- 告白
- 切ない
- 片思い
- 後輩
- ボクっ娘
- 年下
- ボーイッシュ
公開日2025年07月22日 17:00
更新日2025年07月22日 13:53
文字数
2991文字(約 9分59秒)
推奨音声形式
指定なし
推奨演者性別
女性演者向け
演者人数
1 人
演者役柄
僕っ子後輩女子
視聴者役柄
演者の先輩
場所
任意。時間帯は夜を推奨
あらすじ
聞き手には、SNSでリアクションを欠かさずしてくれる後輩がいる。いいねだけでなく、リプライも全ての投稿に対してなされる。一見過剰にも思えるリアクションの数だが、彼女は、リアルでの接触や過剰なストーキング行為は決してしない。
そんな彼女のSNSを聞き手がフォローバックしたことをきっかけに、二人はリアルでも親交を深めていく。
二人で歩く夜道、彼女が聞き手へ問いかける。
「ねぇ、先輩? 教えてよ。
なぜ先輩は、僕を歓迎するんだい?」
そんな彼女のSNSを聞き手がフォローバックしたことをきっかけに、二人はリアルでも親交を深めていく。
二人で歩く夜道、彼女が聞き手へ問いかける。
「ねぇ、先輩? 教えてよ。
なぜ先輩は、僕を歓迎するんだい?」
本編
——ねぇ、先輩?
今の話、聞いてなかっただろ。
……っふふ、いいよ、全然。僕はその程度で怒ったりしない。
でもね、せっかくこうやって話せる関係になったんだから、この貴重なひと時を存分に味わいたいんだ。
だから、今は僕に集中して。いいね?
……よし、いい子だね、先輩。
にしても、どうして僕に構ってくれるんだい?
だって、先輩からすれば、僕はタメ口で一方的に絡んでくる得体の知れない女の子、だろ?
どうしてあの日、僕をフォローバックしてくれたのか、どうして、先輩のSNSを監視しているかのような人間を邪険にしないのか、どうして、むしろ迎え入れるのか……。
一般的な尺度で見たら、僕は”異常”の範疇に入るだろう? 先輩のSNSの投稿すべてにリプライを送るような人間だからね。
それを、先輩は他の個体と同じように平等に接するどころか、自分の世界、しかも「現実世界」に干渉させる。
危ういね、実に危うい。危機感がないよ。まぁ、僕が言うことでも無いんだけどね。(ひとり笑う)
ねぇ、先輩? 教えてよ。
なぜ先輩は、僕を歓迎するんだい?
……なるほど。(明るく、少し呆れたように笑う)
僕が、先輩の「他の」部分に無闇に干渉してこないから、攻撃性は無いと判断したんだね。
例えば、先輩の鍵アカにフォローリクエストを送ったり、現実世界の先輩に自ら接触しようとしたり。そういうことをしないから、言わばただの「ファン」だと思った、というところかな。
そして、このような自分のファンになってくれるような人間に、何かを返したいと思った。
お人好しだね、先輩は実に人がいい。
でも、それが先輩らしくもある。
(先輩に聞こえないようにひとり呟く)
そういうところに僕は惹かれたんだよ。
……いいや、何でもない。
あぁ、先輩の鍵アカのことかい?
知っていたよ、おすすめに出てきたからね。
でも、自ら探し出すようなことはしていないよ。それは僕のポリシーに反するから。
ねぇ、先輩?
——やっと、”合法的”に話せるね。
先輩。僕はね、アイドルとファンで良いと思っていたんだ。
僕は、先輩の人となりに触れたいと思った。遠巻きでも構わない。先輩の信条、価値観、思想、憎めない人間らしさ。そういうのを、一人の「ファン」と思われても良いから、僕の中に”記録”したかったんだ。
僕と先輩だけの、オンラインだけでのやり取りは、まるで秘密の逢瀬のようで、婚前の恋人たちの文通のようで……僕に”夢”を見せてくれた。
僕だけがそう思っていただろうね。でもそれで良かったんだ。夢から覚めて現実にいる時も、また夢の続きを見られるだろうという希望が、僕を強くさせてくれた。
——今までは、ね。
先輩は、罪深い人だね。
(笑いながら) なぜって、僕に「蜜」を与えたからだよ。
あの日、先輩は僕をフォローバックした。
この意味、解 るかい?
