ある日、屋敷に戻ったはずのお嬢様が部屋からいなくなったことを見てとった老執事は、彼女が何者かに連れ去られたことを悟る。何者かの痕跡を辿り、お嬢様を見つけた執事は、お嬢様を連れ去った最強の種族と対峙する…！

お嬢様、本日もよく無事に
お戻りになられました。


左様でございますか。
皆に守られているから、でございますか。


そうですね。この家の若い衆はみな
お嬢様のことが大好きですので。


無論、この老いぼれも
お嬢様のことは愛しております。


…？どうされました？
お顔色が優れないようですが…


左様ですか…
今日はお疲れになったでしょう。
お部屋でゆっくりお寛ぎください。
すぐ飲み物もお持ちしますので。


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(ノック)


失礼致します、お嬢様。
飲み物をお持ちしました。


…？お嬢様？いかがなされました？


(ドアを開ける)


……なるほど。これはまた
厄介ごとに巻き込まれたと見える…


仕方ありませんなぁ…
今回はこの老いぼれが
出張るとしようか…


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ここでしたか、お嬢様。
こんな夜更けに護衛もつけずに
お散歩とはいささか不用心かと。


はい…帰れないとは
それまたどういったことでしょうか？


(お嬢様を連れ去った張本人が現れる)


あぁ、なるほど…
事情は大体分かりました。


そこの彼…龍人でしたか。
貴方がお嬢様を脅して花嫁にしようと
しているわけですね。


人質は大方、我々使用人といった
ところでしょうか？


お嬢様…周りを巻き込みたくないという
そのお気持ちはよく分かります。


わたしもお嬢様の立場なら
今のお嬢様と同じことをしたでしょう。


ですが…それは使用人としては
非常に淋しいことです。


わたしの命はお嬢様のために
あるのですから。頼っていただかないと
何のために生き永らえているか、わかりません。


お嬢様…わたしは今は亡き先代から
貴女のことを託されました。


そしてわたし自身もお嬢様のことは
実の孫のように思っております。


ですので…貴女を
そこの彼の好きには
させません。


大人しくわたしに助けられて
ください。よろしいですね？


はい、かしこまりました。
すぐに片をつけますので、
ここはどうかお下がりください。


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あいてて…やはり人間、老いには
勝てませんなぁ…
身体が若い頃のように
動かない…


いえいえ、これくらいは。
まだまだ戦えますぞ。
若い衆には負けてられません。


いえ、ご心配には及びません。
この老体も意外と図々しいようで…
昔の血が騒いでいるようです。


はい。今でこそ年老いた使用人に過ぎませんが、
昔は騎士というものをやっておりましたので…


はい。ですので、戦いの勘は
だいぶ取り戻してきました。


奴はこの手で斬ります。
お嬢様に手を出したこと、
後悔させてきますので。


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カハッ…ハァッ、ハァッ…


も、申し訳ありません…
このような醜態を晒して…


いえ…大、丈夫です…
立つことくらいはなんとか…


それよりお嬢様…
お怪我は、ごさいませんか…？


そう、ですか…
それはよかっ、た…


(気絶)


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む…ここは…病院？


あぁ…お嬢様。ご無事でしたか。


い、いえ…それはご迷惑を
おかけしました…


ははは…お嬢様は本当にお優しい。
このような老いぼれのために
涙を流してくれるとは…
光栄の極みです。長生きはするものですなぁ…


はい…自分の身を大切に、ですね。
今のお言葉、心に刻んでおきます。


(抱きしめられる)


お嬢様…老体にそのような
強いハグはいささか苦しいです…
お気持ちは嬉しいのですが…


そうですか…なら仕方ありません。
お嬢様を心配させた罰、甘んじて
お受けしましょう。


お嬢様…わたしからも一つお願いです。


また何かあった時は一人で抱え込まず、
わたしか、あるいは他の若い衆に相談して
ください。きっと貴女の力になりますから…


はい…これからもどうか
よろしくお願いいたします。お嬢様…

・台本（ゆるボイ！）
元騎士の老執事は老いた身体に鞭打ってお嬢様のために戦いに身を投じる
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