憤怒のダークヒーローとその親友の話。

七つの大罪シリーズ・第三弾【憤怒】
※シリーズと銘打っていますが、ひと作品ごとに完結しています。続き物ではありません。

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……誰だ？

ああ、お前か。

久しぶり。
あいつの葬式以来だな。

こんなところで何をしてるんだ？
ここはお前にふさわしくない。
ほら、表通りに戻れ。

俺は……。
いいんだよ、これで。

ああ、そうだ。
死体だ。
今から解体して海に沈める。

通報するか？

……。
そうか。

お前は友情に厚い。
いや、少し甘やかしすぎだと思う。
それも、あいつには届かなかったが。

ん？
この死体か？

こいつはただの会社員だ。
機嫌よく酔っていたところを始末させてもらった。

……ああ、そうさ。
こいつも人を死に追いやってる。

被害者の遺書にはこいつの名前が出ていた。
だが、こいつはそれを聞いてもなお平然とこの世を謳歌している。

ニュースにもならないどこにでもあるありふれた日常。
俺の最も許せないものだ。

あいつもそうだった。

なぁ、おかしいと思わないか？

あいつを貶めたやつが平然と社会に存在し、他人に認められ、人生を楽しんでいる。

人を殺してるんだぞ？
どうしてそんなやつが笑って生きてる？
どうして誰もそれをとがめない？

俺は許せない。

はらわたが煮えくり返る。
考えただけで吐きそうになる。
この怒りは収まることはない。
あいつの命を奪ったあの男を殺した今でも。

そして、もう一つ許せないものがある。

この世だ。

そうだろう？
あの男のような人間がごまんといる。
なのに、ほとんどの人間は見逃されている。

俺は見逃さない。
俺は許さない。
この命が尽きるまで、始末し続けてやる。

止めても無駄だ。
俺は決めたんだ。
この信念を曲げることはない。

……。
ああ、分かってる。
きっと、あいつはこんなことは望まないだろう。
優しいやつだったからな。

それでも俺は進むしかないんだ。
この道を。

それに、もう俺は戻れない。
俺も人を殺したから。

俺の殺したやつは確かに許されない人間だ。

だけど、そんなやつにも家族や友人がいた。
彼ら、彼女らを悲しませた。
人生を狂わせてしまった。

俺もまた、許されない人間なんだ。

なあ、だから、お前に頼みたいことがあるんだ。
聞いてくれるだろうか。

ありがとう。

ずっと先の話だ。
お前が死に、もしあの世であいつに会ったなら伝えてほしい。
「ごめん」って。

あの世なんてあるかは知らない。だけど、俺はお前たちとは同じ場所には行けないだろう。
だから、伝言、よろしく頼む。

ああ、そうだな。
昔みたいに三人でバカな話で盛り上がって。
そうできたら、一番幸せだろう。

だけど、俺にはもう無理だ。
分かってほしい。

さあ、お前は早く明るいところへ戻れ。

戻ってくれ。

お前は前を向いて生きてくれ。
幸せになってくれ。

頼む。

あと、そうだ。
最後に一つ。

見つけてくれてありがとう。

お前がずっと俺を探してくれてたこと、知ってた。

お前は分かってたはずだ。
俺がとんでもない殺人鬼だって。

それでもお前は会いに来てくれた。
それがどれだけ嬉しかったか。

ありがとう。
だからこそ、さよならだ。

ああ。
俺はお前に会って気づいたんだ。

俺はもう止まれない。

本当はお前と共に明るい未来を行く道も考えた。
迷っていた。

だけど、お前という存在を前にしても、俺の中の怒りは鎮まらなかった。

だから、俺は俺の道を行く。
この憤怒と共に。

そんな顔をしないでくれ。

笑え、笑え。
できれば、笑顔でさよならしたいだろ？

ありがとう、俺の友達でいてくれて。
だけど、それも今日で最後だ。

ああ、俺のことは忘れてほしい。

そんな臭いセリフ言うなよ。
いつまでも友達だなんて、さ。

ありがとう、本当に……ありがとう。
お前に出会えてよかった。

だから、さよなら。
もう二度と会わないことを願う。

・台本（ゆるボイ！）
悲しい憤怒に終わりは来ない
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
シノト