タイトル通りです。

かなり長い分、難易度が高いですが音声化もいくつもされた一品です。

ねえねえ。

聞こえてるー？

さっきからノックしてるのにどうして返事くれないのー？

私、心配になっちゃってさ。

だって、君……もう3日前の朝から、家から出てないじゃない。

何回も訪問しちゃって、びっくりさせてるのはよくわかってるつもりだけど。

ほんとに心配なの。

私すごくすごーく不安で。

夜も眠れなくて。

君が仕事について悩んでるの、私知ってるよ。

それと君は覚えていないかもしれないけど、職場でボソっと家の中で変な物音がして寝付けない事でも悩んでいるの……聞いてたよ。

責任感があるのも大切だけど、たまには息抜きしようよ。

職場でみた時、顔がげっそりしてて眠れてなかったよね？

相談したい事があるなら、できれば私にしてほしいけど。

私以外にも、病院とかご家族の方に早めに話した方がいいよ。

相手にもスケジュールがあるからね。

計画的に、早めの行動が大切なんだから。なんでかと言ったら、常日頃私がそうやってるからね。

じゃないと取り返しのつかない事になっちゃうから。

なんでそんなに君の事気にするのかって思ってるでしょ？

もう……言わせないでよ。

……ふう。わかった。今日はもう帰るよ。本当に無理しないでね。

早めの相談って本当に大事だからね。

私なら連絡してくれたら、いつでも力になるよ。

深夜や早朝でも構わないからさ。

だって、そうなるくらい私に頼りたかったって事じゃない。

嬉しくて……って、恥ずかしい事言ってしまった。

ふふ。

じゃあね。

(ヒールの靴音。数秒間)

