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ある日森の中くまさんにしてもらう耳かき
  • 耳かき
  • 人外 / モンスター
公開日2022年06月16日 04:23 更新日2022年06月16日 04:23
文字数
3129文字(約 10分26秒)
推奨音声形式
バイノーラル
推奨演者性別
指定なし
演者人数
1 人
演者役柄
視聴者役柄
おじょうさん
場所
森の中
あらすじ
あるひ もりのなか くまさんに であった
はなさくもりのみち くまさんに であった
――
朝から耳に違和感を感じて森の先にある耳鼻科に急ぐ「お嬢さん」は、途中の林道でイヤリングを落としてしまいます。
そのイヤリングを拾ってくれたのは人語を喋る「熊」でした。
「熊」は耳詰まりをしているあなたに耳かきをしてくれます。
pixiv( https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17774961 )からの転載です。
本編
*BGM:小鳥が鳴くような森感のあるBGM

おーい、そこのおじょうさ~ん。
おじょうさん、待ってください。

花咲く森の道を歩む耳を押さえたおじょうさん。
あなたのことですよ~。
まってまって、行かないで。
食べたりしないから、止まってください。

あなた、この白くて綺麗なイヤリング。
いまさっき、そこで落としたでしょう。
ああ~~、よかったよかった。
気づいてもらえて、本当によかった。

お礼なんて、そんなかまいません。
あなたが、気づかず行ってしまったら
私、きっと走って追いかけてしまっていたことでしょう。

*SE:ちゃりと持ち上げたピアスが鳴る音。

こんないい品、大事な宝物なのでしょうから。
これからも大切にしてあげて下さい。
いえいえ、お礼だなんて……
わたくしはただ、落し物を拾っただけですから……っと

はて、おじょうさん、ちょっとこさおまちなさい。
ほうほう、なるほど、これはとってもたいへんだ。

あなた、お耳が随分汚れているようですね。
外から見ても分かるくらい、お耳が垢で詰まっているようです。
私の声がよく聞こえなかったのも、きっと耳詰まりのせいでしょう。

お嬢さん。もし、あなたがお時間よろしいようでしたら。
あなたのお耳を私にお掃除させていただけないでしょうか。

もちろん、取って食ったりなどいたしません。
そういうのは、狼のすることですから、熊のすることじゃありません。

今日は、とってもいい日よりですからね。
ちょうど、そこの木陰がよろしいでしょう。
かまいませんか?

かまわない。
それは、ありがとうございます。

ささ、芝生の絨毯に体を預けていただきまして……

*SE:ぬいぐるみに寝転ぶ音(人間のひざまくら音にはならないと思います)。

ときに、お嬢さん。
膝枕に敬遠はありませんか?
いかんせん、熊の膝枕ですからね。
お気に召さなくても、仕方有りません。

それも気にしない?
あなたが随分心の広い方のようで
わたくし、たいへんありがたくおもいます。

それではさっそく、左耳から耳かきさせていただきましょう。
大丈夫です、どうぞ膝枕に頭を任せてください。

*SE:頭を右に倒す音

*以降、SE:耳かき音(左)

なるほど、これは中々に汚れていらっしゃいますね。
耳垢は日々の苦労といいますし……
日ごろから、随分頑張っていらっしゃるのでしょう。
恥ずかしがることなんて、ありませんよ。

気にされずとも、こりこりと
こうやって取り除いて差し上げますので。
どうぞ楽にされて、鳥の声でも聴いていてください。

*SE:30秒くらい無言。

大分、いい気分になっていただけているようで何よりです。
これは、私の腕もわるくないということでしょうか。
癒されていると、感じていただけているなら、本当に何よりです。

他人に優しくされること、それも耳かきの醍醐味ですからね。
だれかに頑張りを認められて、ほっと一息したいときも人間ございます。
まぁ、わたくし、熊なんですけど。

それより、この耳かき、いいかきごこちでしょう?
お耳の中に、カリカリと音が伝わりますか?
なにせ、手作りですからね。
わたくし、こういった細工が大好きなんでございます。
へらの部分がいい角度でしょう?

