夜には涼しい季節がやってきて、線香花火をする二人。しかし今年の夏にもやり残したことがあるらしい。

よし、じゃあこの辺でやるか。
花火と、火つけるやつと、バケツと水。
完璧だね。

ん、結構本数持ってきたから。
何時間でもできるよ。

そんなにやらない？
そっかぁ。

はい、これ花火ね。
あ、火つけてあげる。

(カチッ……)
……ん、ついたかな。ついたね。
じゃあ慎重に……。

俺もつけよ。
あー、なんか思ったようにつかないな。
湿ってんのかな？
おら、がんばれよー、おらおら。
あっ、ついた。おっけー。

……いいね、足元だけ明るいの。
つっても街の明かりがいっぱいあるから普通に周りも明るいけど。
でも街灯もみんな白い明かりだからさ。
こういうぼんやりした火の色ってのもなかなか見ないよね。

……もう夜だと涼しいね。風もあるし……。
でも夏が終わっちゃうと思うと寂しいかもなぁ。

早く涼しくなって欲しい？
まぁ……そりゃそうだね。暑すぎてマジで死ぬもんね。
だけど俺は欲深いから。
夏が終わるなーって思ったら夏が欲しくなる。

んー、何でって言われると困るけど。
なんか……夏の雰囲気？　わかんない。
少なくとも夏祭りと花火大会は夏じゃないと……。

うん。今年も全然行けなかった。
お前が……暑いの嫌だっていうから。

そりゃ暑いの嫌なのはしょうがないけどさぁ〜
もうちょっと付き合ってくれてもいいじゃん。
結局今年も一回しか行かなかった。寂しい。

あっ、落ちた。
もう一本……
よっと。うまく火つくかな……。
……よし。んー、姿勢が……。

ん？
あぁ、別の花火大会とかは他の友達と行ったよ。
なんか、好きだからさ。祭りとか。

まぁ楽しかったけど……
俺は、もうちょっとお前と思い出作りたかったなぁ。
だって俺らだってどんどん歳とってくし、いつまでも子供みたいに「祭りだ〜！」とか呑気なこと言ってられなくなる気がするから。
やっぱお互い若くてピチピチなうちにさ、いろんなことしたいわけ。

おっさんくさい？
うるせぇ……俺だって前はこんなこと思わなかった。
お前と出会って、仲良くなって……
なんかこんなふうに思うようになった。

そうだよ……俺なんか能天気で何も考えてないように見えるかもしんないけど
お前のことだけは別だから……。

あ、お前のも火つけてあげる。
ほい、新しいの……。

(カチッ……)
よっしゃ。
……もうちょっとだけ花火をさ、上に持ってみてよ。

うん。
あぁ、お前の顔がちゃんと見える……。

あ、落とすなよー。
もったいなーい。
もう……顔見られるの恥ずかしいの？

そんなことない？
そっか……。

あっ……俺のも落としちゃった。
今日調子悪いな……。
急に暗くなると見えにくいし……
なぁ……もっとこっち来て。

うん、ありがと……
ほい、火つけていい？

ん……
おー、やっぱ明るいね。
ふふ、お前の顔もこんなに近いし。
俺もつけよ……。

あのさ、線香花火はさ、片手でするじゃん。
だから、ほら……ね？

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・台本（ゆるボイ！）
[BL台本]俺は欲深いから……
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チャイシー・マチ