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一日限りの「レンタル彼氏」だったはずなのに
written by 須藤水波
  • からかい
  • 告白
  • 甘々
  • 年下
  • 年上
  • ホスト
公開日2021年07月14日 20:49 更新日2021年08月25日 20:41
文字数
4640文字(約 15分28秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
男性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
レンタル彼氏
視聴者役柄
レンタル彼氏が初めてのデート相手
場所
主に水族館
あらすじ
【あなた】
お調子者で、明るく陽気。だが本当は、そうやって明るくいることでネガティブなことを考えないようにしようと努力している。社交的。

男性演者様向けですが、青年声が出せるなら女性が演じても構いません。
一人称を変更して女性として演じることはご遠慮ください。

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【あらすじ】
あなたは、レンタル彼氏をアルバイトとしてやっている男性です。
今日は、あなたが初めてのデート相手だという女性と水族館へデートをしにいきます。
最初は彼女をからかったりして笑わせようとしていたあなたは、彼女と過ごす時間が楽しく、本当の恋人になってほしいと思い始めてしまいます。
そこで、とある作戦を実行することにし―…?

全体の時間は15分程度だと思います。
本編
【場所】
〈ヒロインの言葉や注釈〉
↑上記は読まないでください

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【駅前】

〈ヒロインに声をかけられて顔をあげるあなた〉


ん?
はい、俺ですけど……。


〈レンタル彼氏を予約していた〇〇です、と名乗られて〉


あ! 君かあ~、良かった、待ってたんだよ。
もしかしたらドタキャンされたかなーとか思ってさ。

あはは、そうだよね、2ヶ月前から予約してくれてるのにそんなことないよね。

今日は一日限りの恋人ってことで、よろしく。
レンタル彼氏は はじめてなんだっけ。

……ふふ。そんな緊張しないで。
リラックス、リラックス。


うん、そんなかんじ!


立ち話するのもなんだし、とりあえず散歩でもしよっか。

ということで、はい。

手を出して。恋人なのに手を繋いでないのはおかしいじゃん?


彼氏がいたことないからわからない、って……だったらなおさら俺のお願いきいてくれたら嬉しいんだけど。
ほら、どうぞ。


〈ヒロイン、手を出す。あなたは満足そうにうなずく〉


ん、そんで、指をここにいれて。
そ、恋人つなぎってやつ。
すぐ離れちゃわないようにしないと。

あ、でも、もし嫌だったらちゃんと言ってね。
この手のつなぎ方とかさ。


〈手をつなぐのは好き〉


……そう? 好きなら良かった!


〈手をつないで、歩きはじめる二人〉



【駅前→町中】



今日は水族館に行きたいってきいてるけど、希望は変わらない?


〈ヒロイン「チケットはもう買ってある」〉


チケット、買ってくれてるの?
ありがとう、俺が払うつもりだったのに。


あはは、まあね、いつもは“彼女さん”に払ってもらうけど、初めてだっていうし。


〈そして、ごく自然な流れでキメ顔で口説きにかかる(イメージ)〉


それくらいサービスしちゃうよ。


〈ケロッと普段の調子に戻る〉


でも、もう買ってくれてるなら他のをプレゼントするから、楽しみにしてて。


〈ヒロインが照れたので、素直すぎる反応にちょっとむずがゆいあなた。でも、キャラを変えずにからかう〉


……あれ。ねえ、今照れた? なに想像したの?


……あはは、冗談だよ。
もう、俺の目を見て。ね?
君の顔を見て話したいな。


うん、それでいい。


今日は天気がよくてよかった。雨だと手を繋げないからね~。


〈ヒロイン「あなたが傘を持てばいいんじゃないの?」、に対してからかうあなた〉


俺が傘を持ったら腕組みするしかなくなるってことなんだけど、いいの?


〈ヒロイン「それは困る…」〉


でしょ。でも、全然やってくれていいから。むしろ歓迎!


……あはは、やっと表情がゆるんできた。


会ったときから緊張しっぱなしだったから。
見てればわかるもんだよ。君の場合は顔に出やすいみたいだし。


例えば、目を合わせてくれなかったり、すぐ赤くなったり。分かりやすくてかわいい。


え~、褒め言葉なのに。そのまま受け取ってよ。


あ、そろそろ着くね。水族館、楽しもう!


 
【町中→水族館へ】


〈水族館にきたあなたとヒロイン。人は多い〉


平日でも人は多いな…。はぐれないようにしないとね。腕組んだほうがいいかも。


〈ヒロイン、このままがいい、という〉


……このままがいいの?
ならいっか。順路はこっちだって。
お、ショーもある。見たいのある?


