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砂の時計
written by タナカジロー
  • 朗読
  • 切ない
公開日2022年11月27日 13:08 更新日2022年11月27日 13:08
文字数
505文字(約 1分41秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
指定なし
演者人数
1 人
演者役柄
話し手
視聴者役柄
なし
場所
どこか
あらすじ
砂の落ちる時間の中に、いつかの風景がよみがえる
本編
砂の詰まった瓶が倒れて、砂がさらさらと流れ落ちる。延々と、大小様々な砂粒が、静かに、ゆっくりと、瓶の中から落ちていく。

砂の落下に、置き去りにしてきた景色を見た。ああ、この砂は、君と一緒に海に行ったときに持ち帰ったものだ。だったら、小さな貝殻が入っていたはず。どうして、貝殻だけを持ち帰らなかったんだろう。



だってそうすれば、瓶にこの海を詰めて、二人だけの景色になるから。

あの時、君はそう言った。

あの時の景色を、写真にも撮らず、瓶に詰めた。
景色はいつしか記憶から消えて、瓶の中で眠っていた。

落ちる砂粒から、あの景色が広がっていく。
景色を眺める時間はとても穏やかで、全てが止まっているようで、それでも砂粒だけは、確かに流れ落ちていく。

もうすぐやってくる。貝殻が落ちる時が。

時よ、止まれ。

瓶は最初から、手の中にあった。倒れたんじゃなく、こうして傾けて砂粒を落としている。

時よ、止まれ。

あの景色を、もう一度見たくて。

時よ、止まれ。

でも、君と見たあの景色は。

時よ、止まれ。

もう、過ぎ去って、そして、砕ける。



叶うなら君を、こうやって捨ててしまいたい。

そうして、君を思い出す。

君が、砕けてしまうまで。

全てが、砕けてしまう前に。
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
砂の時計
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
タナカジロー
ライター情報
pixivにあげていたものを移動中です。

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