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女仙人との修行
written by 松平蒼太郎
  • 人外 / モンスター
公開日2021年06月05日 18:00 更新日2021年06月05日 18:00
文字数
2478文字(約 8分16秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
指定なし
視聴者役柄
指定なし
場所
指定なし
本編
へー…まっさかこんなとこに温泉が湧いてるなんてね…

ちょうど風呂に入りたかったところだし、早速入らせてもらおうかな。

ん?…なんだ、こんなところに人がいるなんて珍しいね。

迷子か?いや、迷子でこんな山の頂上付近まで登ってくる奴はそうそういないか…

ん?…あぁ、そうだよ。仙人はわたしだけど。それがどうかした?

なに?弟子にして欲しい?

悪いけど、弟子を取る主義はないんでね。

遠路はるばるご苦労なことだが、無駄足だったようだね。

故郷まで送ってやるから、大人しく帰りな。

ふーん…生意気な小僧だね。

そういうことなら数秒だけ相手してあげるよ。

あぁ、人間の小僧なんぞ、指一本で倒せる。

さ、かかってきな。負けたら大人しく帰りな。

(デコピンで数メートル吹っ飛ばされる)

ほら、言わんこっちゃない。

さ、力の差を思い知ったんなら帰れ帰れ。

わたしはこれから温泉に入るので忙しいんだ。

子守りをしている暇はないんで。それじゃあね。

なんだ、まだ動けたの?人間にしては丈夫すぎるような…

いや、お前…少しばかりその身に神の力を宿しているみたいだね。

どーりで、普通の人間なら一撃で動けなくなるような攻撃をくらってもピンピンしてるわけだ。

ま、だからといってわたしをどうこうできるわけじゃないけど。

ふーん……許嫁が悪神に捕らえられてそれを助け出すための力が必要、か。

誰に紹介されてきたか知らないが、そんなのわたしの知ったことじゃないね。

いいからさっさと帰りな。

くだらん挑発だね。ガキの戯れ言を真に受けるほど、わたしも愚かじゃないよ。

ほー…そこまで言うなら仙術がどういうものか、体に直接教え込んでやろうじゃないか。



ふん…口ほどにもないね。あそこまで吹っ飛ばせば、流石に戻ってはこないだろう。

さて、そんなことより温泉だ。ちょうどいい湯加減だと嬉しいんだが。



(あくび)

んっ…誰だ?人が気持ちよく眠っている時に…

またお前か。ったく、しつこい男は女に嫌われるって親や先生から習わなかったのかい?

弟子にしてもらうまでは諦めない?

(ため息)

なぜわたしにそこまでこだわる?

仙人なら他にもいるだろう。まぁ数は少ないけど。

あの耳かき屋の主人か。あの男、余計なことを…

(深〜いため息)

しゃーない。そこまで言うなら一回だけチャンスをくれてやるよ。

今からデカイ一撃与えるから、それで持ち堪えられたらアンタのことを認めてやってもいい。

けどダメだったら今回は縁がなかったと思って諦めな。

準備はいいかい?それじゃあ行くよ…!

(爆音)

…驚いたね。向こうの山までぶっ飛ばすつもりが、数メートルしか吹っ飛ばせなかったなんてね…

はぁ…仕方ない。ま、しばらくここにいることは認めてあげる。

は?いや、弟子にするなんて一言も言ってないから。

気が向いたら教えるかもしれないってこと。変な期待は持たない方がいいよ。



ん?なんだい?……普段の日常生活で仙術を使ってる様子がない?

なんだ、そんなこともわからないんじゃ、仙術が使えるようになるのは一生無理だね。

そういうわけだから、さっさと帰ることをオススメするよ。

さぁね。それくらい自分で感じ取れなきゃ、仙術を使えるようにはなれないよ。

まだ諦めないって言うんならもっと精進しな。まぁ期待はしてないけど。



今のはどうやったって、口で教えても何もわかんないし、身につかないだろう?

ま、今わたしが何したのか分かったのだけは褒めてやってもいい。

そ、仙術を使ってお湯を沸かしたんだ。

ふつうに火を使うより、その辺に漂ってる目に見えない自然エネルギーを使えば、こうやってお湯でも何でも沸かせるってわけ。

おっと、喋りすぎたね。あとはまぁ自分で考えな。

自然エネルギーの使い方は口で教えられるもんじゃないからね。

ヒントくらいよこせ?このガキ……

はぁ……ったく、ヒントは使おうと思えば誰でも使えるのが仙術。これだけは覚えときな。


ふーん…なんだ、お湯くらいは沸かせるようになったんだね。

じゃあそれでわたしのお茶入れな。頼んだよ。

意外と美味いお茶入れれるんだね。

ちょっとみくびってたけどやるね、小僧。

村でそういう作法を叩き込まれた?

あっそ。お客様を迎える時に必要な作法とかそんなんだろう?大変なこった。

ほら、飲み終えた湯呑み洗っときな。

仙術、使えるもんなら使って洗ってみな。



日常生活を送る範囲内での仙術はそれなりに体得してきたみたいだね。

そろそろ戦闘用の仙術とやらを教えてやろうか。

いや、アンタを弟子と認めたわけじゃないよ。ただの気まぐれ。変な勘違いされると困るね。

口の減らないガキだね…!スパルタコースでいくけど、いいね?



はぁ…飽きた。よし、今日はここまで。帰るよ。

あと一本だけ?やだよ、なんでそこまでアンタに付き合わなくちゃいけないんだい?

はいはい、わかったわかった。

そんじゃ、なんかテキトーに一撃放ってみ?わたしはこっから一歩も動かないから。

(爆音)

へぇ…なんだ、意外とやるじゃないか。

あんだけボコられといて、よくあんなデカイやつ出せたね。

ふふ…あははっ!そうそう、わかってるじゃないか!

仙術ってのはつまりそういうこと。自然エネルギーを取り込み、使用する。

つまり自然と一体化するってことだ。

疲れてようが怪我してようが関係ない。その感覚さえわかっていればいつでも使える。それが仙術だ。

ま、その感覚がわかったなら、あとは全部オマケみたいなもんさ。

明日からはもうちょい訓練のハードルを上げていこうかね。

せいぜいくたばんないように、今のうちに休んどきな。

あ、風呂沸かすのはいつも通り頼んだよ。



アンタは人の期待を裏切んのが得意だねぇ。

いや、こんなに上達が速いとは思わなかったからさ。

ていうか、仙術を体得できるとすら思ってなかったし。

わたしから言わせればまだまだだけど、このまま伸びていけば化けるかもね、アンタ。

はっ!いつかはわたしをぶっ倒すなんて、調子に乗んな、ガキ。

そういうことはわたしに傷一つ付けられるようになってから言うんだね、この未熟者。

今度はあの岩全部持ち上げてきな。ほら、行った行った!

ふふ…面白いじゃないか。

こりゃあ、鍛えがいもあるってもんだよ。

ひさびさに退屈せずに済みそうだ。

せいぜい、わたしを飽きさせないでくれよ?
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
女仙人との修行
https://x.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎
ライター情報
マツダイラソウタロウ
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