先輩。先輩はね、僕を「対等な世界」に招き入れたんだ。
相互フォローになった僕たちは、”アイドルとファン”から、普通の”先輩後輩”になったんだ。
それは、僕にとっては未知の、新しい輝いた世界の始まりだった。
認められた気がしたんだ。僕の信条、価値観、思想を、先輩が受け入れ好ましく思った。そんな心地がしたんだ。まさに夢見心地だった。
当初の僕はね、先輩に触れられればそれで良かった。現実では離れていても、インターネットの世界で少しだけ触れていられる。それだけで十分幸せだった。
でもね、今は——触れて欲しいんだ。他でもない先輩に、僕の心の奥底を知って欲しい。理解して欲しい。触って欲しい。僕を撫でて、微笑んで欲しい。
さっき先輩が聞いていなかった話、もう一度しようか。
先輩。君の、君からの”通知”だけが、僕の世界だったんだ。
僕の世界を作ってくれてありがとう。そして……壊してくれてありがとう。
僕はね、どう転んでも幸せだ。
君と会って、話せた時間、君に直接笑顔を向けてもらったこと、その刹那の積み重ねが、僕に人間らしさをくれた。人間らしい「欲望」をくれた。
……——意味、解 ったかい?
っはは、処理し切れていないようだね。わかった。
じゃあもっと直接的に言おうか。
これは愛の告白だよ。
君が好きだ。
欲を言えば、そうだね……恋人関係ってやつを望んでいるのかもしれない。
でも言っただろ? どう転んでも幸せだって。僕はもう、幸せを十分享受した。だから、君にも幸せになって欲しい。真の幸せを手に入れて欲しい。たとえそれが、僕と違う世界の出来事だとしても、僕は遠くの別の世界で、こっそりそれを祝福するよ。
……どうして悲しい顔をするんだい?
——そうか。なるほどな。(呆れたように笑う)
僕の気持ちには応えられない。けれど、僕とは友人でいたい。……ということだね?
光栄ではあるよ。物凄く、有難いことだ。
でもね、先輩。先輩は、ちょっとばかり優しすぎるよ。
そもそも、先輩が僕と親しくしたのは、優しさだろ?
自分を慕ってくれる僕に恩を感じた。だから自分の信条に基づいて、先輩は僕にフォローを返したんだ。そうして僕に、缶ジュースを奢ったり、勉強の悩みを聞こうとしたりした。僕に気持ちを返したかったんだね。わかり易い「お礼」を渡そうとした。
だけどね。先輩は、誰にだってそうする筈だよ。
誰に対しても分け隔てなく、平等に、公平に接する。そこに於 いて、僕は一人の後輩でしか無いんだ。
僕はね、もう後戻りできないんだ。
ファンから後輩になった時、望んでしまったんだ。特別になることを。これ以上の幸福を。
有象無象の一人ではない、”僕”という生身の人間を、受け入れ、愛 でて、生涯独占して欲しい。
僕の穢 れた心も、人間くさい欲望も、他人に見せられない恥も、全部全部ぜんぶぜんぶ、愛して欲しい。
……でもね、先輩には無理だ。
先輩は、日の光の下 を歩む人種なんだ。日の当たらない場所でぐちゃぐちゃとした愛憎を抱え燻 っている僕みたいな人間は、不相応なんだよ。
先輩が善意で僕に応じている以上、真の友人関係はそこに無い。先輩だけが歩み寄っている構図になるからね。僕から何も返せない。
先輩は、日陰にいる僕に手を差し出そうと近付いてくるだろう。僕はもう、その手を下心で掴むことしか、できないんだよ。
つまりね。
先輩は、今だって、僕本位に考えているんだよ。僕がファンとして好意を示し続けたことに、報いたいんだろう?まだ好意の返済が終わっていないと思っているんだろう?
言った筈だよ。僕は幸せだって。もう十二分に思い出を貰った。僕はこれさえあれば、これからも生きていける。
僕は、日陰に堕ちる覚悟の無い人間を引きずり込むような真似はしたくない。
きらきらとした思い出のまま終わりたいんだ。同情や義務感で関係を続けてもらうには、僕はあまりに不出来な人間だからね。
まっさらに戻そうか。
僕らの関係を、交わりを、無かったことにして欲しい。忘れて欲しい。
僕の最後の我儘、聞いてくれるかい?
