「閉じ込めてほしい」と口走ってしまった彼女を興味本位で監禁したら止まらなくなってさらに生活も崩壊していく終末系社畜ヤンデレ彼氏です。ひたすらボソボソなイメージで読むのが多分おすすめです…

　

（ドアガチャ）
（取引先とハキハキ通話しながら寝室に向かう）
……はい、はい……
かしこまりました。
はい。その節は大変申し訳ございませんでした……
はい。
今後、このようなことがないよう、以後気をつけてまいり……（言い終わる前に通話が切れる）

（ぼそっと）
チッ……切ってんなよクソが……

（寝室のあるドアに鍵を挿して開ける）


（以下、生気なくボソボソと）

……たーだーいーま。

あれ。返事が聞こえないな……

って、そうか。
俺が喋れなくしてたのか（生気なく笑う）

今、口枷くちかせ、外してあげるね。
今日もいっぱい、待たせてごめんね……？

（ブツブツと）残業残業残業残業……毎日、毎日毎日毎日、バカな取引先にバカな上司……バカな同僚バカな後輩のせいで……全部……全部全部全部、全部俺が尻拭いさせられてんだ……
ほんと、こんな日常気が狂いそうになるよ……

キミが……
キミだけが安定剤なんだ……

（口枷が外れる）
……はい。取れたよ。
もう、喋れるよ？

（生気なく笑って）たーだーいーまっ。

うん？
何、言ってるの？　

外すのは……「口だけ」だよ……？

それ以外はまだベッドから外さない。

だってこれは、キミが望んでいたことでしょ？

俺のことが大好きで、だから、
「いっそ私を縛って永遠に閉じ込めていてほしい」
あの日、確かに、そう言ってくれたよね？

キミが望んで、こうして、思うように身動きできなくなった分、俺はキミが何もしなくていいように、どんなお世話だって、毎日毎日何から何まで……ちゃんとしているでしょ？

ねぇ。
ただいま。


（一層低い声で）
……ただいまって、言ってるんだけど……？


……うん。ただいまっ。

（ため息）
つーか今、何時だろ……

（スマホを確認）
うわ。0時過ぎてる……
信じらんないよな？　こんな時間になるまで仕事させられてることも……こんな時間に電話してまでクレーム言いたいバカ企業がいることも……
まじで……全員くたばれよ……

（スマホからバイブ着信）

……はぁ……？

……んで……また……

（怒鳴る）電話が鳴るんだよ！
（イラついてスマホを壁に叩きつけ、息荒めの呼吸）

（鳴り止まない着信）

（しばらくスマホを見つめたあと、呼吸が落ち着くとともに舌打ちして再び手に取り、通話）


……ハイ。

（再びハキハキ営業モードで）

はい、お世話になっております。
いえ、すみません……あの、いかがいたしましたでしょうか。

……はい。はい。はい。
そうでしたか。
はい。かしこまりました。
それでは明日の9時に……
はい。お手数おかけしますが、何卒よろしくお願い申し上げます。
はい……失礼致します……

