1.昼休み(廊下)

ねー、そこの2年の男子。ちょっといい？

いや、無視すんなし。君だよ、き・み！

用事？いや、そんなもんないけど。

君、ちょっとした有名人だから、どんなんかなーって思って。

あはは、謙虚だねぇ。ね、ちょっとウチとお話しよ？

いいじゃんいいじゃん！細かいことは気にしない！ほら、行こ！


2.昼休み(校舎裏)

ここなら人目につかないかな。

は？いや、カツアゲなんてしねーから。

ウチのこと、何だと思ってんの？

いや、別にたいした用事じゃないんだけど。

ふーん、へー…君、よく見たら結構イケメンだね。

ウチのタイプかもしんない。

って、ちょっと！何ウチの許可なくどっか行こうとしてんの⁉︎

用事がなさそうなんで戻りますって、いや、ある！実はあんの！用事！

あー、えっと、その…あのときはありがと。ウチのこと助けてくれて。

は？初対面ですよねって、マジでウチのこと覚えてないの…？

うわー、ないわー…しゃーないなぁ、覚えてないなら思い出させてあげる。

ほら、ウチって見るからにバカじゃん？

中学ん時も大体こんな感じだったんだけどさ、あん時は空っぽだったっつーか、なんつーか…

勉強とかスポーツとかなんも取り柄がなくてマジで辛い時期があったわけ。友達もほぼいなかったし。

自分の生きてる意味とかないんじゃないかって本気で考えてた時期だったんよねー。

けどそんな時に出会ったのが君。

まぁ出会ったっつっても、君が練習してるとこをウチが一方的に見てただけなんだけど。

んで、ウチの視線に気づいた君が一回キャッチボールに誘ってくれたんだよね。

慰めるために誘ったわけじゃないと思うんだけどさ、でもあれでなんとなく気が楽になった。

どうしてって、んーと、なんつーかな…

あん時は君が運動神経悪いウチにも取りやすい球投げてくれたし、なんかそれでウチの存在が認められたー、みたいな…

あはは、なんかうまく言葉にできないや。ごめん、ウチ馬鹿だからさ。

まぁそれからも君の練習風景はずっと見てたわけだけど…

なんか一生懸命野球やってる君が眩しく見えたっつーか、それ見てたら自分もあんな風に一生懸命できること探さないとなーって思えたんだ。

うん、見つかったよ。ウチ、こんなんだけど一応写真部なんだ。ほら、一枚パシャっと。

君みたいな一生懸命頑張ってる人の姿を目に見える形で残せたらなーって思って最終的に行き着いたのが写真部ってわけ。

そそ、こないだの県大会の決勝の、広報の新聞に載ってた君の写真、あれウチが撮ったんだー。カッコよく撮れてるっしょ？

ん？……あぁ、見てたよ。まぁ部活もあって、たまにしか君が練習してるとこ見れてないけど。

ま、よーするに、昔ウチのこと勇気づけてくれてありがとうってこと！

え？……お、いいよ。キャッチボールなんてあん時以来だね。やろやろ。

ふーん…なんとなくそんなこともあった気がする、か。

たかだか数年前のことじゃん。もうちょっと思い出してくれてもいいんじゃない？ま、いいけどさ。

つーか、君も今じゃ校内一の有名人かぁ。

「代打の切り札」なんて大層な肩書きで呼ばれちゃってさ。

君自身はどう？中学ん時からなんか変わった？

あはは。そっか、そうだよねー、ウチから見てもそんな変わった感じないし。

あ、そうだ。一つ聞いていい？……君ってどんなタイプの女の子が好み？

えー、ほんとに？少しくらいは興味あるっしょ。君も年ごろの男の子なんだからさー。

あー、これは逆にチャンスか…？よし、勇気出して言っちゃえ、あたし！

え？あ、うん！もう一個だけいい？

その、実はウチ、君のことが好k(学校のチャイム)

は？はあああっ⁉︎うそ、もう授業五分前⁉︎

え、あ、いや、大したことじゃないし！それじゃ、ウチもう戻るから！じゃあね！


最っっっ悪なんだけど…！何でこのタイミングでチャイムが鳴るわけ⁉︎

あー、もう！せっかくのチャンスだったのに！くそッ、今度は絶対成功させてやるし…！

・台本（ゆるボイ！）
ギャルな先輩の逆ナン
https://x.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