学生の頃住んでいた街に戻ってきたあなた。
偶然見かけたのは初恋のあの子。
互いに盛り上がってしまい気づいたら朝。
禁断の夜を過ごしてしまった男女の、
懐かしさと切なさが混じるお別れの会話。

おはよう。よく眠れた？
ふふっ、まさかキミとこんな風に朝を迎えるなんて…
なんか、大人の男の人になったね…そりゃそうか。

ていうか、この街に戻ってきてたんだね。中学のとき途中で引っ越しちゃったから、もう二度と会えないと思ってた…

私とキミ、両思いだったなんて…

ほら、みんながいじるからさ…
黒板に相合い傘描かれたり、席が隣になって冷やかされたり…
私たち、気づいたら全然喋れなくなっちゃったよね…
もしあのとき好きって伝えてたら、何か違ってたかな？

本当に、大好きだったんだよ。
おまじない、流行ってたじゃん？
消しゴムに名前書いて使い切るとか、名前の文字数だけシャー芯出してハート描くとかさ…ぜーんぶキミで試してた。叶わなかったけど。
あっ。今から叶えちゃう？付き合っちゃおっか、私たち。なーんてね、冗談。

えっ彼女いるの？
結婚もするつもりなんだ。
早く言ってよ…彼女いるならこんなことしてちゃダメじゃん。クズだなぁ。初恋の人が、こんなクズ男になってるなんて…悲しいよ。

まぁ、あの頃は両思いだったかもしれないけど、今は違うもんね。お互い大人になって、変わってるし。
懐かしくて、会えたのが嬉しくて、朝まで一緒に過ごしちゃったけど、大丈夫、誰にも言わないし。2人だけの秘密。初恋って大事な思い出じゃん？大事に大事に心の中にしまっとくよ。

私？私は今、夢があって、がむしゃらに頑張ってる。恋人なんて作ってる余裕ないって感じ。とっても充実してるよ。だから安心して。

やっぱり私とキミ、もう全く違う人生を歩いてるんだね…運命の人はキミじゃなかったんだ…あのころの私が知ったら、ガッカリするかな？誕生日も近いし、血液型も一緒だし、よく席隣になるし…ほら何かとさ、運命とか感じちゃってたんだよ。正直、昨日再会したときも、ちょっと運命かもって思っちゃった。違ったね。

さっそろそろお別れの時間だね。私、もう行かなきゃ…

……あのさ、最後に、もう一度だけ………
ううん。なんでもない。私にとってキミは、思い出の人だからね。これ以上は、歯止め効かなくなっちゃいそうだし。

え？また会う？わけないじゃん。もう二度と会わないよ。私、人のものに手出す趣味ないし。なんて今言っても遅いけど、ほら、昨日のはさ、知らなかったから…

だからさ、これでもう、バイバイだよ。
もう一度キミに会えて、こうやって一緒に過ごせて本当に幸せだった。一晩だけ、あの頃の夢が叶ったみたいだった。ありがとう。

どうかお元気で、幸せになってね。彼女さんのこと、大事にするんだよ？

さようなら。私の初恋の人。

・台本（ゆるボイ！）
初恋のキミとさよならする朝
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
華園ニナ