雪が降りしきる夜、一人の女が『白の教会』を訪ねてきた。彼女を優しく迎え入れたのは、その教会の神父。女は教会に来る途中、とんでもない罪を犯してしまったことを神父に告げる。それを聞いた神父は彼女を優しく慰めるが、彼の本当の目的は彼女の救済などではなかった…

おや…この時間に
お客様ですか。珍しい。


ようこそおいでくださいました。
わたしはこの教会の神父です。
よろしくお願いします。


はい。この教会、世間では
『白の教会』と呼ばれています。


外壁も内装も見ての通り
真っ白ですからね。


ですので、貴女が救いを求めに来た
教会はここで間違いありませんよ。


それより外は寒かったでしょう。
さ、奥の方へどうぞ。


大したおもてなしはできませんが、
それでもよければ。


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こちら、スープになります。
これで身体を温めてください。


そうですか…お口に合ったならよかったです。


それで？こんな真夜中に
この教会に来たのは？


やはり…貴女も主の救済を求めて…


かしこまりました。では、これから
貴女の罪の懺悔をいたしましょう。


実は当教会には
懺悔室というものがございます。


密室ですので、わたしと主以外誰にも
貴女の罪を聞かれる心配はございません。


すぐご案内しますので、どうぞこちらへ。


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どうぞ、こちらの椅子へお掛けください。


はい。では、早速始めていきましょうか。


よろしければ、貴女の罪を
我らが主にお聞かせください。


…そうでしたか。飢えに喘いでいた
妹さんを救えなかった、と…


共に当教会に救いを乞いに
行こうとしたが、その途中で
妹さんは力尽き、貴女は彼女を
そのまま置いてきてしまった…
そういうことですね？


それはそれは…
ここに来るまで
とても辛い思いを
されましたね。


ここ近年は飢饉が酷いですからね…
飢餓による死者も年々増えていると聞きます。


妹さんが力尽きたのも無理はありません。
なんせ世界中で食料が不足しているのですから。


おまけにこの寒さ…雪も舞うほどですし、
寒さで体力も奪われてしまったのでしょう。


本当に哀れなことです…
このような不条理で命を落とす
ことになるとは…


貴女も自分のことで
いっぱいいっぱいだったのでしょう？


妹さんを見捨ててしまったのはたしかに罪ですが…致し方ないでしょう。こんな状況では…


…こんな状況だからこそ、わたしにとっては
非常に都合が良いのですが。


おや？いかがされました？
急に顔が真っ赤になられて…


いいえ？わたしは何もしていませんよ？


ただこの懺悔室にはちょっとした
面白い仕掛けがありまして。


はい。この部屋の空気中に漂っている魔力…
人間を恍惚とさせる惚れ薬のようなものでございまして。


えぇ、『魔力』です。
魔族が扱う力の素です。


貴女も名前くらいは
聞いたことがあるでしょう？


はい…なんせここは
悪魔が運営している教会ですから。


その悪魔とは…今貴女の目の前にいる
このわたしですよ。ふふふ…


(キス)


悪魔からの口づけ…
とっても甘美なもの
だと思いませんか？


せっかくですし、わたしが
貴女の罪をお教えしましょう。


貴女の罪は…『怠惰』。


大切な身内を助けることを怠った…
それが貴女の罪です。


そしてその罪を裁くのは
『怠惰』を司るこのわたし、ベルフェゴール。


ちなみにわたし、貴女のような
見るからに幸薄で綺麗な若い女性が大好きでして。


さぁ、今度は貴女から口付けを。
それでわたしとの契約は完了です。


(キスされる)


よくできました。
それでは最後に貴女のために
祈らせてください。


かの罪深き魂は永遠にわたしと共に…アーメン。


さぁ、貴女の罪深きその魂…これから
じっくり味わわせていただきますね？
ふふふっ…

・台本（ゆるボイ！）
わたしをあたたかく迎え入れてくれた紳士な神父様は、怠惰な魂を好む悪魔だった
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