ブラック労働から家に帰ってくると知らないイケメンが家で待っててくれた

おかえり～。
ビックリした？
へへ、サプラーイズ。
なんちゃって、ごめんね勝手に入って。
でもビックリさせたくってさ。
あは、その顔。声も出ないって感じの……ふは、そんな顔も可愛いね。
さ、入って。キミの家だよ。
え？　なぁに、間違えてないよ。正真正銘キミの家。
いつまでも玄関に突っ立ってないでさ。
……あれ？　
もしかして、靴を脱がせて欲しいのかな？
それで、お姫様抱っこで運んで欲しいと。
違う？
そんなに否定して、もしかして照れてる？
ふふ、慌てちゃって……そういう困った顔、すごく…………
なんでもない。
それより早くなかに入って。
で、じゃじゃーん。
スペシャルディナーを用意しておきました！
アボガドサラダにカルパッチョ、あとローストビーフ！
もちろんお飲み物のシャンパンもございますよ、姫。
あとは……ふふ、イチゴたっぷりのホールケーキ！
好きなものばっかりでしょ？
ケーキはお店のだけど、他はぜーんぶ僕の手作り。
おかわりもあるからいっぱい食べて。
ん？　なに変な顔して。
あ、もしかして今日が何の日か忘れてる？
毎日終電ギリギリで帰ってきて、休日もサービス出勤してるから大事なことを忘れちゃうんだよ。
今日は、キミの誕生日、でしょ？
なんで知ってるかって？　
だって世界で一番素敵な日だから。
キミがこの世に生を受けた素晴らしい祝福の日。
だからちゃんとお祝いしないと。
実はプレゼントも用意したんだ、キミがずっと希望してたもの。
準備に少し手間取ったけど、きっと気に入ってくれると思うんだ。
そろそろかな？
タイミングが難しくて……
ちょっとテレビつけるね。
この時間のニュースは……
はい、これ。今やってるこの火災のニュース、どこだと思う？
ふたつめのサプラーイズ！
ははははははは、その顔！　ほんと可愛いな。
どう？　気に入った？
キミさ、毎日毎日ツイッターでずーっと弊社が燃えちゃえばいいって呟いてたでしょ。
本当はもっと可愛いプレゼントが良かったんだけどさ、折角だしそのささやかなお願いを叶えてあげることにしたんだ。
どう？　
少しはスッキリした？
……なんでこんなことをっ、て。
だって喜ばせたかったから。
嫌だった？
ふふ、嘘。
だって、さっきより顔色いいよ。
憑き物が落ちたみたいだ。
その表情は初めて見た
キミのことはなんでも知っているつもりだったけれど、そんな顔もするんだ。
なんだか嬉しいな。
うん？
そう、僕はキミのことならなんでも知ってる。
好きな食べ物もSNSのアカウントも誕生日も、会社も実家の住所も家族構成も。
毎日毎日、どの路線を使ってどの道を通っているのか。とか。
今朝は一本遅めの電車だったね。少し起きるのが遅かったみたいだ。
朝食は飲むヨーグルトを一本、定番はイチゴ味だけど季節限定の味も好んで買う……
……なんか、改めてこんなことをわざわざ言うの、恥ずかしいな。
知ってるアピールしてごめん。
それだけキミのことが……その、す、すす、好きってことで……
ああ！　くそ、もっといいムードになってから言おうと思ったのに！
はぁ。
そうだよ、好きだよ。
キミのことが大好きなんだ。
キミを見てるだけで幸せになる。
笑った顔が可愛いな、とか。さっきみたいに困った顔をみると胸がギューっとして……とにかく一日中キミのことを考えてる。
キミは？　
キミは僕のこと、す……
ああ、ごめん！　焦りすぎた！　いきなりだとビックリするよね。
うん。
もっと最初からいこう。僕はキミのことをなんでも知ってるけれど、キミはそうじゃないもんね。
うん、そうだった。ついうっかり。
ん、んんん！　

初めまして。

キミは僕が誰だか、知ってる？

・台本（ゆるボイ！）
アクティブなヤンデレ男に強制的におもてなしされる
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
壱宮凪