……ありがとう。
それじゃあ、ここでお別れだ。
楽しかったよ。先輩に出会えて——幸せだった。
短い間だけれど、その笑顔を僕に向けてくれたこと、忘れないよ。
それじゃあね。来世でまた出会えたら、その時は僕が先輩を幸せにするよ。
(足音のSE)
(ここから独り言)
さて、このアカウントは消さないといけないね。
(通知音のSE)
……先輩の新しい投稿?
(呆れるように笑いながらも嬉しそうに)
——幸せだったよ、か。
さようなら、先輩。
もう、ふたたびお目にかかることはないけれど、僕は少しだけ、シンデレラになれた気がしたよ。
今の話、聞いてなかっただろ。
……っふふ、いいよ、全然。僕はその程度で怒ったりしない。
でもね、せっかくこうやって話せる関係になったんだから、この貴重なひと時を存分に味わいたいんだ。
だから、今は僕に集中して。いいね?
……よし、いい子だね、先輩。
にしても、どうして僕に構ってくれるんだい?
だって、先輩からすれば、僕はタメ口で一方的に絡んでくる得体の知れない女の子、だろ?
どうしてあの日、僕をフォローバックしてくれたのか、どうして、先輩のSNSを監視しているかのような人間を邪険にしないのか、どうして、むしろ迎え入れるのか……。
一般的な尺度で見たら、僕は”異常”の範疇に入るだろう? 先輩のSNSの投稿すべてにリプライを送るような人間だからね。
それを、先輩は他の個体と同じように平等に接するどころか、自分の世界、しかも「現実世界」に干渉させる。
危ういね、実に危うい。危機感がないよ。まぁ、僕が言うことでも無いんだけどね。(ひとり笑う)
ねぇ、先輩? 教えてよ。
なぜ先輩は、僕を歓迎するんだい?
……なるほど。(明るく、少し呆れたように笑う)
僕が、先輩の「他の」部分に無闇に干渉してこないから、攻撃性は無いと判断したんだね。
例えば、先輩の鍵アカにフォローリクエストを送ったり、現実世界の先輩に自ら接触しようとしたり。そういうことをしないから、言わばただの「ファン」だと思った、というところかな。
そして、このような自分のファンになってくれるような人間に、何かを返したいと思った。
お人好しだね、先輩は実に人がいい。
でも、それが先輩らしくもある。
(先輩に聞こえないようにひとり呟く)
そういうところに僕は惹かれたんだよ。
……いいや、何でもない。
あぁ、先輩の鍵アカのことかい?
知っていたよ、おすすめに出てきたからね。
でも、自ら探し出すようなことはしていないよ。それは僕のポリシーに反するから。
ねぇ、先輩?
——やっと、”合法的”に話せるね。
先輩。僕はね、アイドルとファンで良いと思っていたんだ。
僕は、先輩の人となりに触れたいと思った。遠巻きでも構わない。先輩の信条、価値観、思想、憎めない人間らしさ。そういうのを、一人の「ファン」と思われても良いから、僕の中に”記録”したかったんだ。
僕と先輩だけの、オンラインだけでのやり取りは、まるで秘密の逢瀬のようで、婚前の恋人たちの文通のようで……僕に”夢”を見せてくれた。
僕だけがそう思っていただろうね。でもそれで良かったんだ。夢から覚めて現実にいる時も、また夢の続きを見られるだろうという希望が、僕を強くさせてくれた。
——今までは、ね。
先輩は、罪深い人だね。
(笑いながら) なぜって、僕に「蜜」を与えたからだよ。
あの日、先輩は僕をフォローバックした。
この意味、
先輩。先輩はね、僕を「対等な世界」に招き入れたんだ。
相互フォローになった僕たちは、”アイドルとファン”から、普通の”先輩後輩”になったんだ。
それは、僕にとっては未知の、新しい輝いた世界の始まりだった。
認められた気がしたんだ。僕の信条、価値観、思想を、先輩が受け入れ好ましく思った。そんな心地がしたんだ。まさに夢見心地だった。
当初の僕はね、先輩に触れられればそれで良かった。現実では離れていても、インターネットの世界で少しだけ触れていられる。それだけで十分幸せだった。
でもね、今は——触れて欲しいんだ。他でもない先輩に、僕の心の奥底を知って欲しい。理解して欲しい。触って欲しい。僕を撫でて、微笑んで欲しい。
さっき先輩が聞いていなかった話、もう一度しようか。
先輩。君の、君からの”通知”だけが、僕の世界だったんだ。
僕の世界を作ってくれてありがとう。そして……壊してくれてありがとう。
僕はね、どう転んでも幸せだ。
君と会って、話せた時間、君に直接笑顔を向けてもらったこと、その刹那の積み重ねが、僕に人間らしさをくれた。人間らしい「欲望」をくれた。
……——意味、
っはは、処理し切れていないようだね。わかった。
じゃあもっと直接的に言おうか。
これは愛の告白だよ。
君が好きだ。
欲を言えば、そうだね……恋人関係ってやつを望んでいるのかもしれない。
でも言っただろ? どう転んでも幸せだって。僕はもう、幸せを十分享受した。だから、君にも幸せになって欲しい。真の幸せを手に入れて欲しい。たとえそれが、僕と違う世界の出来事だとしても、僕は遠くの別の世界で、こっそりそれを祝福するよ。
……どうして悲しい顔をするんだい?
