あなたはとある目的を果たすために迷宮の森へ足を運ぶ。
その森は一度足を踏み入れたが最後、二度と元の世界へ帰ることはできないという。
そんな中、道中で見知らぬ存在から突然声をかけられる。
それはまさしく、あなたが求めていた「森の賢者」の存在であって…

（耳元で囁くように）
ホゥ…静かに。私の言葉に耳を傾けろ。

まずはその歩みを止めるんだ。

それから…決して後ろを振り返ってはいけないよ。

よしよし…聞き分けの良いニンゲンだ。

私は賢い者が大好きでね。

他者からの忠告を素直に受け入れ、従う…当たり前のことのように思えるかもしれないが、案外その普通のことすら実行できない輩は大勢いるものだ。

さて、色々と訪ねたいことは山のようにあるが…こんな夜更けにこの森へやってくるとは…君は中々無謀な奴だな。

ここは一度足を踏み入れたが最後、二度と故郷へ戻ることはできない迷宮の森。

それでもなお、この森に足を踏み入れるニンゲンは後を立たない。

それはなぜか？理由は単純明快だ。

謎多きこの未知なる森には…新種の鉱石や植物、まだ見ぬ秘宝が隠されていると噂されているらしいな。
あるものは刺激を求めて、あるものは私利私欲を満たすために…この森に足を踏み入れ、そして行方をくらませた。

さて…賢明なるヒトの子よ。いま一度尋ねよう。

そなたは一体、何のためにこの森へやってきた…？

「森羅万象を理解した『森の賢者』であるあなたに会いに来た」…ホホ、ホホホ…！

そうか、そうか。君は実に変わっているな。

この時代にその噂を知っている者がいるなんて。

如何にも…この私が森の賢者。

迷宮の森の支配者であり、あらゆる知識を我が物にした…博識たる王である。

この森に隠されてた金銀財宝の噂を聞きつけ、ここへやってくるものはたくさん見てきたが…私を求めてここへやってきたのは君が初めてかもしれないな。

ならば君のその敬意を称え、もう一度君に問おう。

君は、何のために、私に出会いたいと望んだのだ？

…ホウ…「村に蔓延る奇病を治す手段を教えてほしい」…だと？

それが、君の望むものなのか？

その問いの答えを導いてほしいがために、迷宮に等しいこの場所に足を運び…

自らのの願いのためではなく、他者の命を救うためにこの森へやってきたというのか…？

それも、その命を捧げることを覚悟したうえで…？

そう、か。その意志は揺らぐことのない…君の求める真実なのだな。

（小声で）
…面白い。君のようなニンゲンにもっと早く出会ってみたかったものだな。

…ポケットに手を入れてみてごらん。

見つけたかい？そう、その小さな小瓶と紙切れのことだ。

おっと…振り返ってはいけないと言ったはずだ。

そのまま前を向いたまま話を聞いているといい。

いつ入れたのか？ホホホ。言っただろう。

私は森の賢者…このぐらいの魔法はお手の物さ。

その小瓶の中には君の村に蔓延る病を治すための薬が…

紙切れの方にはこの薬のレシピが書いてある。

なぁに、特別な素材は使っていない。

君たちの住む世界で材料は調達できるだろう。

…礼には及ばんよ。

むしろ、久々にまともなヒトと話をすることができた。

それだけで、私は満足だよ。

さぁ、振り返らずにお行きなさい。心優しき聡明なニンゲンよ。

そのまままっすぐ進んでいけば…元いる世界に帰れるだろう。

そして、この森で起こったことはすぐに忘れるんだ。

本来、私のような存在はヒトと関わってはいけないんだ。

もう二度と…会わないことを願っているよ。

（小声で）
さようなら、小さくも勇敢な…愛しき子よ。

・台本（ゆるボイ！）
願いを叶えるため森の賢者さんに出会いたかったようです
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
ソライヌ