〈イルカショーがいい、と答えるヒロイン〉


イルカショーは……11時からだ。
あと1時間ってところか…、おっけ、任せて。時間の管理は得意なんだ。じゃないと仕事できないからね。


〈ヒロイン「この仕事は始めてどのくらいなの?」と尋ねてくる〉


ん? んー、このアルバイト…レンタル彼氏を始めて一年は経つかな~。
俺がやるのは、1ヶ月に1回か2回。休日しかできないし、1日コースが多くていろんな所行くし、体力もってかれるんだよね。

だから今日みたいに一ヶ所を楽しむっていうの、めちゃくちゃ助かる。


ふはっ、うん。若いのに、そう思っちゃうの。
充実感があるってことだと思ってるけど。


ほら、あっちクラゲコーナーだって。いこいこ。


綺麗だよな!


〈あなたはクラゲを眺めながら、ぽつりとこぼす〉


……いいよなあ、クラゲって。

ふわふわしてるだけで綺麗だもん。俺も立ってるだけで褒められるようになりてぇ。


〈ヒロイン「あなたも同じだよ」〉


……そうかな。君は褒めてくれるけど、全員がそうってわけじゃないしさ。特に同性…男性からはなーんか睨まれるんだよね。なんでだと思う?


〈ヒロイン「嫉妬されてるんじゃない?」に驚くあなた。だが、すぐに普段の調子に戻り、からかう〉


……えっ、嫉妬?
そんなにかっこいい?
やっぱモテるだけあるな~!


〈からかいつつも、ちょっと素を見せる様子〉


……いやー、“俺モテるんだよね”っていう態度なのはノリっていうかさー。本心じゃないというか。でもそう言ってる方が楽だし。


ま、それが理由ならまだいいんだけどさ、なんかやったかな? って心配になるんだよね。
もしかして前にデートした子の彼氏か? とか思ったり。


〈ヒロインに、今まで大丈夫だったの?、といわれる〉


…うん。ラッキーなことに、今までそんな修羅場はなかったよ。


だからさ、クラゲっていいなあ、って思う。

……って、いつまで眺めてるんだって話だよな。そろそろいこう。ペンギン見たいでしょ。


〈そういって歩こうとすると、ヒロインがあなたの後ろに行く。ふと疑問に思い尋ねるあなた〉


おっと、なんで俺の後ろにいくの? 横に来なよ。


混んでるから?

どこまで気を遣うの……平気だって。二人分くらいのスペースあるから…、あ。


〈二人の前を親子連れが通っていく。その後ろ姿を見ながら、思わず微笑む〉


……なるほど、あの親子連れが見えたから道を譲ったわけか。
優しいんだ。


また照れてる。うん、だいたい君のこと分かってきたかも。


〈ヒロインに笑うんだね、といわれてつられて笑うあなた〉


えっ? あのね、俺だって笑うときは笑うの。なんで急に変な感想言ってくるかなぁ。


〈ヒロインに、緊張してるように見えたから、といわれて驚きつつ笑う〉


……君には、俺も緊張してるように見えてたの?

んー……遠くないけど近くもない、かな。なんて。



ていうか、彼氏いたことないって嘘でしょ。慣れてるもん。


〈ヒロイン「本当にいたことがないの」〉


え~? そう言うなら信じるけど……。
今までの子より素直なぶん、騙すの心苦しいなぁ。


〈ヒロイン「だましてたの?」〉


……うん。騙してたよ。
自分も、相手も。でも、君は見抜くというか……分かってくれるみたいだから、俺も素直でいこうって今決めた。


〈ヒロイン「今?」と首を傾げる〉


あはは、そう。今決めた。
だからさ、早めにいかない?


うん、飲み物買って、座って、ショーが始まるのを待つ。
その間、いっぱいしゃべろう。


〈ヒロイン「ペンギンは見なくていいの?」〉


ペンギン? あとでも見られると思うし、もし見られなかったとしてもいいよ。


また来ればいいじゃん。俺ひとりでも、君とでも。


〈ヒロイン「じゃあ、また予約しないとね」〉


……あは、そうだね。君と来るには、予約してもらわないといけないのか。そうなると来れるのは……って、なんかごめんね。
強制させるみたいになっちゃった。
そんなつもりないんだよ、忘れて!


さー、飲み物は何がいい?
今度こそ俺にいいところ見せるチャンスちょうだい!



【水族館を楽しんだあと、館内を歩きながら】


は~、楽しかったぁ~!
イルカショーすごかったよね。
プロジェクトマッピングだっけ? 迫力あったなぁ。


うんうん、ちゃんとペンギンも見れたし、寝てるアザラシも見れたし。深海のコーナーも楽しかったよね!
君はどうだった?


