ひょんなことから「古代エジプト」に転生してしまった聴き手！
そこで出会ったファラオ「マアト」と共に激動の時代を生き、血生臭くもラブラブな純愛生活を送るシチュエーションボイス台本！！

※ヒロインが多重人格の作品になっているので、演じ分けが必要になります。

●WEEK１
【場所：人目につかない路地】

しっかりと時間通りに来ているな、殊勝（しゅしょう）な心掛けだ
ファラオの謁見（えっけん）に遅刻するなど、不敬この上ないことだからな

……な～んてね。はぁ～～、今日も王宮の仕事疲れたよ
毎日毎日書類の山に目を通して、サインしての繰り返しだもん

あれ、別に私がする必要ないと思うんだけどなぁ
どうせ政治は他の神官達があーだーこーだやってるんだから

民が幸せに生きるためなら、私も嬉しいことだけど……
今年はちょっとだけ不作で、税金が高くなっちゃってさ

嘆願書に目を通した後すぐに増税を承認するとか、もう辛くて
いよいよ胃に穴が開きそうだよ……

別に朝食なんてパンだけでも良いのに、わざわざ豪華にしてくるし
ごはんは一流のシェフが作ってるから、味は美味しいけど……
増税で苦しんでる民のことを考えたら、食欲なんてわかないよ

と、言うわけでさ。私と民が美味しくご飯を食べられるように、
今日もゲンダイニホンの文化を教えてよ

本当は、我が国のことは王宮だけで解決するべきだけど……
民が苦しまずに済む方法があるなら、私は他国にだろうと教えを乞うよ

……うん。そうだね。神であるファラオが他国の人間に教えを乞うなんて、
そんなことが神官達にバレたら超大目玉

そもそも、こうやって２人で密会してる時点でダメなんだけどね
どう言い訳したって、絶対ヒクソスだと勘違いされちゃうだろうし

最悪、そのまま処刑されちゃうかも
……あはは、冗談冗談。……いや、冗談ではないんだけど
大丈夫だよ。私の名に懸けて、何の罪もない人間を裁かせたりしないから

神官のほとんどはもう年を取り過ぎちゃってて、保守的なんだよ
新しい技術や思想が入ってくることで、地位が脅かされるのが怖いんだろうね

もちろん、私はこの国のファラオだから、
君臨する以上それ相応の振る舞いを求められるのはわかるよ

でもね、――民無くして王は在りえない
王宮に居る人間だけが豊かに暮らしていても、何の意味もない

民の生活を変えるためには、多少無様なことだってするべきだと思うんだ
……あ、私は異国人と喋ることが無様だとは思ってないけどね！
王宮内の常識では、そういう風に思われる、って意味！

だって、誰もが好きな時に野菜や肉を買える国なんて、本当にすごいよ
民が好きな服を着て、毎日身を清め、清潔な寝具で寝ることができる……

我が国を、少しでもゲンダイニホンに近づけたい
私が生きる間には無理だとしても……いつか民の生活を少しでも豊かにしたい

だから、もっと教えて。私にできることなら何でもするから
……あ、でもあんまりにも不敬なお願いは、叶えられないよ

【聴き手「もちろん、教えられる範囲なら」と言う想定】

あはは、ありがとう。今日もよろしくね、先生？


●WEEK２
【場所：人目につかない路地】

今日も時間通りで結構。褒めて遣わすぞ
あはは、毎週毎週来てくれて、ありがとう

あー、そうだね。今日も山のような書類を処理してきたよ

会うたびに愚痴を聞かせてるけど、正直言うともう慣れてるんだよね
小さい頃から毎日毎日書類と睨めっこしてれば、嫌でも慣れるよ
……慣れなきゃ駄目だった、って言う方が近いんだけどさ

