目が覚めたら知らない部屋。覚えのないベッド。
「おはようございます」と柔らかく微笑みながら入ってきたのは怪しいと思っていたお隣さん。
拉致監禁されていると気が付くも、彼はシンプルに「神様が決めた恋人」として当然同棲するものだと思い込んでいるようで……。

変な啓示を受けちゃったストーカーによる監禁ものです。
過去イチ気持ち悪いのが書けたかなと思います。
「アナタ」とカタカナにしているのは、なんとなくですが無機質なイメージです。
口調や一人称の変更はご自由にどうぞ。

ご飯ですよー！

ほら、そろそろご飯食べてくれないと……。

僕とアナタは神様が定めた運命の恋人なんですから、まだまだ未来があるんです。

それなのに同棲を始めてすぐ飢え死になんてされちゃったら困ります！


胃がびっくりするといけないからお腹に優しいものを作りましたよ。

……ねぇねぇ、少しで良いから食べてくださいよぉ〜。

アナタをこの家に迎え入れてから、アナタの好きなものばかり用意したのに……。


……わ！　食べてくれますか？

ふふっ……良かったぁ。

今は男女平等の社会ですからね、僕がご飯作るのでも全然良いです！

なんならアナタはこの家に居てくれるだけで良い！

あっ、もちろん外出はダメです。


僕は在宅ワークなので、24時間一緒にいられますよ！

アナタへの愛が上手く伝わっていないようですが……まあ、ゆっくり育んでいきましょう！

そろそろ服も新しいちゃんとしたもの欲しいですよね。

アナタがよく使ってた通販サイトのカタログが届いたので、欲しい物はいくらでもチェックしてください。

注文しておきますから！


あぁ、幸せだなぁ。

愛する人と向かい合って手作りのご飯を食べる……。

いずれ夫婦になる僕たちにぴったり。


……ん？

……『狂ってる』……？


あぁ！　そうですね！

僕は狂おしいほどにアナタを愛しています、やっと伝わりましたか！？

アナタが隣の部屋に引っ越してきた２年前からずっと、アナタの捨てた物やポストの中、買い物のレシートとかからアナタについて追いかけ続けましたし！

僕の運命の人はアナタしかいないって、まさに雷に撃たれたような心地でしたよ！

だから相応しい夫になるために、アナタの好みは完璧に把握してるんです！


あぁ……あぁ〜……嬉しいなぁ。

僕がアナタをどれほど愛しているか、分かってたのにつれない態度取るなんて……それは知らないアナタでした。

好きな人に対しては冷たくしちゃうタイプなんですね？　ツンデレ、ってやつですか？　ふふっ。

そんなところも可愛いですよ。

はっきり言われるまで控えておこうと思いましたが、こうして気持ちが通じ合っていることが分かりましたし今日からは同じベッドで寝ましょうね！


……あぁ、嬉しいからってそんなに泣かないでください！

しっかり抱きしめて、アナタが眠れるようにたくさんたくさん愛してあげますからね。

愛する僕の腕に抱かれれば、これからの不安も消し飛びますよ。


そうだ、予行練習しますか？

無理矢理は良くないと思ってハグすらしてきませんでしたが、もう遠慮しなくて良いですよね？

涙に濡れるアナタを慰めてあげたい……。


……はぁ、こんなに細い身体……。

野蛮な男に触れさせたら壊れてしまいそう……。

大丈夫、僕がこの家で守ってあげますからね。

2人の新居で穏やかに暮らして、幸せな家庭を築きましょう。


あぁ、子どもが出来たら外に出ても良いです！

教育には必要ですからね。

アナタは危なっかしいから、1人にさせるのが怖くて……。

でも子どもがいれば周囲も自然と気にかけてくれるでしょう！

何人欲しいですか？

僕は最低でも、アナタに似てる子と僕に似てる子と、2人は欲しいですね〜。

きっと笑顔に溢れる幸せな家庭になりますよ！


……そっか！　分かりました！

マリッジブルーってやつ？　ですか？

大丈夫です、生活の心配はさせません。

僕の手の届くところから離れないでくれさえすれば、アナタのことは絶対に幸せにしますよ。

なにせ、神様がそう決めた運命の恋人なんですから、僕たちは！

・台本（ゆるボイ！）
狂愛サイコストーカーとの監禁生活
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
弐橋 葉