの少ない手段としてこの耳かきを行っているが……。
かといって、お前を心地よくさせてやっているつもりもない。

……私が思うに、お前のいう「心地よい」というのは、恐らく錯覚だ。
今、魂の一部が分離したお前の精神は、曖昧な状態になっている。その未知の感覚を、都合よく解釈しているのだろうよ。

こんなところか。
悪いが、反対側からも同様に耳かきをさせてもらうぞ。完全な形で魂を抽出するには、双方の耳から行うのが効率的なんだ。

(身体を反転させ、反対側の耳かき開始)

……お前が耳かきが好きだというのは十二分に伝わっているから、わざわざ口に出す必要はない。
というか、まだ言葉を発することができるのか……。耳から伝わる感触も、段々と感じづらくなってきているはずだが……。
大体、耳かきなど現世でいくらでもできるだろうに。

……相手がいない?
……知らん。死神に聞くな。現世で努力しろ。

お前がいずれ再びここにやって来るときには、霊魂と化しているから耳かきはできない。加えて、お前が来世も人間である保証もない。
お前に行動ができるのは、生きている今の間だけだ。……こんなことを死神に言わせるな、馬鹿者。

……まあ、いい。何にせよ、私には今回きりの耳かきだ。少しぐらい、多めに掻いておいてやる。
これは、不慮の出来事に巻き込んでしまったことへの、せめてもの埋め合わせだ。

満足か? では、梵天に切り替えるぞ。

(梵天開始)
耳から魂を全て取りきったとき、一度お前の意識は途切れる。目を覚ました頃には、元いた場所に戻っているはずだ。

……しかし、鎌で刈り取ると言うと、人間は恐れ逃げ出すから、抵抗感の少ないであろう耳かきを取り入れたはいいものの……。
どうやら、こちらはこちらで、別の面倒を呼ぶことがあるようだな。
一体どうすべきだ? 口から抜き取るなどのほうが良いのか?

まあ、もう答えることはできないだろうな。
ほとんど空っぽのようになっては、私の声も聞き取れているか怪しいといったところか。
……しかし、それでも時折身体がわずかに動くのは……これは、もはや執念か。

あとは、全体に細かく散らばっているのをこすり落とせばおしまいだ。
……さあ、眠れ。安らかに……。

(以降、梵天の音のみで〆)
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
冥府の死神耳かき
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
くるっくー
ライター情報
名義変更しました。(普段のHNと表記変えてたけどややこしくなるだけだったので統一します)
くるっくぅ→くるっくー

耳かきで負ける、屈服させられるシチュエーションが大好きです。

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