……あーーーーーーー！

今、安心して冷蔵庫から飲み物出して、玄関の覗き穴から外の様子確認しようとしてたでしょ。

くんくん……くんくん。

近い……近い。君の匂いがしてきた。

靴の音はね、前にここで録った物なのよね。

数週間前と今日の靴の音くらいわかってほしかったなあって、ちょっぴり残念。

思ったの、私。

君が家の中にいるのは知ってたけど。

君をもっと近くに感じたいの。体温、息遣い、むせかえるような汗の匂い。

もっと。もっとね。

それに、私の事をかなり意識してるって事も知ってるよ。

恋わずらいから、不眠気味だったなんてなんだか嬉しい。

早め早めに言ってもらえたら……もうっ、かわいいんだから。

ふふ、君と私。気持ちが通じ合ってたのね。

あの女とかベッドの中でブツブツ言ってて、とても可愛かった。

ふふふ。

そう、仕掛けちゃった、盗聴器。

君の事、全部知りたかったから……ついやっちゃった。

でも、好きだから仕方ないよね。

だから、この扉を開けてもっと仲良くしましょう。

おーい。聞こえてるよねー？

早く開けて開けて開けて開けて開けて！！！！

そっかぁー。開けてくれないかー。

君の事、ずーーーっと待ってたのに。

君の事、ずーーーっと聞き耳立ててたのに。

でも、君はさ。ここをしのげば、録音したデータを警察に持って行って。

絶対に私を警察に捕まえてもらおうって。

だから、今が正念場だって。

そう思ってるよね、きっと。

……ところでさ。君。今、身体動かせる？

そうだよね。驚いてるよね。だって、身体がしびれちゃってうまく移動もできないだろうから。

……そもそもさ。大事な所、気付いてないよね。

盗聴器を設置した人間が、それ以外全く何も手を付けてない……って事。

そんな都合のいい話、あるわけないよね。

ねえ。覚えてる？

微妙に部屋の様子、変わってなかった？

玄関の靴の配置、トイレットペーパーが置かれた位置。

スマホの充電器がベッドからテーブルに移ったとか、冷蔵庫の棚の一段目奥に入ってるビールが、三段目の手前にあるとかさ。

ね、変わってたでしょ。

多分寝不足でろくに部屋も見てなかったから、居間やキッチンが綺麗になってる事も知らないんでしょ。

はあ……さびしいな。トイレだって頑張ってピカピカにしたのにー。

君ね、もう少し部屋の掃除はやっておいた方がいいよ。時間がないなら、片付ける場所を日に分けて少しずつやっていったらね。

少ない労力できちんとなるの。

まあ、君がだらしなくても私に任せてもらったら、問題ないんだけど。

アレよアレ。先を見越しての行動って奴ね。

……あー、イモムシみたいになんとかスマホの所まで行って、さっきから警察に電話しようとしてたのね。でも、その携帯からだとどこもかからないよ。

通話用のアプリを使ってもね。

まあ、君に投与してる薬剤の効果も効いてるだろうから、ほとんど移動なんてできないけどねー。

……なんていうか、君。かわいそうなくらい察しが悪いのね。まあ、判断力が落ちるように準備を怠ってなかったのは私だけどさ。

(ドアが開く音。そして、鍵を閉める音)

えー。君、察しが悪すぎないー？そこまで鈍いの？

でも、そんなところもだいすき！

だってさ、盗聴までできて部屋を物色してて、部屋の鍵なんて持ってない……なんて事あるわけないよねーー？

うん、とっくの昔に君の家の合い鍵を作ってたよ。君が知らない間に……君のそばで一緒に朝を過ごしたじゃない！

……えへへ。今思い出しても、すごく恥ずかしい。めっちゃはずかしいよ！！

君の目から見えないかもだけど、今顔真っ赤なんだよ。。ふーー、あついー。

私、今まで男の人の一人部屋に上がった事なくて。君が初めてだったんだよ。

それに、ここまで誰かを好きになった事がなくて……君の事、絶対絶対離したくなかったの。

で、いろいろ考えたんだ。っと、かばんから包丁を出してっと。

あ、気にしないで。

……やばい、今君のそばに来たけどさー。至近距離。かっこよすぎる。ドキドキする。

あー話の続きね。それでね、魅力的でかっこいい君の事だから、自然と他の女が寄ってきちゃうんだろうなって。

どうにかして、閉じ込めなきゃって。

色々考えたけど、この選択がベストだなって。

2人きりで、すきって気持ちを交換していけたらなって。

え、キス？

仕事一筋で恋愛してきてないから、わかんないよ！

でも、君とゆっくりそういう関係になれたらって思うよ。

そして、ゆくゆくはお嫁さん……にやにやが止まらない。君の事になると、どうしてもこう幸せな気持ちでいっぱいになっちゃうんだ。

だからね、ゆっくりゆっくり……私ができる事を精一杯頑張ったの。準備に準備を重ねてね。君と幸せになる為に。

人を心底愛するってすごいよね。どんな事でもできちゃうんだから。君がいなかったら、ここまでできなかったよ。

君が私にとって、運命の人だったんだ。……きゃー、言っちゃった。自分で言ってても、照れちゃうな。

うんうん、また後でちゃんと話すけど、会社にもご両親にも、君の友人やお役所関係とかそういった諸々面倒な事も、全部終わってるから。

さっき、閉じ込めるのがベストって言ったけど、君がお仕事や家族の問題で悩んでるのを知ってたからね。

もう君は心配しなくていいよ。外に出ちゃうと、君がまた傷ついちゃう。ずっと見てて、それがよくわかったの。

2度と不安にならなくていいし、悩まなくてもいい。楽になっていいんだよ。

私がそばにいるし、私がなんとでもするからさ。

だから、ずっとずーーーーーーーっと一緒にいよ。

すき。すき。だーーいすき。

え、その包丁はって聞きたそうだね？

なんだろうねー。何に使うんだろうねー。正解はね。

次の準備に使うんだ。

大丈夫、君は何もなーんにも考えなくていいからね。

大丈夫。二人で幸せになろ。

だいすきだよ。

(了)

・台本（ゆるボイ！）
職場のヤンデレお姉さんが体調を崩したあなたを心配してお見舞いに来たが……
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
はれのそら