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異世界で出会ったヤンデレな女騎士が、乱心してしまう
written by 犬アキラ
  • ファンタジー
  • ヤンデレ
公開日2021年06月05日 18:00 更新日2021年06月05日 18:00
文字数
4058文字(約 13分32秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
女騎士
視聴者役柄
指定なし
場所
指定なし
あらすじ
あなたは、なぜか異世界に飛ばれさてしまった普通の男の子。
そこで出会った、女騎士や仲間たちと共に魔王を倒し、
見事、彼女たちの国に平和をもたらす事ができました。
これからは、この平和を守っていけばいい。
たったそれだけの事だったはずなのですが…
本編
おーい。今帰ったぞ!

ああ、ただいま。
予定より、遅くなってしまったな。

すまない。寂(さび)しかったか…?ふふっ。

ああ…
魔王を倒したとはいえ、魔物(まもの)は、まだ少し残っているな。

まぁ、でも、それも時間の問題だ。

もう、あと1回遠征(えんせい)すれば、この国にも、完全な平和が訪れるだろう。

いや、この程度、お前たちの手を借りるまでもない。
私ひとりで事足(ことた)りる。

それに、お前は、頭はいいが、剣の腕はからっきしだ。
連れて行ったら、かえって危ないだろう。

僧侶(そうりょ)と盗賊(とうぞく)は、国の復興(ふっこう)で忙しそうだし、
魔法使いも、あの香水(こうすい)の匂(にお)いがきつくてな。

レモンの匂いだと思うが…私は、ああいうのは、あんまり好かん。

まぁ、お前は、しっかりと留守(るす)を守っていてくれれば、それでいいさ。

ん、腕?

ああ、少し強い魔物がいてな。不覚(ふかく)をとった。

いや、こんなものはかすり傷だ。ツバでもつけておけば…

お、おい、何するんだ…

こ、この程度、治療(ちりょう)なんかいらん!

ば、バカ!私は騎士(きし)だぞ!!

お、お姫様だっこなんかするなぁ~~っ!!

降ろせ~~~っ!!

(少し間を空ける)

はぁ…はぁ…

貴様(きさま)…私は、魔王を倒した勇者で、この国の“英雄”だぞ…!

それを、このような恥辱(ちじょく)…

このまま、生(い)き恥(はじ)をさらしてはおけん…!

くっ…殺せ…!!

…包帯(ほうたい)がずれるから動くな…?

…す、すまん。

…ありがとう。

お前には、苦労をかける…


…なぁ。少し、外に出ないか。

…ちょっと、話がしたい気分なんだ。

(少し間を空ける)

…この丘は、いい場所だな。

私たちの活気にあふれた街が、一望(いちぼう)できる。

これが、私たちが作り上げた平和だ。

お前も、胸を張っていいんだぞ?


……思えば、ここまでいろいろあったな。

私が、“異世界 ”とかいう所から突然ここに降ってきたお前を拾ってから、
もう、どれくらい経(た)っただろうな。

最初は驚いたよ。

身に着けているものも、雰囲気(ふんいき)も、全然、我々とは違ったからな。

あの時は、お前のことを魔物の類(たぐい)かと思って、斬りかかってしまったな。

ははは、すまなかった。

でも、…あの時お前を拾って、私の家に置くという決断をして、本当に良かった。

お前の持つ、数々の異世界の知識がなければ、
魔王の城を攻略することはできなかっただろう。

それに、お前の作る「かれー」とかいう料理…。

あんなにおいしいものを食べたのは、生まれて初めてだ。

毎日でも食べたいところだが、この国では香辛料(こうしんりょう)は貴重(きちょう)だからな。
そうそう手に入らないのが悲しいところだ…

お前のいた世界では、好きな時に食べられるんだろう?
ふふ、うらやましいことだ。

それに…その…お前だけだ。その…私を…
さっきみたいに…女扱いするのは。

私は、最強とか言われているが、…目つきは怖いし、腹筋は割れてるし、
稽古(けいこ)をつけてやろうとすれば、男は逃げ出すし…散々な扱いだ。

でも、お前は、違う世界から来たから、何の先入観もなく、私を見てくれた。

私が、どのような立場なのかを知っても、変わらず、失礼に、無遠慮(ぶえんりょ)に…

そして…いつでも、私の身を案(あん)じてくれた…

(少し間を空ける)

な、なぁ…!

