《設定》

*彼氏
美容師。
かねてよりいつか自分のお店を持つことを目標としていた。
遂に夢が叶うこととなり、開店前日、
彼女をお店に呼び、最初のお客様としてカットをする。

*彼女
彼氏のアシスタント時代からよく練習に付き合っていて、
彼氏がスタイリストデビューしてからもずっとショートヘアだった。
しかし開業に向け具体的に話が進み始めた頃から彼に切ってもらうのをやめ、
開店して最初のお客になることと、彼氏のお店が上手くいくようにとの願掛けも兼ねて、ずっと髪を伸ばし続けてきた。


※「シチュエーションボイスでドライヤーの表現は難しい」という話を度々耳にするので、ドライヤーの場面はカットしています。
しかし表現可能であればアドリブで入れてくださると大変有難いです。

いらっしゃい。
迷わなかった？
…まあね、駅近いっしょ？
立地はかなりこだわって選んだからね。
ここならお客様も通いやすいかなと思って。

じゃあ荷物貸して。あと上着もね。
《わざとらしく丁寧なキャラを作って》はい、お預かり致します。
《キャラを作ったことに笑う》っふふ。美容師っぽいでしょ？
まあ実際、プロの美容師なんだけどね。
《改めてキャラを作って》さて、ではこちらの方へどうぞ。

改めて…ようこそ、俺の城へ。
どう？かなりお洒落っしょ。
そうなんだよねー。
お客様にインテリアコーディネーターさんがいてね。
自分の店持ちたいって話はずっとしてたからさ。
遂に決まったって報告したら、
めちゃくちゃ親身になって話聞いて、色々してくれて。
もうほんと頭上がんないわ。

本来ならめっちゃいい感じのBGMかける予定なんだけど、
まあ今日は俺と君しかいないし、
逆に音楽ない方が特別感あるかなと思って、切ってある。
今日だけね。っふふ。

じゃあカウンセリング…は、する必要ないか(笑)
俺好みにしちゃっていいんだよね？

…ほんとにいいの？
だってさ、俺のアシスタント時代からずっと練習台にされて、
ずっとショートだったじゃん？
でも俺が店持つって決まってから伸ばし続けて、かなり長くなったからさ。
今ここで切っちゃうの、未練とかない？
まあ確かに、ショートの練習したかったってのもそりゃあるけど、
でも本音を言えばさ、ショート可愛いなと思ってそうしてきたのが1番デカいんよ。
彼女のこと自分好みにできるの、彼氏かつ美容師だからこそ得られる大きな特権じゃん？
だけど自分の納得できる好きな髪型にするのが、絶対1番いいって思うからさ。
今の長いのもめちゃくちゃ似合ってるよ？
後悔、しない？

…そっか。うん、わかった。
じゃあシャンプーするから、こっちおいで。
あ、そこ段差あるから気を付けてね。

はーい座って。
じゃあ倒しますよー。
…あ、もうちょい上にあがってこれる？
ありがと。
首キツくない？
うん。じゃあ目元失礼しまーす。

お湯、熱くない？
ん、おっけー。
じゃあまずはシャンプーから。

っふふ。気持ち良い？
そりゃあわたくし、プロですから(笑)
痒いところはございませんかー？なんてね(笑)
美容師みたいって…だから美容師なんだってば(笑)
もう何年も君の髪切ってたでしょ？
なんだと思ってたの、もう…(笑)

はい、じゃあ次トリートメントね。
君の好きなホットトリートメント、うちでも使うことにしたんだ。
じゃあ付けてくよー。
っふふ。あったかい？
これほんと気持ちいいよね。
君だけじゃなくて、俺のお客様好きな人ほんとに多いからさ。
そんでもって仕上がりもいいしね。
絶対自分の店持っても取り扱うんだって決めてたんだよね。

…さっき話したインテリアコーディネーターさんもそうなんだけど、
お客様にさ、自分の店持つことにしたって話したら、
力貸すよって声掛けてくれたり、
お店できたら通うねって言ってくれたりしてさ。
自分の店持つのはずっと夢だったけど、
でもさ、1人じゃ絶対ここまで辿り着けなかった。
お客様に恵まれたよ、俺。
…っふふ。ほんとにねえ。
はい、じゃあ流しますねー。

なんかこうやって君の髪洗うの、久しぶりだなあ。
ねー。
俺が自分のお店持つって決まった頃からさ、やらなくなったもんね。
髪もずっと伸ばしててさ。
俺の新しいお店の最初のお客さんになるんだって言ってくれたの、
すっごい嬉しかったんだよ？
だから今さ、それが叶えられて、結構浮かれてるかもしんない(笑)
…あはは！分かってるよ。
浮かれてるけど、でも施術はちゃんとしますから。
任せて。

