ある日、いつものように宅飲みをしているときに好きな人の話なり・・・

乾杯ー！
《グラスを合わせる、及び酒を飲む》
やっぱり、アンタと宅飲みしてるときが一番楽しいんだよね。
店で飲むのもいいけど、周りはうるさいし、羽目も外しきれない感じがするからさ。
その点アンタはただの友達だし、もし私が寝たらブランケットまでかけてくれるし、いつでも寝られるんだよね。
多分、アンタが私の好きな相手だったら、ちょっとでもちゃんとしてるように見せるんだろうけどね。
まぁ、気の置けない友達相手に変に気張る必要も無いって言うか、素の私でいられるって言うか。
そもそもアンタは彼氏でもないんだし、私の家に呼んでいること自体が信頼の表れみたいなものだけどね。

あ、そう言えば好きな人とは上手くいったの？
《視聴者の表情が変わる》
なんで？って顔してるね。
あのね、私がアンタのこと友達として何年見てきたと思ってるの？
アンタに好きな人がいること自体はかなり前から気づいてたよ。
私と一緒にいるときでもときどき上の空になってるときとかあったし。
アンタがなんかほかのこと考えてるな、ってことくらいは簡単に見破れるから。
そういうときは話しかけないようにしてたけど。
それで、結果を聞いてもいいの？
私がアンタに好きな人がいるって気づいてからもう結構時間が経ってるとも思うし。
《視聴者のセリフ》
告白すらしてない？
って、なにそれ、情けない話ね。
アンタが振られたら朝まで一緒に飲んで泣き言に付き合ってあげるし、告白が成功したらそのときは全力でお祝いしてあげるから、まずは告白くらいしてみなさいよ。
それくらいのこと友達の私がいくらでもしてあげるから。
それにアンタの片思いだったとしても、告白することでアンタの好きだって気持ちはちゃんと伝わるから。
多分だけど、アンタの気持ちを伝えないよりはずっといいよ。
って言っても、私も好きな人に告白できてないんだからこんなことアンタに言えないよね。
《視聴者の表情が変わる》
あれ？どうしてそんなに驚いた顔してるの？
《視聴者のセリフ》
え？もしかして今の声に出てた？違うの、今のは忘れて。
私に好きな人がいるのは事実だけど、告白する気はないっていうか、絶対に実らない恋、みたいなやつだから。
諦めたいんだけど、なかなか諦めきれなくてグダグダと今まで引っ張ってしまっているというか。
《視聴者のセリフ》
誰？
ってそれはその、内緒だよ。
アンタには言えない。
そういうアンタこそ、私に誰が好きなのか言えるの？
《視聴者のセリフ》
へ？今、私が好きだって言ったの？
何言ってるの。
私たちは友達、とっても仲がいいだけの友達でしょ？
一緒にお酒を飲んだり、一緒に遊びに出かけたりはしたことはあるけど、一般的な恋人みたいに手を繋いだり、見つめ合ったりしたことはなかったでしょ？
それに好きな相手が寝てたりしたら何かしたいなって思ったりもするでしょ？
私が前に寝たフリしたときはアンタそんな素振り全く見せなかったじゃないか。
だから、今アンタが私に言ったことは嘘だ、絶対に嘘だ。
《視聴者のセリフ》
なんで寝たフリしたの？
ってそれは、その。
あぁもういいや、私はアンタのことが好きなの。
だから、寝たフリでもしてたら既成事実でも作れるんじゃないかって考えたりしたこともあったし、そうしたらそれを理由に半ば強引に彼女になったりすることもできるんじゃないかなって思ったりもしたの。
《視聴者が抱きしめる》
ねぇ、なんで私のことを抱きしめてるの？
力強すぎて、ちょっと苦しいよ。
《視聴者が止める》
あ、やっと放してくれた。
どういうつもりなの、急に抱きしめるなんて。私たちは友達でしょ？
すっごく仲がよくて、でも恋人同士じゃなくて。
そういう関係だったよね？
それなのに、急に抱きしめるなんて反則だよ。
今まで我慢してきた思いがもう、抑えられなくなるじゃんか。
何度も何度も言い聞かせてきたんだよ、アンタは友達だから告白したらダメだって。
告白しても、アンタが私のことを友達以外の何かとして見ることは絶対にないって。
しかもアンタには好きな人がいるみたいだったし。
私と一緒にいるときも他の誰かのことを考えている時間が多くなって、私の目を見てくれる機会が減って、それでも誘えば絶対に来てくれた。
私の目の前にいて、私のことだけを見てほしいときに、私以外の誰かのことを考えているアンタを見るのが辛かったんだよ。
それでも、アンタの側にいたいと思ったから。
アンタを一日でも多く、一秒でも長く、触れることはできなくても近くで感じていたいと思ってたんだよ。

【1】
もういっそのことアンタが好きな人と付き合って、それを心の底から祝福して、私も新しい恋を始めるんだって思ってたのに。

【2】
もしアンタが好きな人に告白したらこっぴどく振られて、その後私のところに来て私の大切に気づけばいいなって思ってたのに。

〘上記のうち好きな方をご自由にお使いください〙

それなのにアンタの好きな人は私で、そっちから告白までしてくるなんて。
けど、それならどうして私と一緒にいるときに私のことを見てくれなかったり、私の話を聞いてなかったりしたの？それって変じゃない？
《視聴者のセリフ》
どう接したらいいのか分からなかった、って、そっか、そうだったんだ。
それなら私の気にし過ぎだったんだね。
それじゃあ、今日から私はアンタの友達じゃなくてアンタの彼女になろうかな。
それで、アンタのことをもっと知っていくの。
アンタの些細な仕草からアンタが何を考えているのかを理解して、アンタにも私のことをもっと知ってもらう。
そのためには今まで以上に長い時間を一緒に過ごして、もっと互いに惹かれ合わないといけないのかな。
だってそうでしょ、ただ好きなだけでも、ただ一緒にいるだけでも相手のことをたくさん知っていくことはできないんだし。
これからよろしくね、私の一番大切な人。

・台本（ゆるボイ！）
伝わらない思い
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
山葵餅