その…!

大事な話がある…!

次の遠征が終わって、この国が平和になったら…

その、私と…!



……ん?

レモンの、香り……

魔法使いの…香水の匂い…

お前…

私が遠征に行ってる間…

どこで何をしていた…?

……何をしていたと言っている!!

答えろ!!!

(少し間を空ける)

魔法使いの、家に行っていた…?

どうしてだ…?

私は、しっかり留守を守るように言ったはずだ…

いったい、魔法使いの家で何をしていた…!?

実験の手伝いをしていただけ…?

嘘をつくな…!

手伝っていただけで、こんなに匂いがつくものか!!

どうせ私がいないのをいい事に、ふたりで
くんずほぐれつしていたんだろう…!?

ずっと前からそうだ…!

いっつも、魔法使いは、お前に色目(いろめ)を使って…!

ちょっと美人だからって!
ちょっと胸が大きいからって!

意味もなくお前に近づいて、触ったり、わざと胸元見せたりして…!

お前はお前で、だらしなく鼻の下伸ばして!

まんざらでもないような顔して…!


…いいか!お前は私が拾ったんだ…!

私がお前を見つけたんだ!魔法使いじゃない!

お前は私のものだ!誰にも渡さない…!


(少し間を空ける)


…俺は別に、誰のものでもない…?

フフッ…

フフフッ…

そうか…

お前も、そうやって、私を切り捨てるんだな…

期待させるだけ、期待させて、好き勝手に、ボロ雑巾(ぞうきん)みたいに…

分かったよ。

それなら、私も好き勝手やらせてもらう。


ブスッ!!(針を刺すSE)


どうだ…動けまい。

盗賊からもらった、体をマヒさせる針だ。

下手に動こうとすれば、手足を一本ずつ斬っていく…

“英雄”の命令だ…逆らうな…!

いい子だ…
ふふっ…このまま、お前を襲って、既成事実(きせいじじつ)を作ってやる…

すまんな…
…お前には…できれば、こんなことはしたくなかった…

でもな…
お前は、私のものなんだ…
お前だけは、誰にも渡すわけにはいかないんだ…

(少し間を空ける)

その考え方は、おかしい…?

…ああ、そうだよ…!(怒った声で)

今さら気づいたのか…?

私はな、最初っからおかしいんだ…!

全部お前のせいだ!せっかく、色んなことに耐えてきたのに、
お前のせいで、私は歯止(はど)めがきかなくなった!

…私が、何を言っているのか分からないだろう…

お前、鈍感(どんかん)だもんな。私のことなんか、何一つ分かっちゃいないんだ。


…お前は、一回も疑問に思ったことはなかったのか?

王家(おうけ)の生まれである私が、勇者である私が、
なぜこんな街外れの、丘の上の小さな小屋に追いやられているのか。

それはな、私が皆(みな)に疎(うと)まれているからだ。

この国では、王位(おうい)は男が継承(けいしょう)することになっている。

私は、女として生まれた瞬間から、邪魔な存在だったんだ。

ほどなくして弟が生まれ、いよいよ私の存在価値はなくなった。

だから、私は勇者として祭り上げられた…。

ああそうだ!!私なら、魔王と相打ちになって、死んでもいいからだ!!(怒鳴(どな)る)

集まってくれた仲間たちだって、しょせんは報奨金(ほうしょうきん)のために集まった、
金目当ての連中に過ぎない…!

本当に私の身を案じてくれたのは、いつだって、お前ひとりだけだ!

笑えるだろう…?

何が、英雄だ…! 何が勇者だ…!

私は、この国にとって、都合のいい道具でしかないんだ…!


それに、私は、その道具としての使命さえ、結局、何も果たしていない…!

魔王を倒して、飼いならしたのは、盗賊の功績(こうせき)だ!

魔王の城を攻略したのは、お前の功績だ…!

