とある商家の令嬢であるあなたは、護衛騎士ひとりを連れてガラス細工が有名な街へとお忍び旅行へ。
歳上で頼もしい護衛騎士にほのかな憧れを抱くあなたは、彼との2人旅に内心ウキウキ。
しかしその街でトラブル（？）が起きて……？

性別、一人称などご自由に改変ください。
すっとぼけ鈍感真面目護衛騎士を楽しく演じてくだされば幸いです。

お嬢様、お嬢様っ！

お待ちください、お忍び旅行で気が高ぶられるのも分かりますが……そう急いで歩くと転んでしまいます。

その白く美しい脚にお怪我なんてしたら、取り返しがつきませんよ。

お嬢様のことを知る者が全く居ないとも言い切れませんし、護衛は私だけです。

どうか、私からあまり離れないでください。


……この方角を進めば大市場ですね。

お嬢様いちばんのお目当て、ガラス細工の工房もそちらにあると聞いております。

確かにこの街は、窓ガラスに模様があったり店の中にガラス小物があったりと、ずいぶんガラスが有名なようですね。

どれも繊細で美しく、作り手の魂がこもっているのを感じられる……。

それなのに他の街との交易には出さないのは、観光客の集客狙いでしょうか……。


あっ、すみません。

つまらない話を失礼致しました。

……おや、将来のために参考になる、ですか？

ふふっ、お嬢様が未来のことを考えてくださっていて私も喜ばしいです。

頼もしい後継者がいれば、旦那様も安心して任せられるというものですから。

お嬢様にはまだ早いですが、いずれ素敵な方と結ばれて素晴らしい当主となられるでしょう。

どうかその時も、私を護衛騎士としてお側に置いてください。


……ん、何やら騒がしいですね。

大市場で何かあったか……？

お嬢様、一度宿に引き返しましょう。

何があったかは分かりませんが、うかつに大市場に向かうのは危険です。


……そうワガママを言わないでください。

お嬢様の身はひとつ、そしてあなたを守る私の身もひとつなのです。

落ち着いてから明日以降ゆっくり見にいきましょう？


……もし、そこのお方！

大市場のほうが騒がしいですが何があったのですか？

……え？　旅のサーカス団が来ている……？


わっ、うわっ！　お嬢様すみません！

そう叩かないでくださいませ……！　申し訳ありません……。

……サーカス、観に行きましょうか。

ただし、安全第一、ですよ。


―――――――――――――――――――――


お嬢様、サーカスは楽しかったですか？

……そうですか、それは良かったです。

……ん、私の感想……？


いえ、私はサーカスをほとんど観ていません。

私の仕事はお嬢様の安全を守ること。

お嬢様が安全にサーカスを楽しむためには、お嬢様に危害を加える者や、熱狂した客が押してこないかなどを気を付ける必要があります。

なので、お嬢様の周囲に気を配っておりました。


……お嬢様？

なぜ、そんな顔をするのですか……？


……は、はい。

ガラス細工の工房へと参りましょう。

ただ、その……お嬢様が気落ちしてらっしゃる理由が、私には分からないのです。

なにか楽しみを削ぐような真似を、私はしてしまいましたか……？


……自分で気が付いて、ですか。

ふむ……。

……旦那様には、目立つからガラス細工の購入はひとつまで……と言われておりますが、私からプレゼントしてはいけないとは言われておりません。

なので、お嬢様の欲しいガラス細工をもうひとつ、私からのプレゼントとさせては頂けませんか？

どうしてお嬢様が浮かない顔をされているのかは分かりませんが……せめて、この旅行を楽しいものとして終えて頂きたいのです。

お詫びの気持ちも込めて、どうか受け取ってはくださいませんか？


……痛っ！　ちょ、お嬢様……！？

もう知らないって、そんなぁ、ガラス細工が欲しかったのではありませんでしたか！？

お嬢様！？　お嬢様ー！

・台本（ゆるボイ！）
真面目な護衛騎士は鈍感すぎて私の気持ちに気付かない
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
弐橋 葉