（公園のブランコに座っているお兄さんに声をかけます）
お隣、よろしいですか？　……ありがとうございます。
……お兄さんはどうしてここに？　……「ブランコに乗りに」、なるほど……それは良いですね。実は私もここにはブランコに乗りに来たんです。

……お兄さんは、お兄さんが小学生だった頃のことを覚えてますか？　……そうなんですね、覚えていることは覚えているというのは私も同じです。
……記憶が美化（びか）されていることも多いんですか？　……いえ、美化の意味はわかりますよ？　本を読むのは好きなんです。
みんないつかは綺麗になっちゃうんですね。

……お兄さん。ここで会ったのも何かの縁なので、私と鬼ごっこしませんか？　小学生と全力で鬼ごっこ……いつの間にか鬼がおまわりさんになってそうですね。……「まだ地獄の底にタッチしたくない」……なら仕方ありませんね、やめておきましょう。

……えい。……えいっ。
……いえ、鬼ごっこができないので、ひとりで靴飛ばしを始めたんですが。……え？　飛ばした靴はもちろん取りに行きますけど……靴下が汚れるから取りに行ってくれるんですか？　お兄さんは優しいんですね。私が両方の靴を飛ばしたばっかりに……。

（遠くまで靴を取りに行っているので、それだけ間が必要だと思います。足音があってもいいかもしれません）
……ありがとうございます。お兄さんにはお礼に、靴を履かせながら私の可愛い膝小僧を眺める権利を差し上げます。……ご不満ですか？　それなら、お兄さんのことは、これからお兄ちゃんと呼ぶように……ご不満なんですね？

でも履かせてはくれるんですね。……「靴は小さくて可愛い」？　それを履いている足も小さくて可愛いですか？
……「ちいさきものはみなうつくし」？　美しいんですか……？　……可愛いっていう意味なんですね？　中学校で習うかもしれないんですか……習ったときに私はお兄さんのことを思い出すんでしょうか。

……なでなで。……！　……怒りましたか？　……そうですか、驚いただけなんですね。私も驚きました。……お礼はこれで良いんですか。でしたら、もう一度……なでなで。

（「ふぇ？」は「ぇ？」でも、「え？」でも良いです）
……もう帰っちゃうんですか？　……ふぇ？　ジュースをおごってくれるんですか？　じゃあ、ごちそうになります。

（自販機まで一緒に歩きます。コールはコーラのことです。コーラでも良さそうであれば、コーラに変えていただいても構いません）
あの、私、コールが飲んでみたくて。炭酸は飲んだことないんですよ。だから飲めるかわからなくて、飲めなかったときに捨てるわけにもいかないので買ったこともなくて……。
……飲めなかったときはお兄さんが飲んでくれるんですか？　じゃあ、コールにします！

（自販機にお金を入れる音やボタンを押す音、買ったジュースが落ちた音があっても良いです）
……ありがとうございます。これがコール……すごいです、フタを開けたらぷしゅって音がしました！

（ごくごくはジュースを飲む音です。喉を鳴らすのでなくても、飲んでいる感じが伝われば良いです）
いただきます……ごく、ごくっ……。っ、く、口のなかと喉がしゅわしゅわします……すごいです……ごく、ごく……。
……？　お兄さんは買わないんですか……？　……私のコール次第で他のジュースを買うかどうかを決めるんですね。

……お兄さん、大変です。コールは美味しいんですが、炭酸がきつすぎてぜんぶ飲めなさそうです。……ですよね！　きつめだと思いました！　これよりゆるめの炭酸もあるんですね。

……はいっ、では残りをよろしくお願いします……ごちそうさまでした。……けぷっ。……！　今のは聞かなかったことにしてください。

……お兄さんはすごいですね。そんなにきつい炭酸を平気な顔で……。間接キス……あっ、むせました。さすがのお兄さんでもコールの炭酸はきつかったんですね。
……でも、ぜんぶ飲めたのはやっぱりすごいです。

……短い間でしたが、コールも美味しかったですし、お兄さんと話せて楽しかったです。またご縁があればお会いしましょうね。
会えなかったとしても、コールを飲むときに私のことを思い出してもらえると嬉しいですよ？

・台本（ゆるボイ！）
小学生にジュースを奢ったら思い出になった
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・台本制作者
白上