みんな知っている!みんな陰では言っている!

私なんて、別にいなくてもよかったんじゃないかって…!!


…お前たちは、これからも必要とされる存在だ。

その知識で、魔法で、癒(いや)しの力で。

平和になった後も、ずっとみんなの役に立てる。

でも、私は…次の遠征で残った雑魚を倒したら、本当に必要のない存在になる…!

お前に分かるか…?私が、どんな思いで…!


あっ…!

貴様…!動くなと言ったはずだ…!

…逆らったな?(低い声で)

そうか。いいんだな。なら、お望み通り…(震える声で)

まずは、足から斬り落としてやる…。(震える声で)

(少し間を空ける)

カラカラカラン!(剣を落とすSE)

……ううっ…うっ…うわぁぁぁ…!(泣く)

でき、ない…

できる、わけない…!

当たり前だ…

愛してるんだから…

お前のことが、何よりも大切なんだから…!

傷つけることなんて、できるわけないよ…!

(少し間を空ける)

…急に抱きしめて、すまん。

…別に、良かったんだ…。誰に疎まれても。

私には、騎士としての誇りがある。

私の犠牲で、みんなが幸せになってくれるなら、それでよかったんだ。

でも、お前のせいで…

お前が、私に優しくしたせいで…

欲が、出た。

お前だけは、自分のものにしないと、気が済まなくなった…!

お前が、私の中で殺してきた感情を…鬱屈(うっくつ)を、呼び覚ました…!

お前さえ現れなければ、こんな気持ちを知ることもなかった…!

どうしてだ!!いいじゃないか!!私は勇者だ…!

いいじゃないか…
自分の欲しいものが、ひとつくらい手に入ったって…(泣きそうな声で)

ひとつしかいらないんだ…ひとつだけでいいんだ…

そんなに、欲ばりか…?そんなに、許されないか…?

なあ、お願いだ…!

私を…私だけを、愛してくれ…(耳元で囁く)

お前が私を愛してくれれば…必要としてくれれば…

私は、まだ存在していいんだって…そう思えるから…!

どんな生き恥をさらしても、お前のためだけに、生きていけるから…!

(少し間を空ける)

…そうか。

お前は、魔法使いのことが、本気で好きなんだな。

うん。分かってる。

お前は、そんな中途半端なことはしないもんな。

いいんだ。そういうところに、私は惚れたんだから。

なんだか、清々(すがすが)しい気分だ。

ありがとう。決意が固まったよ。

騎士として、皆の為にじゃなく、ひとりの女として、自分の為に生きる決意がな。

どういうことかって?

なぁに、簡単なことさ。


私はこれから、この国を滅(ほろ)ぼす…(耳元で囁く)

私を使い捨てた、城の連中も、民(たみ)たちも、お前の愛した魔法使いも、
ひとつ残らず、な。

この世界に私しかいなくなれば、お前も私を愛さざるを得ないだろう?
だって、私しかいないんだから。

そうやって、私は、ひとりの女として、
お前を手に入れるという、たったひとつの願いを果たすんだ。

みんな、私のおかげで色んな願いを叶えたんだ。
私だって、ひとつくらい自分の願いを叶えたっていいだろう?

すっかりふ抜けた魔王も、さぞ驚くことだろうな。

敗北したのに、自分の宿願(しゅくがん)が果たされることになろうとは。

あはははは!!皮肉なものだ!!


…お前は、この丘の上から見ているといい。

新しい世界を創造する英雄の姿を、その目でしっかりとな。

全部終わったら、もう一度、お前に問おう。

私とお前のふたりだけしかいなくなった世界で、
お前が誰を愛し、誰と共に生きていくのか。

では、また後でな。

心配するな、必ず迎えに来る。

私の、…私だけの、“英雄”のことをな。
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
異世界で出会ったヤンデレな女騎士が、乱心してしまう
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
犬アキラ
ライター情報
 犬アキラと申します。
 pixivにてフリー台本を書かせて頂いております。
 ヤンデレ、ボクっ娘、ダウナーなどを主に書いております。
 よろしくお願い致します。
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