わかりますか?
どうやら、おじょうさん。
中々、通のようですね。

匙一つとっても、奥が深いですからね。
理想の角度を探し続けて、最近やっと腑に落ちました。
実は、使いごこちが知りたくて。
今日はいい天気だったので、ここで耳掃除でもと思って来たのです。

ですが、あなたがいてよかった。
こんなにも、耳掃除。
楽しんでいただいているみたいですから。

はて、当初の目的なんて
大した価値などないものです。
耳掃除と同じで終わりよければ、万事良しです。
だいたい、大きい物はとってしまいました。

*SE:耳かき音終わり。

後は、細かい耳垢を残すばかりですね。
わたくし、手作りの梵天を持ってきております。
耳の中に残った塵も
疲れと一緒に風に帰してしまいましょう。

*SE:梵天(左、新しいやつ使ってください)

わさわさと、耳の中で踊る刺激がたまりませんか?
なにせ生え変わりの時期に水鳥からいただいた羽で作った
手作りの梵天でありますからね。
使うのは一度きり、文字通りあなたのための一品です。
この梵天も、お嬢さんに遣われて幸せというものでしょう。
ささ、もう少しこの特別な感触をお楽しみください。

*30秒くらい無言。

はて……気づいたら
もう左耳には一切、耳垢は残っていないようです。

*SE:梵天終わり。

お嬢さん、夢見心地なところ悪いですが――
次は右耳のお掃除など、いかがでしょう。
左に頭を倒していただくことなど、出来ませんか?

かまわない?

*SE:頭を左に倒す音。

おっと、ありがとうございます。
これで、あなたの右耳にも耳かきを楽しんでいただけます。
それでは右耳もそつなく綺麗にさせていただきましょう。

*SE:耳かき音(右)。

*30秒くらい無言。

お嬢さん、
大分、リラックスしていただけているようでなによりです。
今日は、随分といい天気ですからね。
そのままお休みいただいてもかまいませんよ。
何処かに急いでいる途中のようでしたから。
耳かきが終わったら、起こして差し上げましょう。

はて、もう急ぐ用事もなくなりましたか……?
ああ――、なるほど。

あなたが急いでいたのは、森の先にある耳鼻科に向かっていたのですね。
朝起きたら耳がかゆくて耐えられなかったから、急いでいたと。
それはなんとも……お医者様には悪いことをいたしました。

医療行為ではないとはいえ
手間賃も抜きに、本職の方からお仕事を取ってしまったのですから。

はて、わたくしも耳かき店でも開けばよいと?
それはいいお話ですが、なにせわたくし熊ですからね。
ちゃんと、お客様に恵まれるでしょうか。

もしも、お店ををひらいたら
お嬢さんだけでも遊びに来てください。
ははぁ、サービスがよければ考えるとは、手厳しい。
わたくしも、お眼鏡にかなうように頑張らなくてはいけませんね

よくみれば、ちょうど大きな耳垢がきらりと光っているようです。
今日の仕上げということにして。
こちら、やさしく取らせていただきましょう。

こりこり、こりこり……
かりかり、かりかり……
まったくゆっくりと、匙を動かしてあげるといい感じでしょう。
すると、次第にぱりぱりと取れるわけですね。

ははぁ、これはなかなかに大きいようです。
蓋になっているというほどではありませんが
張りついたままで、かゆそうですね。

早くとってほしそうですから。
私もたまには、重い腰を上げるとしましょう。
膝枕を動かすわけではありませんよ。

なんてことはありません。
ちょっといい場所を選んで、持ち上げてあげればいいのです。

*SE:ちょっと大きなものが取れる音。

はい、なんなくとれました。
今日一番の大物ですね。これは、耳鼻科にいきたくもなるでしょう。

お嬢さん、ここからはサービスです。
耳垢が剥がれて、おかゆいでしょうから耳かきで掻いてさしあげます。
遠慮なく、耳かきの感触だけお楽しみください。

*30秒くらい無言。

どうですか、優しい刺激が気持ちいいですか?
満足していただけたなら、これほど嬉しいこともありません。

*SE:耳かき(右)おわり。

あとに残った耳垢の塵は、この梵天で取り払って差し上げます。
気に入っていただけたようなので、入念に……
入念に……お耳をモフモフして差し上げますね。

*30秒くらい無言。

はて、時間が過ぎるのは早い物ですね。
もう、耳の中が綺麗になってしまいました。
名残惜しいですが、耳掃除はおしまいです。

ささ、おじょうさん。
起きる時間ですよ?
お昼寝も良いですが、良い天気ですから有意義にお使いください。
なんでしたら、私と、おどりましょうか?
いえ、他意はありません。
ただ、昔の童謡では、そういうオチになっていたかと思いまして……

〆:そのままフェードアウト
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
ある日森の中くまさんにしてもらう耳かき
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
ハシダ シュンスケ
ライター情報
耳かきがすきなだけの人。
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