閲覧ありがとうございます！
老田子鹿です

A：過去の経験から人間不信になった
B：人が大好きで優しさを与え続ける
BはAの傷を癒したいと思いAのもとへ通い続ける
AはBを突き放そうとする……

男女、男同士、女同士、どの組み合わせにも対応できます。
演じる人は最大で2人、片方のセリフを抜かせば1人でも演じることが可能かと思います。
または、一人二役で演じるのもいいかもしれません！

説明
（）：動作や音、表現の仕方の説明
『』：相手のセリフ
―――：相手のセリフを想定している間
～数秒の間～：セリフとセリフのちょっとした間
≪≫：場所や時間帯、状況の説明
※※※：場面転換した合図　
「、」や「～」や「……」は筆者の主観で入れているものです。
セリフや間の取り方など、変えたい箇所があれば自由に変えて大丈夫です！

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※※※
Aのいる部屋/Bが訪ねてくる
※※※

（SE：ノックする音）
（SE：ドアを開く音）
A：……どうぞ


（表現：元気な声で）
B：こんにちは！


（表現：呆れたように）
A：あぁ……あなたか……


また来たんですね？あれほど来るなと言ったのに


（うかがうように）
B：うん！だって……君を助けたいから


A：「君を助けたいから」……ねぇ……


いいかげんにしてくれません？それはあなたのエゴだ。


（表現：慌てて否定するように）
B：いや！エゴじゃなー――


（表現：激怒するように）
A：いいや！エゴだね！


B：―――っ！


（SE：椅子から勢いよく立ち上がる）
A：あなたは「優しさをふりまく快楽」に酔いしれている。まるで中毒者のようだ！


B：そんなことっ！！！


A：勝手に人を「可哀想な人間」とレッテルを貼って行う、あなたの善行とやらは、己の欲望を満たすためだけの手段にすぎない！


これをエゴイズムと呼ばずなんと呼ぶ！


…………


（表現：落ち着きを取り戻して）
すみません……取り乱してしまった


（表現：焦って答える）
B：いや！大丈夫だよ！誰だって大声で文句を言いたくなるときはあるから！


それで君の気持ちを落ち着かせられるなら、それはしょうがないことだよ……


A：……私はあなたを含め、人を信頼できないんです。友人にも、教師にも、親にさえも裏切られてきたから


B：はじめて聞いた……そうだったんだね……


A：どんなに身体的に暴力を振るわれても、精神的に抑圧されても誰にも理解されず「お前にも悪いところがあった」と言われ続ける気持ちわかります？


B：そんなっ！……ひどい……


A：―――どうだか……？


人間の本性は敵愾心、猜疑心、自負心の塊だ


どんなに優しさや愛をささやいても、それは本性を隠すための欺瞞だ


B：そんなことな―――


（表現：かぶせる）
A：人を信じるのは認識を曖昧にする行為なんだよ！


なんども騙されてきた！常に後出しされ続けてきたんだ！「お前のことがずっと嫌いだった」、「あの時のお前はひどかった」とかずっと……ずっと……


信じても、信じても、信じても！あとから否定される！！


……人間関係はまさにポーカーだ


相手がどんな手札を持ってるかわからないない以上、諸手を上げて信用することなんてできやしない！かならず後悔することになる！


B：そんな……


A：はっ！そんないかにもな反応しないでくれ！これが現実だ！


B：……


A：……なのに情けない……あなたと話すたびにその認識が揺らいでしまう！


B：えぇ！？そうなんだんだ……なんかちょっとうれしいな……


A：……そうですか。私はちっともうれしくないですけどね


B：えぇ！？なんで！？


A：君と会うたびに妙なぬくもりを感じるからだ。このぬくもりを知ってしまったから、孤独に耐えられなくなった……。君が出ていくと茫漠とした恐怖に支配される！このぬくもりはいったい何なんだ！？気持ちがわるい！！


君と、君と出会わなければ……どんなに良かったことか……！


君と出会いさえしなければ、希望を持たずに済んだ！醜い現実の絶望しか見なければ傷は広くならずに済むというのに！


～数秒の間～


B：……そっか……うん、そうだったんだね……


あのね……人はそのぬくもりのことをね……「幸せ」っていうんだよ


A：「幸せ」……？


B：うん「幸せ」


「幸せ」を感じると、胸のおくにじんわりとしたあったかさが湧いてくるんだ。人にやさしくされたり、人を助けられたり、愛されたり、何かに成功したりしたときにそうした「幸せ」を感じられるんだよ？


私と会話してその「幸せ」を感じるってことは、きっと君にも人を想う気持ちや信じたい気持ちがあるんだよ


A：そんなことありえない！絶対に裏切られるってわかってる……！あなたすらも信頼できない！


B：君は人の本性を敵愾心、猜疑心、自負心の塊っていったね。


A：……えぇ


B：でもそれは人の裏側。人には裏だけじゃなくて表もちゃんと存在するんだよ？


敵愾には友好が、猜疑には信頼が、自負には謙遜が、どれだって人の美しい面ばかり


「人を助けたい、あなたを助けたい」


……君のいうようにこれはエゴかもしれない


でも！でも私は！エゴでいいから人にやさしさを伝えたい！人に幸せを感じさせてあげたいんだ！


だって、だれかに敵対して傷つけるのが怖い、人を疑って孤独に死ぬのは怖い、人を必要以上に貶めるのが怖いから！


裏切られたり否定されたりする痛みがあっても！愛したいし愛されたいんだよ！


君は人を許せないだろうけど、私は人を許すし、罪ですら赦していきたい


この考え方は理想だってわかってる。でも、理想がないと前へ進んでいけないんだよ？


君はずっとずっと心に刃を向けて自傷し続けている！それはとても危ないことなんだよ？


A：そうであっても変に期待して憎しみや悲しみを抱いたら元も子もないだろ！


B：前を向いて笑っていれば憎しみや悲しみはいつか乗り越えることができるんだよ！どんなに深い傷でも少しずつ癒えていくものなんだよ！


私は心から君と笑いたい！だからずっと本音で話してきた！だから……だから信頼してよ……！


（表現：Bに聞こえない声）
A：……私は……


B：え？


（表現：おびえるように）
A：私は！……信頼してもいいのか？本当に……あなたに期待してもいいのか……？


（表現：慈しむように）
B：人を信じれないで孤独でいる……これほど悲しいことはないよ


A：そう……ですか……


……でも、私の世界に対する考えは変えられない。たとえ、あなたが信頼できる人間であっても、あなた以外はそうとは限らないから！


B：うん……それでいいと思う。


君はやっとスタート地点に戻れたばかり、無理に変えようとする必要はないよ


A：あなたにはこの世界の偽り、悪意、醜さで傷つかないでほしい


だから、全力を尽くして君を守っていく。少々危なっかしいからね


B：そうだね、私は馬鹿正直だからそうしてくれると嬉しいな


この世界の純真、善意、美しさに気付かせて傷を癒してあげたい。


あなたの歩む道が暗いなら灯になりたい。


A：あなたに出会えて本当によかった……


B：私こそ君に出会えて本当によかったよ

・台本（ゆるボイ！）
癒えない心を癒す（子鹿シリーズ③）
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
老田　コジカ