（通話が切れたあと、大きなため息）


（再びテンションダウンの声）
……ねぇ。
聞いてた？

明日も朝イチで対応しろだって。
フッ、笑うよな？　笑えるよまじで……

はぁ……

ダメだ。限界。

触れたい。
キミを補給したい……
今すぐキミに……密着したい……

（ベッドに乗り、両手足を拘束している彼女に跨がり覆いかぶさる）

ふっ……ふふっ。
こうして覆い被さって、見下ろしてると、俺が支配してるって感じがして、凄く、ゾクゾクする……たまらない……

ていうか、実質さ、俺もキミも……「身動きが取れない」って意味では、やらされてること何も変わらないのかもしれないね？ ははっ。


……あれ？

どうして、泣いてるの……？

ツライ……？

あー。キミも……ツライの……？
ツライんだ……

そっか。

……ははっ。
そっかそっかそっか。
そうだよね、ツライよね？

毎日毎日毎日拘束されて、ただただ管理されてるだけの生活なんてさ……
つまり、あの日、こんなにツライことを望んでくれたキミは……

きっと俺の、1番の、良き理解者になりたかったから。なんだよね？

俺が、こんなに苦しい思いで毎日毎日毎日バカな会社に拘束されてる気持ちなんて、誰にもわかってもらえないんだって、諦めようとしてたけど……

だけど、やっぱり、キミは……キミだけは違うんだね？

自らこうして、同じツライ思いを味わってくれてるなんてさ……キミは……なんて尊い存在なんだろう……？

（息を荒くしながら）
……キス……して……いいかな……？

（キス）
……ふふっ。
少し……髪が乱れてしまっているね……？
昨日は俺が疲れて寝ちゃったせいで、お風呂……入れてあげられなかったからかな……
ごめんね……？

え……？
もう3日も、入ってなかったっけ……？
あははっ。ははっ……
（彼女の匂いを嗅ぐ）

大丈夫だよ……
キミは相変わらず、良い匂いだよ……？

（大きく息を吸って吐く×2）

あ。だけど気持ち、ちょっとだけ……
体臭、強くなってるのかなぁ……？

はぁ……はぁ……
キミの匂いって最高に落ち着く……

（耳元で）ねぇ、このまま1週間キミのこと洗ってあげなかったら、もっと良い匂いになってくれてたりして……

ははっ。そんなに、首振らなくたって……

わかったよ？
ちゃんと今日、お風呂に入れてあげるね？

明日も、朝、早いんだけど、

入れてあげるね？


……あれ。聞こえた？
入れてあげるって言ってるんだけど。

（一層低い声で）
……何黙って、「当然」とでも言いたげな顔をしているのかな……？

キ　ミ　の　た　め　に、
"残業"……するんだけど……？


（生気なく笑って）
ははっ……いや、お礼なんていいんだ。
これくらい全然構わないんだよ？
こちらこそ、いつも、こんな俺の側にいてくれて……ありがとうね？

……ありがとう……
（キス）
……好き……
大好き……なんだ……

キミが、俺にこうされることを望んで、それで、俺はほんの興味本位で、望み通りにココへ閉じ込めてしまった、あの日から……

この感情がもう……ずっと、溢れて止まらないんだ……

キミが、自分だけのものになったんだって……自分だけの言うことを聞いてくれて、自分だけを見て、自分だけを愛してくれる存在になってくれたんだっていう実感をすればするほど、

心が満たされてしょうがない……

（荒い息）はぁ……はぁ……

……あ。
ごめん、無意識に体重かけちゃってたね……
我ながら貧弱な身体になってきたとはいえ、さすがに重かったよね……ごめん……

それじゃそろそろ、お風呂の準備をしなきゃね？
名残惜しいけど、離れるよ。
……ふふっ。またあとで、
しっかりと密着しようね……？


……ね、どうしたの……？

涙が、止まらないね……？


……エ……？

俺も……「泣いてる」……？


フッ、ふふっ…ははっ……

（静かに泣きながら、か細い声）
ック……グスッ……

もう……わかんないんだよ……
「戻り方」が……全部……

俺は……どこで人生間違ったんだ？
どうやったら、この呪縛から……
解放されんだよ……


（手枷を取ろうとガチャガチャ動かす彼女）

ははっ。なんだよ急に……そんなに動こうとしちゃって……
まだキミにも、そんな元気が残ってくれているんだね？
なんだか少しだけ、ホッとする。

うん。
心配しないで？
手も、足も、今からちゃんとその鎖、取ってあげるから。

（手錠を取り出す）
……そして代わりにこの手錠を……すぐにつけてあげるからね。


……どうしたの。
まだ、何か、言いたそうな顔だね……？

……へ……？


会社を辞めてほしい……？

どうして？

……ムリだよ。
辞めたらキミのことちゃんと養えなくなる。


……クッ……
ふふっ……

俺のこと、心配してくれているんだ？
本当に、キミはいつまでも優しいんだね？
キミは。
キミだけはいつだって、俺に優しいんだ……

俺はね、こんなにも優しいキミのためなら、どんなに過酷な仕事でも、一生頑張れるよ？
だってキミには俺だけしかいないし、俺に残されてる生命線もまた、キミだけなんだから。

……ねぇ。嬉しい？　
嬉しいよな？


（少しイライラ）
……ねぇ……
この次からはさー、俺が質問をしたら、絶対に黙らないでよね？
ネ？

ウ　レ　シ　イ　？


……うん。
そっか。良かった。

それじゃあほら、外してあげるね？

匂いが薄れちゃうのは少し寂しい気もするけどさ……
今日は俺がちゃんと、責任持って、隅々まで、綺麗にしてあげるから。


……はぁ……こんなにも手首細くなっちゃって……
ふふっ。

（囁き声で）大好き……

（手錠がかかる音）










おわり

・台本（ゆるボイ！）
捕らえて囚われている社畜彼氏
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
蚊ネコ