はい、シャンプー終了っと。
席戻すよー。
どう？気持ち良かった？
っふふ。それは何よりです。
よし。じゃあ席戻ろうか。

さて…と。
とりあえずね、んーと…《彼女の髪を触りながら》
これくらいかな、この長さにしようかなって思ってる。
で、レイヤー入れて、動きを出そうかなって。
イメージ的にはねー、えっと…
あ！君が今ハマってるドラマあるでしょ？
あのヒロインの子みたいな感じにしようかなって。
あとは前髪も伸びてきてるからねえ…目に入って鬱陶しいでしょ？
だよねー(笑)
うん、可愛くするから安心して。
今のところ考えてるイメージとしてはそんな感じかなあ。
大丈夫？異議ないですか？
…よし。じゃあ切ってくね。

《しばらく無言でカット音のみ》

…なんかさー。やっぱり伸びたよね。
今日のために伸ばしてくれてたんでしょ？
あはは(笑)そうだね、こんなに長いと切り甲斐あるよ(笑)
最初のお客様がこれだけやり甲斐ある方で嬉しいです(笑)

…うん、でもそれだけじゃなくて。
僕のお店が無事に完成するようにって、願掛けの意味もあったでしょ。

そりゃあ気付くよ。
女の子にとって髪がどれだけ大事なものなのか、
美容師だからね。もちろん知ってるし、
そういう願掛けの意味で髪伸ばしたいって相談されたり、
逆に何かとさよならする時に髪切りたいって言われたり、
そういうお客様、もう何人も見てきたから。
それにねー、僕、美容師である前に、君の彼氏なんだから。
君が考えそうなことは大体わかるよ。

…ありがとね。
正直さ、自分のお店持つって決めてから、結構不安も多くて。
まあ色々愚痴とか弱音とか散々聞いてもらってたから、知ってると思うけど。
だけどそうやって不安になるたびに、話聞いて、
一緒に悩んだり励ましたりしてくれてさ。
絶対大丈夫だよって言ってくれたの、すごい救われたし、心強かった。

だからさー、今すごく嬉しいの。
やっとできた自分の城で、君の髪を切れてる。
夢、叶ったなあ…

とはいえ、まだまだこっからだからね。
やっとスタート地点に立ったってだけ。
…俺、頑張るからさ。これからも、君に見ていてほしい。
うん。ありがとう。

…さて！終わったよ。
どう？いい感じでしょ？
やっぱりショート似合うなあ。俺の彼女めちゃくちゃ可愛いわ(笑)
あはは、照れんなって(笑)
でも気に入ってくれたなら良かったよ。
うん、可愛い。すごく。

《椅子に座ったままの彼女にそのままバックハグ》
ほんとに可愛い。
…あのね、さっきも言ったけど、俺、君にずっと助けてもらってた。
支えてもらってばっかでさ、君がいなかったら、
自分の店を持つって夢、叶えるなんてできなかったと思う。
…情けないけどさ、俺…ひとりじゃ駄目なんだよね。
無事にお店はできたけど、まだスタートでしかなくて、
これからもきっと大変なことはたくさんあって、
だから、出来れば…これからも君に助けてもらいたいって、思ってる。

でもね。助けてもらうだけじゃなくて、その分俺も、君のこと助けたいの。
君が悲しい時、苦しい時、俺のこと頼ってもらいたいし、
助けられるように、俺頑張るからさ。
今まで助けてもらってきた分、これからも助けてもらう分、
俺だって君のこと助けたい、支えたい。力になりたい。
俺と、君と、2人で支え合って生きていきたい。
だから…

《鏡越しに彼女と目を合わせながら、彼女の目の前に指輪を差し出す》
俺と、結婚してください。
俺の人生かけて、絶対幸せにする。

《数秒間の沈黙の後、泣き出す彼女》
泣くなよ…(笑)
ちょっと椅子、回すよ？
《椅子を回転させて彼女を自分の方へ向かせ、目線に合わせて屈む》
もう…せっかく可愛くしたのに。泣いちゃったら台無しじゃん。
まあ泣いても可愛いんだけどね(笑)
…そうだね、俺が泣かせたね(笑)ごめんね？
で、返事は？

…うん、ありがとう。
大好き…
《彼女を抱き締める》

っはは。よかった。
断られたらどうしようかと思った…(笑)
はあ、すごい緊張したー…
カット中に手震えそうになるの必死で抑えてたもん(笑)
緊張したけど、仕上がりは完璧だったでしょ？プロだからね(笑)

…なんかさ、気の利いたこと言いたいのに、今なんも出てこないや…
安堵感と幸せで胸いっぱい…
…君も？そっか。
っはは(笑)顔ぐっちゃぐちゃ(笑)
でもめちゃくちゃ可愛い。
《キス》
ありがとう。大好き。
ずっと一緒にいて。2人で幸せになろうね。
…うん。

・台本（ゆるボイ！）
夢を叶えた美容師彼氏の話
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
ちとせあられ