〈ヒロイン「楽しかった」に、少し安堵するあなた〉


……そっか、楽しんでくれたならよかった。
俺だけ楽しんでたらデートじゃないしさ。


あれ、なに恥ずかしがってるの?
デートって言葉で我に返ったかんじ? あはは。


〈出口に向かうところで、おみやげコーナーに気付き、足をとめる〉


あ、ねえ、おみやげコーナー寄ってく?

なんか買わないの?


〈ヒロイン「特にないかなぁ」〉
〈悪気のない言葉に、やや落ち込みつつそれを隠す〉


……ふうん、特にないんだ。


〈ヒロイン「どうしたの?」〉
〈寂しい気持ちを隠すように愛想笑いをして、気持ちを切り替えたように明るく言う〉


え?
いや……。

……俺はさ、欲しいのがあるんだよね。寄ってもいい?


よかった。ちょっと人多いけど、いこ。



【おみやげコーナー】


〈歩きながら目当ての場所を探すあなた〉


んーと、多分この辺に……。
あ、あった。


これ、キーホルダー。こういうの買うのが好きでさ。ん~、赤色にしよっと。
君はどの色が好き?



ふむふむ、じゃあこれだね。


〈2つ手に取ったのを見て、ヒロイン「それも買うの?」ときいてくる〉


え? 君の分だよ。


〈ヒロイン「買ってくれるの?」〉


……当たり前じゃん、500円くらいなんだよ? 俺が買うよ。
もらってくれたら嬉しいんだけどなぁ~。


〈じゃあ…というヒロインに、嬉しそうに笑うあなた〉


やった。
んー、あとは……マグカップかあ。興味ある?


〈ヒロイン「うん」〉


あるんだ。じゃあこれも追加、っと。


〈ヒロイン「2つ?」に平然と答える〉


そう、2つ。俺と君の。


〈そのあとで、ハッと気づき、取り繕う〉


……いや、これは単に、俺もほしいなって思ってたから。


〈ヒロイン「本当に?」の疑うような、でもまっすぐな視線に耐えられず、息をつくあなた〉


…………わかった、本当の理由はあとでちゃんと言うから。

今は恋人としておみやげ選びに付き合ってよ。
ぬいぐるみはどう? 好き?


〈ヒロイン「小さいのがいい」〉


小さいのがいいのか。んじゃあ…これとか? イルカ以外にもあるよ。


〈ヒロイン「これがいい」といってペンギンのぬいぐるみを示す〉


ふふ、ペンギンだね、わかった。
俺はイルカにしよっと!



【水族館の外】


〈水族館を出たところで、ヒロインに袋を渡すあなた〉


はい、こっちの袋が君のぶんね。
レジのお兄さんが分けてくれたんだ。


〈ヒロイン「ありがとう」〉


どういたしまして。
お礼なんていいのに。チケット買ってくれたしさ。



ん? おみやげの代金?

いいよ、俺からのプレゼントってことで。
今日のデートの思い出にさ。


〈ヒロイン「じゃあ、理由って何?」〉


……あー。そうだね、さっき理由をちゃんというっていったっけね。


〈あなたは、意を決して話し始める。ここ以降、大事なシーンです〉


……本当はさ。おみやげ代とか、食事代とか、全部“彼女さん”持ちが当たり前なんだよね。

今日だって、チケット代くらいは大したことないし、払うつもりだったのは本当だよ。それ以外は君に負担してもらうつもりだった。


けどさ……。


…………彼氏がいたことない、っていうのもなんとなくわかるくらい、純粋で、すぐ恥ずかしがる君といたらなんか……俺も、初めてデートしてるって感じちゃって。


今日の思い出が、欲しくなった。
俺がプレゼントすれば、君はもらってくれることもわかってた。

君に、俺のこと、今日のこと、覚えててほしいって思って……。


おかしいでしょ、レンタル彼氏でそこそこ回数こなしてきたのに。


こんなの、初めてなんだ。


…………なあ。よかったら、改めて自己紹介させてもらってもいい?
レンタル彼氏じゃなくて、本当の、一人の俺として。


そんでさ……友達になってくれたら嬉しい。


〈ヒロイン「友達?」に、思わず口走るあなた〉


いや、本当は俺だって告白したいけど、って、あ……。


…………言いたくなかったけど、俺、彼女ができてもすぐ別れちゃって、長続きしないんだ。

もちろん、レンタル彼氏をやってるからには今もいないんだけど。


あー、だから、その……。君となら、長く、付き合えるかもって、思ってたりするんだ。

今日、本当に居心地よかったから。

もし、恋人になってくれるなら、レンタル彼氏やめる。すぐやめる。


〈ヒロインが笑ってうなずいたので、あなたも笑う〉


……じゃあ、改めて。俺の名前は――。
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
一日限りの「レンタル彼氏」だったはずなのに
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
須藤水波
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