とある耳かき棒メーカーで、過剰な快楽特化の耳かきの販売をやめるよう社長に意見した結果、
あなたは製品開発部へ異動となり、新製品のモニターとしての役割を命じられる。
そこで待っていたのは「耳かき装置に拘束されて、長時間延々と耳かきされ続ける」という拷問のような仕打ちだった。

意識が耳かきに乗っ取られそうになる中、データを採取しに来た開発部の職員に向けて、あなたは最後の力を振り絞り、助けを求めようと試みる……。

(本作は「耳かき棒メーカーの社長に堕とされる」(https://yuruboi.com/creator/writer/script/9726)の続編です。ただし、演者の役は前作とは異なります。)
(本作はその性質上、演者は正面から話しかけているパートが殆どです。)

(左耳耳かき開始)

(歩いてくる足音)
ん～……『計測5時間目。脳波は引き続き、快楽を示す大きな波が生じている。
被検体の様子は……目がうつろになっており、時折言葉にならない声を発することがある』……こんな感じでいいかなっと。

それにしても……なんていうか、目を背けたくなるような姿だわ……。もはや人間としての尊厳、失っちゃってるよ。
長時間耳かきされ続けるだけでこんな風になっちゃうんだから、人間って案外もろいなぁ……。

……いや、やっぱさすがにここまでにはならないわ、普通……。
もしかしなくても今回の試作品、相当にヤバい代物だったりする……？

………………。

一瞬耳に入れてみるぐらいなら、多分試しても大丈夫っしょ……どれどれ……。

……いっ！？
え？ 何これ？ ちょっと耳に触れただけで、すごい刺激がきたんだけど！

……そっかぁ。これをずーっと耳に入れられてんだぁ……。
そりゃこうなっちゃうよねぇ……おーこわこわ……。

まぁでも、案外本人は幸せだったりして？
一応、耳かきが気持ちよくてこうなってるんだもんねぇ。

おーい、聞こえるー？
その耳かき、されててどんな感じー？
何か感想とかあったら返事してー。

……なーんて、聞こえる訳ないか！
どう見ても、人間性失っちゃってるし。

あ、この辺で梵天のデータもとっとかないと。

(SE：機械のスイッチ音)

(耳かきから梵天に切り替える)

脳波は……うん、普通に癒されてるっぽい。
まあ一応メモっとくか。

ていうか、ちゃんと梵天の感触、感じ取れてるんだ。さっきまであのやべー耳かきで耳の中荒らされまくってたのに。
あの後にふわふわされたところで、落差激しすぎてなんもわからなそうな気がするけど……。
アレか？ いじくられすぎて逆に敏感になってるとかそういうこと？

……ん？ 今なんか言わなかった？

…………………。

んえぇ！？ 「たすけて」って言ってる……！
マジか……まだ正気を失ってなかったんだ……。

どうしよっかな……一応、話だけでも聞いてあげるか……。

えっと～……助けて、ほしいの？
ん～、言葉になってないけど、多分そうだって言いたいのかな！

……ん？ 今度は何？
……『駄目』？ ……って、何が？

……『この』、『みみ』、『かき』……あー、わかった、これの商品化をやめさせてってことでしょ。社長にもそう言ったらしいもんなぁ。

ん～……実は、私も同じこと思ってたんだよねぇ……。
なんせ、さっき試したばっかだし。
この耳かき棒が一般流通したら、さすがに世も末だもん。

……よし！ って訳で～。

(耳元で囁く)
このまま、右耳、開始しまーす……♪

(SE：機械のスイッチ音)
(右耳かき開始)

いや～、ごめんね～？
私には、正義感だけで社長に逆らうような真似はできないもんで。

それに、あの人に代わってから給料も上がってるし、私的には何の不満も意見もございません。
いくらヤバい耳かき棒を作って売っていようが、それはそれ。別に、使いたい人が使えばいいだけだし。
もうちょっと、気楽に物事を考えたほうがいいよ？ ……って、もう遅いかっ！

あなたの行い、人としては立派なのかもしれないけど、その結果がこれじゃあねぇ。
あーあ、こうしてる間も、どんどんお耳幸せになっちゃうよ。

んー……ふふっ。
私のこと、裏切り者だと思われちゃうかなーとか、恨まれちゃうかなーとか思ったけど、
耳かきでそれどころじゃないな、これ。
さっきから脳波もギュンギュンいってるし。

それにしても……さっき、命乞いみたいなこと言われたとき、
なんか……ちょっとだけ、ゾクゾクきたんだよね。

あと、反対側も耳かきされるってわかったときの声とかも、聞いてて思わず頬がゆるんじゃいそうになったし。

この仕事、楽な代わりに退屈なのがちょっとね、って思ってたんだけど、
見つけちゃったかもしれないな……新しい楽しみ方……。


ちょっとここらで、もっかい梵天やってみよっか。
(SE：機械のスイッチ音)
(梵天開始)

ほら、さっきまでと比べたら休憩タイムみたいなもんだよ？
また『たすけて～』ってお願いしてみる？

……あー、ダメだ。今度こそ本当に終わっちゃったなこれは。
ま、測定自体はまだできてるから、これからもビシビシ働いていただきますよ～っと。

あ、そうそう。
もう私の話なんてまともに聞けてないだろうけど、ちょっとした裏話でもしようかな。

実は～、あなたには、感謝しないといけないことがあるんだよね。
ってのも、以前は別の子がモニター役をやってたんだけど、その子、私のうっかりミスが原因でぶっ壊れちゃってさぁ……。
私が装置のスイッチを切り忘れたまま帰ったから、休日もあわせて丸々3日間、延々と耳かきされ続けて……その結果、本当におかしくなっちゃった。
それで、もし後任が見つからなかったら、最悪私が責任取る羽目になってたかもしれなくって……。

そんな時に、あなたはここへ来てくれた。
後任が見つかったおかげで、私のミスも不問になって、引き続き観察役を続けられることになったし。
ほんと、いいタイミングで社長に楯突いてくれてありがと！ ってね！

さて、と。問題はなさそうだし、今日はもう帰ろっかな。
自動耳かきモード、8時間に設定、っと。

それじゃ、まだまだ一日は長いけど、頑張ってね～。

・台本（ゆるボイ！）
耳かきモニターという名の長時間拘束耳かきに壊される
https://x.com/yuru_voi

・台本制作者
くるっくー