【聴き手「どんないつからファラオをしているのか」と言う想定】

先代ファラオ――父が暗殺されてから、ずっとかな
王位継承権を持ってるのも、父の実子だったのも私しか居なかったから、
自動的に私がファラオに即位した、って感じ

【聴き手「軽率は発言だった」と謝罪する想定】

……あはは、ゲンダイニホンは本当に良い国なんだね
ファラオや王位継承権を持った人間が暗殺されるなんて、良くあることだよ

私がファラオになる前も、継承権を持った他の人間は全員始末されたし
そうじゃなきゃ、私がファラオに即位しているなんてありえない話だもん

…………何で私は始末されなかったのか、って思ったでしょ？
いいよ、隠さなくても。ここまで話したついでだし、全部話してあげる

私はね、生まれつき体のあちこちを呪術で弄られてるんだ
そのお陰で、強いの。たぶん、エジプト国内で一番ね

その力で、暗殺してこようとする人間を返り討ちにした
何度も、何度も何度も何度も……二度と起き上がらなくなるまで、徹底的に

……本当はね、返り討ちになんてしたくなかったんだ
だって、ファラオに成ったって、何にも良いこと無いってわかってたから

親族も居ない、立場の違いで同年代の子とも交流できない、
周りは権力争いで日夜（にちや）いがみ合ってる……

そんな環境で生きていくくらいなら、いっそ……ってね
あはは、本当にファラオ失格だよ。民に申し訳が立たない

…………。……今、私がファラオとして生きてるのは、私じゃない私のお陰

信じて貰えないかもしれないけど……私にはもう１人の私が居て……
そっちの私が、暗殺者を全員始末したの

私と違って、とっても優秀でね。私が決断できないことも即決できるし、
アヌビスの力も自在にコントロールできる……王の器を持ってる人なんだ

……でも、もう1人の私のやり方じゃ、多くの犠牲者が出る
だから、本当はやりたくないけど……民を守るために王様やってるんだ
疲れるよ。何度ほっぽり出しちゃいたいって思ったかわからない

今、ファラオとして私が有れるのは、キミのお陰
……キミに会えてなかったら、私はもうファラオじゃなかったかもしれない

私を1人の人間として話をしてくれる人が居るだけで、どれだけ救われるか
……ありがとう。ここに来てくれて。感謝しても、しきれないよ

前に言った風の言い方をするならさ、王は民無くしては在りえない
民は王無くしては在りえない。そして、王はキミ無くしては在りえないって感じかな

あ、あははっ、ちょっと恥ずかしい事言ったね、忘れて……！
でも、それくらいキミを大切に思ってるのは本心だよ

……私がキミを守るからさ、キミは私のことを守ってね

【SE：軍勢が歩く音】

――っ！　これは……、王宮直属の軍隊の足音……？！
もしかして……ヒクソスが国内に侵略してきた……？！

いや、でもそんな気配、最近は一度も――、

【軍勢の足音が止まり、ヒロインと聴き手の周囲で止まる】
【次より、ファラオとして引き締めた声で話す】

…………ネセル……。……これは、どういうことだ？
ファラオに刃を向けることがどういうことか、わかっているのだろうな

【神官（ネセル）「ファラオこそヒクソスと密会とはどういうことか」と言う想定】

……この者はヒクソスではない。我が国にも、私にも敵意は無い
東洋の島国から来訪した、ただの商業人だ

【神官「だとしても、密会した事実がある以上、審判をするのが道理」と言う想定】

……わかった。私がこの者と密会をしていたことは事実
そなたの言う通り、審判において罪を量ろう

だが。審判までの間、この者に少しでも危害を加えれば、私は私ではなくなる
それを肝に銘じて、移送しろ

【軍勢が聴き手を拘束し、移動を開始する】

…………心配しないで。すぐに助け出してあげるから。……ごめんね


●WEEK３
【場所：ヒロインの自室】
【”闇”と記載されている部分はヒロインの冷徹な裏人格が話す部分】

うぅ……ひぐっ……ぐすっ……うぇ……っ
もう、嫌だ……私に関わった人は……みんな居なくなっちゃう……

私の所為で、みんなが不幸になる……
……ぐすっ……。…………消えて無くなりたい……

【闇】なぜ我等に関わる人間が消えていくか、教えようか
欲望のままに、欲するモノを手元に置いておかないからだ

【闇】どんな手段を取ってでも、結果手元に有ればそれで良い
手足をもいででも、両目をくりぬいてでもな

そんな酷いこと、できないよ……

【闇】ならばあの者が、我等の前から消えるだけだ

【闇】……わかっているのではないか？　どうすれば良いのかなど
簡単なことだ。神官共を始末すれば良い
老害と成り下がった神官共には、常日頃から辟易（へきえき）としていただろうに

い、いやっ！　いやだ、もうこれ以上人を手にかけるのはやめて！
……嫌なの、自分のために誰かを傷つけるなんて……

約束したから……彼のことは絶対に救い出すよ
……でも、こうなった以上、もう一緒には居られない……
牢獄から助け出した後は……彼の国外逃亡の手助けをするよ

【闇】傲慢だな。我等は神と同格視されているが、所詮は人間だ
人の身でありながら、誰も彼をも救うなど、出来る筈もない

【闇】断言しよう。仮に牢獄から救出したとして、待っているのは破滅だ
あの者は神官共の追手を振りきれずに命を落とし、
我等はヒクソスを逃がしたとして王の座から引き摺り落とされる

