優秀な里の忍びである貴女は、唯一手裏剣投げだけが苦手であった。里の外れでこっそり練習しているところを、同じ里の先輩忍者に見られてしまい…？

なぁ…お前、さっきから何うんうん唸ってんの？稽古での悩み事か？


おぅ…まぁ、聞くだけ聞いてやる。言うてみ？


…え、マジ？お前、手裏剣投げ苦手だったのか…そりゃ初耳。基本、優秀なのに、そんな苦手分野が…


ん〜…コツとか言う前に、とりあえず一旦投げてみ？お前の実技見ないと、何も言えん。


…は？なんだその持ち方……ッッ⁉︎


(彼女の投げた手裏剣があさっての方向に飛んでいく)


……なぁ、おい。もうちょっと真面目にやれよ。ウケ狙いにしても、もっと他にあるだろうがよ。


真面目に投げてそれかよ！嘘だろ⁉︎ 的どころか、なんかよくわからん方向に飛んでったぞ⁉︎


うぁ〜…こいつ、本物の手裏剣下手じゃん。やべぇ…


普通に引くわ！想像の百倍は下手くそだし！てか、握り方も投球姿勢も、何もかもおかしい！


ったく…！ほら、まずは握り方！手裏剣はこうして、手を軽く添えるように持ってだな…


…違う！なんだ、その握り方⁉︎ そんながっしり指先で握り込むな！手ェ切れるぞ！


うるさい、持ちにくい言うな。今は黙って先輩の言うこと聞け。


よし…で、次は投げ方だけど…って、違う違う！振りかぶって投げようとすんな！マジでなんなんだよ、その投げ方⁉︎


飛ぶから！そんな振りかぶらなくても、軽くシュッて投げるだけで飛ぶから！


ほら、手本見せてやるから、ちょっと見てろ…


(投げた手裏剣が的のど真ん中に命中)


どーよ？軽くシュッてやるだけで、命中したろ？


そ。腕の力だけ使って投げるんじゃなくて、身体の中心から指先に力を伝える感じで飛ばすの。一回やってみ？


なんだ、やりゃできるじゃん。あとはあまり手元は見ずに、狙いたい方向だけしっかり見て、身体をそこに向けて…


そうそう！だいぶマシになってきた！


あとはまだ握り方がアレだから…ここを、こうして…


…？どうした？いきなりモジモジして…厠(かわや)なら、すぐそこにあるぞ？


なんだよ…まさか指ちょっと触ったぐらいで、照れたとか言うんじゃねーだろーな？


‥マジか。常日頃、男に色仕掛けしてるお前が、俺如きに触られて照れるとか…まさか自分から触るのはよくて、人に触られるのは駄目な感じか？


…ま、いいや。複雑な乙女心は俺には分からん。とりあえず俺、昼餉(ひるげ)がまだだから、ちょっと食いに行ってくる…


…は？なんだよ、もう手裏剣の投げ方は教えてやって…


(彼女のお色気の術を間近で見る)


…ぶふっ！ちょ、おま、何やってんの…⁉︎ ふ、服着ろ、服！


うるせー！いきなり女の裸体間近で見たら、普通に驚くわ！何のつもりだ、お前ぇ！裸族か！


冗談よせって…てか、その術は俺に効くから、やめろ…


わかった、わかったから…俺への意趣返しはその辺にしとけ。な？


はい、さーせん…とりあえず一緒に昼餉、食うか…？


おし…じゃあそのアホな術はさっさと解除せい。そもそも俺にかける必要ねえよな？


(彼女の手を握る)


…うるせーよ。さっきのお返しだ、お返し。


食堂着くまで、俺に手ェ握られてろよな…バーカ。

・台本（ゆるボイ！）
【ほのぼの】先輩忍者の手裏剣投げ指導
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