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殺してもらおうと喚び出した悪魔に何故か「生きる意味」を説かれる話
written by 住公子
  • ファンタジー
  • 悪魔
公開日2024年02月20日 22:09 更新日2024年02月21日 00:19
文字数
1922文字(約 6分25秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
指定なし
演者人数
1 人
演者役柄
悪魔のお姉さん
視聴者役柄
自殺志願者
場所
視聴者の部屋
あらすじ
生きる意味を見失い自殺をするために悪魔を喚び出した貴方。
成功したものの、何故かその悪魔に生きる意味を説かれることに。
本編
ん〜! こっちに来るのは久しぶり。
えぇと、貴方が私を喚び出した人?
ふぅん……召喚士には見えないけど。
もしかして最近流行りの、機械に召喚させるとかいうアレ?
技術の進歩は凄いわねぇ。最近はなんでもかんでも自動化だのなんだのと。
私の友達もそれで喚び出されたんだけど、何があったのかそのまま人間と結婚するとか言い出して笑っちゃった。
あぁ、ごめんなさい、どうでもいいわね。
それで? 私を喚び出した用件は?
……はあ?
殺して欲しいって……なぁに? それ。
自殺したいがために悪魔を喚び出したっていうの?
貴方、もしかしなくても馬鹿でしょう。
わざわざそんな面倒なことしなくても、方法なんていくらでもあるでしょうに。
誰かを呪い殺して欲しいだの、死ぬ前に快楽を味わいたいだの、そういう理由で喚ばれることはあるけど。
さすがに自殺が目的っていうのは初めてだわ。
悪いけど、他をあたってくれる?
私も慈善事業やってる訳じゃないの。
悪魔との契約の対価って何か知ってる?
魂よ。
どういう形で受け取るかはそれぞれ好みがあるけど……。
私はね、宝石みたいに飾っておくのが好きなの。
よりにもよって悪魔に縋る程に追い詰められた欲望と、一瞬でも願いを叶えられるという希望と、結局全てを失う絶望と。
そういったもので彩られた毒々しい輝きが大好きなの。
でも、貴方は駄目。
死ぬことが目的なら、絶望なんてしてくれそうにないし。

というか貴方、なんで死にたいの?
……はあ。生きる意味が分からなくなった。
それはまた、随分とくだらない理由ね。
元々ありもしないものを見失った気になって悩むなんて、馬鹿馬鹿しいにもほどがあるわ。
だってそうでしょう、もともと生(せい)に意味なんて無いのだから。
……なに? その呆けた顔は。
そもそも順番がおかしいのよ。
出口側から迷路に入って彷徨っているようなものなんだから。
いい? 生があるから意味が生まれるの。
意味という概念が発生したのは、生きるという目的を持つ生命が発生した後。
生が先で意味が後。
生は意味が無くても存在できるけど、意味は生が無いと存在しない。
そうね……たとえば宝石。
着飾るためとかお金儲けのためだとか、目的は人それぞれ色々とあるだろうけど、自然に存在するただの石ころに意味を与えたのは私達。
石が先で、意味が後。
誰かが与えないと、宝石にはなんの意味も無い。
けど、意味が無くても宝石は存在している。
私達生命が消えたとしても、変わらずあり続けるでしょうね。
生も同じ。
別に意味が無くても私達は生きているし、生きていける。

少し切り口を変えて、意味なんてあっても嬉しくないという話をしましょうか。
意味というのは言い換えれば理由。価値とも言える。
たとえば、電話が存在するのは何故?
そう、離れた相手と会話をするため。これが理由。
離れた相手と会話ができる。これが価値。
じゃあ問題。
仮に全ての人間がテレパシーで会話できるようになったら電話はどうなると思う?
……そう、使う理由がなくなる。価値がなくなる。
誰も使わない道具なんて存在する意味がなくなる。
生も同じ。
意味があるとしたら「どこかの誰かが何かの目的を達成するために用意した道具」としてで、「用が済めばいらなくなる」ということになる。
貴方、そんな"意味"が欲しい?
私はごめん[[rb:被る > こうむ]]けどね。
私は私のために生きていきたいから。

ふふ……別に納得しなくたっていいわ。
私も、貴方を説き伏せたい訳じゃないし。
永遠に迷路で彷徨えばいいんじゃない?
そのうち別の出口が見つかるかもね。
ま、その前にこの世から脱出しちゃうのかもしれないけど。
あぁ、でも、そうねぇ……。
貴方に意味を与えてあげることはできるわね。
貴方、私のモノになってみない?
さっき言ったでしょ? 私は毒々しく輝く魂が好きだって。
悪魔に縋るほどの欲望を抱えた貴方が一瞬でも救われた気になって希望を抱え、それが無意味なものだと理解した時の絶望はさぞ素晴らしい極彩色の輝しを放つのだろうなと思って。
どう? きちんと対価は支払うわよ?
意味を与えるなんてふんわりしたものじゃなくて。
富でも力でも、快楽だっていいわ。
意中の女がいるならその心を奪うのでもいいし、私を抱きたいというなら抱かせてあげる。
望むものなら何でも与えてあげるわ。
……それは契約成立ってことでいいのかしら。
ヤケになったからでもなんでもいいけど、契約した以上は果たして貰うわよ?
ん? 別に何かしろって話じゃないわ。
貴方は貴方のまま生きていればいい。
私はそれを眺めて楽しませてもらうだけだから。
もちろん、私も対価はきちんと払うわ。
悪魔としてのプライドがあるからね。
やって欲しいことがあるなら言いなさいな。
……ふふ、よろしい。
それじゃあ、今後ともよろしくってことで。
クレジット
・台本(ゆるボイ!)
殺してもらおうと喚び出した悪魔に何故か「生きる意味」を説かれる話
https://x.com/yuru_voi

・台本制作者
住公子
ライター情報
すまい きみこ
住公子、通称ハム子と申します。
これまでpixivで活動していましたが、ゆるボイ!でも投稿することにしました。
ご縁がありましたら、なにとぞ。

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