妹に物凄く愛されている。悪い気はしないのだが、ちょっと怖い。

あっ

おかえりなさい、兄さん

いつもよりちょっと早かったですね

今日もお疲れさまでした


……ん？

「父さんと母さんは？」って……

二人は「しばらく旅行に出掛けてくる」って、今朝家を出ていったじゃないですか

忘れちゃいましたか？

もー、兄さんったら

そんなことも忘れちゃうなんて……らしくないですよ

とにかく、しばらくは私と兄さんの二人きりの生活です

よろしくお願いしますね


あっ、そうだ

(咳払い)

兄さん

ご飯しますか？　お風呂にしますか？

それとも……わ、た、し？


//恥ずかしそうに
…………なんちゃって

あー……いや

言ってみたかっただけです

本当に、ただ言ってみたかっただけなんです

あこがれ……だったので……

小さい頃からずっと……
//


……ごめんなさい、変な空気にしちゃって

すぐにご飯の用意しますね

その間に兄さんは、着替えを済ませてもらって……洗濯物はいつもの場所に入れておいてもらえますか？

それじゃあ、お願いします

今日は兄さんの好きな「オムライス」作ったんです

おかわりもたくさんあるので、遠慮せずにどんどん食べてくださいね


======(少し間を置く)


兄さん

お食事中のところすみません

ちょっと、いいですか？

あのですね

先ほど、兄さんの着ていた服を洗濯をしようしたらですね……


「知らない匂い」がしたんです


フワッとかすかに香る程度の

弱い香りでした

でも、私が今まで嗅いだことのない

甘くて、優しくて……

でも二度と嗅ぎたくないような

そんな匂いでした


何か、心当たりはありますか？

説明してください


……「気のせいだろ」って


誤魔化そうとしないでください

私だって、こんなこと信じたくなんかありません

でも私は、大好きな兄さんのことを間違いなく疑ってしまった

「私の知らないところで、私以外の女性と関係を持っているのではないか」と

だから、兄さんにはちゃんと説明してもらいたい

「匂いの原因は何なのか」を


……「帰り道でたまたま出会った女友達のもの、だと思う」ですか

ふーん……

なるほど、なるほど

なるほどなるほど


やっぱり、心当たりがあったんですね

……

だったら

なんで誤魔化そうとしたんです？

「気のせいだろ」だなんて言って

何か、私に隠したかった理由でも？


……

……ハァ

何も答えてくれないんですね


兄さん

その”女友達”とやらが

兄さんにとってどんな人なのか知りませんけど

もし

その人が私から兄さんを奪おうとするのなら

絶対に許しません


……すごい慌ててますね、兄さん

そんなに、その”女友達”さんのことが心配ですか？

大丈夫です

危ないことをする気はありませんから

安心してください

えぇ

本当ですよ？

ふふふっ


私、兄さんのことがとっても大好きなんです

心も体も、全部兄さんのために捧げられるくらい

兄さんのためなら何だってしてあげたい

それくらい大好きで……

だから、隠し事をしたり、つまらない嘘をついて私を悲しませないでください

可愛い妹のためだと思って

……お願いしますね？


……

お風呂、もうすぐ準備できますから

ご飯が食べ終わったらすぐに入ってきてくださいね

ちゃんと肩まで湯船に浸かって、体に染み付いた匂いをしっかり落としてきてください

兄さんから知らない匂いがすると、頭がおかしくなりそうなので

……なんなら、久しぶりに一緒にお風呂入ります？

昔みたいに、洗いっこしたり、どっちが長く湯船の中に潜っていられるか競争したりとか……

……ふふっ、冗談ですよ

お互いもうそんな子どもじゃありませんからね


あっ、お風呂沸いたみたいです

それじゃあ

ゆっくり体を休めてきてくださいね

兄さん

・台本（ゆるボイ！）
ちょっと独占欲強めの妹に愛されている
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
羽衣ロロモン