——そうか。なるほどな。(呆れたように笑う)
僕の気持ちには応えられない。けれど、僕とは友人でいたい。……ということだね?
光栄ではあるよ。物凄く、有難いことだ。
でもね、先輩。先輩は、ちょっとばかり優しすぎるよ。
そもそも、先輩が僕と親しくしたのは、優しさだろ?
自分を慕ってくれる僕に恩を感じた。だから自分の信条に基づいて、先輩は僕にフォローを返したんだ。そうして僕に、缶ジュースを奢ったり、勉強の悩みを聞こうとしたりした。僕に気持ちを返したかったんだね。わかり易い「お礼」を渡そうとした。
だけどね。先輩は、誰にだってそうする筈だよ。
誰に対しても分け隔てなく、平等に、公平に接する。そこに
僕はね、もう後戻りできないんだ。
ファンから後輩になった時、望んでしまったんだ。特別になることを。これ以上の幸福を。
有象無象の一人ではない、”僕”という生身の人間を、受け入れ、
僕の
……でもね、先輩には無理だ。
先輩は、日の光の
先輩が善意で僕に応じている以上、真の友人関係はそこに無い。先輩だけが歩み寄っている構図になるからね。僕から何も返せない。
先輩は、日陰にいる僕に手を差し出そうと近付いてくるだろう。僕はもう、その手を下心で掴むことしか、できないんだよ。
つまりね。
先輩は、今だって、僕本位に考えているんだよ。僕がファンとして好意を示し続けたことに、報いたいんだろう?まだ好意の返済が終わっていないと思っているんだろう?
言った筈だよ。僕は幸せだって。もう十二分に思い出を貰った。僕はこれさえあれば、これからも生きていける。
僕は、日陰に堕ちる覚悟の無い人間を引きずり込むような真似はしたくない。
きらきらとした思い出のまま終わりたいんだ。同情や義務感で関係を続けてもらうには、僕はあまりに不出来な人間だからね。
まっさらに戻そうか。
僕らの関係を、交わりを、無かったことにして欲しい。忘れて欲しい。
僕の最後の我儘、聞いてくれるかい?
……ありがとう。
それじゃあ、ここでお別れだ。
楽しかったよ。先輩に出会えて——幸せだった。
短い間だけれど、その笑顔を僕に向けてくれたこと、忘れないよ。
それじゃあね。来世でまた出会えたら、その時は僕が先輩を幸せにするよ。
(足音のSE)
(ここから独り言)
さて、このアカウントは消さないといけないね。
(通知音のSE)
……先輩の新しい投稿?
(呆れるように笑いながらも嬉しそうに)
——幸せだったよ、か。
さようなら、先輩。
もう、ふたたびお目にかかることはないけれど、僕は少しだけ、シンデレラになれた気がしたよ。
クレジット
ライター情報
私自身も声の活動をしています。
少しずつ台本を投稿できればと思いますので、何卒よろしくお願いいたします!
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事前に当方へご相談ください。
使用条件を確認させていただき、当方にて検討いたします。
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