【闇】民の信用を失った後では、神官共を始末したとして状況は好転しない
国家を乱すカーとして民に忌み嫌われ、追われ、やがて息絶える

【闇】何も選択しないということは、全てを捨てるに同義
腐敗した神官共だけが王宮に残り――、滅亡の引き金にさえなり得るだろう
民は飢え苦しみ、ヒクソスの手に落ち奴隷となる

じゃあ……っ！　じゃあ、どうすれば良いっていうのさ！

【闇】二度言わせるな。解は既に出ているはずだ

【闇】すぐに審判の日がやってくる。それまでに決断することだ
もしもそなたが決断できなかった時は、我が審判を下そう

【闇】……我がどのような審判を下すのかは、言うまでもないだろう？

…………。…………っ……………


●WEEK４
【場所：王宮内王座の間。聴き手は拘束され、神官が周囲に居る状態】
【素のヒロインのまま、ファラオとして凛とした声を出す】
【”融”と記載されている部分はヒロインと裏人格が混じった完全体の部分】

……これより、この者の審判を執り行う
神官ネセル。死の書、及び罪状をまとめたパピルスを

……この者は我が国を侵略し、民を脅かすヒクソスである
ファラオをかどわかし、傾国のための謀略（ぼうりゃく）を巡らせ、
我が国の民４２名を手にかけた

よって、ここに王宮を守護せし５名の神官の名の元に、死罪を求める
…………何か、申し開きはあるか？

【聴き手「マアトの判断に身を任せる」と言う想定】

…………そうか。……それは、罪状を否定しないということだな
…………。……我が国で起こることすべては、神々によって見守られている
罪人を裁くこの審判において、嘘偽りを告げることは赦されない

……私は、この者からゲンダイニホンという国の話を聞いた

ゲンダイニホンは素晴らしい国だ
聞けば、ほとんどの民が食事にありつき、清潔な寝具で眠りにつけるという

私は、我が国もそんな素晴らしい国にしたいと考え、
この者と密会をし、統治についての学びを得ていた

全ては、我が国の民全員を、幸せにしたいという願いのために

…………しかし、私の願いは打ち砕かれた。裏切りによって

マアト神の名の元に、審判を下す――、
――――無罪。この者の魂は、清く正しい

【神官「そんなバカな！　この者は――」と言う想定】

【融】黙れ。審判は終わってはいない
……今この場において、極刑に処するべき者は別に居る

【融】マアトの化身（けしん）であり、神である私を謀（たばか）り、
アアルに導かれるべき魂を、アメミットに喰われるよう仕向けた

【融】さらには、民のためではなく、自身の地位を守るために権力を利用した
……神官ネセル、そして協力者全員。もはや、天秤で量る必要も無い

【融】マアトの名の元に、審判を下す
――ムウト（死ね）。冥界での最後の旅路、楽しむが良い

【神官の約半分が、ヒロインによって惨殺される】

【融】……今までの私は甘かった。何も犠牲にせず、全てを救えると思っていた
だが、これからは違う。我が国を傾国に導く存在は、民であろうと始末する
【融】…………聞け。今貴様等の五体が泣き別れていないのは、
民のためを思い、良き統治をしようと心掛けているからだ

【融】権力に固執（こしつ）し、民を軽んじるようなことがあれば、審判を下す
……貴様等自身にだけではない。一族、恋人、友人
貴様等に関係するすべての人間の血を、ナイルへ捧げることになるだろう

【融】……もう１つ。この者を我の夫として迎え入れる

【融】異国の民を王宮に招き入れるなど、前例は無い
夫に王位を譲らず、私がファラオを続けるというのも、異例だ
異例による異例……反発も大きいだろう

【融】だが、私の願いを叶えるため――我が国の繁栄のため、必要な事だ

【融】５年……いや、３年。もしも我が国に繁栄の兆しが無ければ、
この者諸共、私を処刑するが良い。……安心しろ、その時には抵抗はしない
マアトの名に誓って、潔くアメミットに喰われることを約束しよう
【融】……ふふっ。存分に働いてもらうぞ？
統治の先生としても、――私の夫としても、ね

・台本（ゆるボイ！）
転生したら古代エジプトのファラオと結ばれることになった。
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
しおぱいたん