「クリスマスの予定、空いてますか？」
そう後輩に言われ、淡い期待を抱くも無残にシフト交代を突き付けられたあなた。
失意の中でイブに家に帰るとそこにはシフトを交代したはずの後輩がいて…

先輩！今日も閉店時間までアルバイトお疲れ様でした。
店長から先輩と私の2人分の廃棄貰ってきたんですけど、
モンブランとココアロール、どっちにしますか？
私が先に選んでいいんですか？
…！！ありがとうございます。
それじゃあ遠慮なく…
ココアロールの方、貰っていきますね。
あ、さっき店長からついでに今年のクリスマス限定ケーキの試作品も貰ってきたんですけど…はい。
先輩の分もちゃんと貰っておきましたよ。
今年もブッシュドノエルで行くらしいですね。
毎年大人気で、予約分すらすぐに売り切れちゃって。
だから去年は食べられなかったんですよねー。
今年こそは私も食べたいなって思ってるんです。
それだけが去年のクリスマスの心残りにして、今年の目標なんです。
随分としょぼい目標だなって…酷いじゃないですか！
これでもこの日を楽しみに1年間頑張ってきたんですよ？
って言うのは流石に言い過ぎですけど、
そう言う先輩は今年のクリスマスの目標…と言うか、予定とかって無いんですか？

ちょっ、そんなに落ち込まないでくださいよー。
私はただ単に先輩のクリスマスの予定を聞いただけじゃないですかー。
確かに私からしても先輩のクリスマスの予定が詰まってるなんて最初から思ってませんでしたけど。
別に先輩を虐めるような意図は最初からありませんでしたよ？
それに…

// 甘めの声で

もし、先輩が当日フリーだったら、私のささやかなお願い事を聞いて欲しいな、って思ったんですよ？
そうです。クリスマスのささやかなお願い。
先輩にしか頼めない、特別なお願いなんです。
聞いて…くれますか？
…！！嬉しいです！ありがとうございますっ、先輩！
それじゃあ…

// 声の調子を戻す

クリスマスイブのシフト、代わってください。

あれ？どうして固まってるんですか？
はい、ちゃんとクリスマスイブのシフト、代わってください、って言いましたよ？
私、クリスマスは大切な人と過ごすって最初から予定立ててるんです。
でも当日は見事にシフト入っちゃってて、代わってくれる人を探してたんですよねー。
そしたら先輩が快く代わってくれるって言うから、こうしてお願いしたってだけです。
シフト代わってくださってありがとうございます。
当日は先輩の分まで思いっきり楽しんできますね！
あ、私のシフトは6時までですので、そこまでで大丈夫ですよ。

あれ？
せんぱーい、聞こえてますかー？
あらら…完全に放心しちゃってる…。
せんぱーい、シフト変更の話、店長につけてきますからねー。

// 場面転換、当日の午後5時ころ

// SE 入店音

こんにちはー。
ブッシュドノエル2人分予約してた（演者名）でーす。
予約の品を取りに来ましたー。
あ、先輩！クリスマスイブ当日もお仕事お疲れ様です。
はい！今年はしっかりブッシュドノエル予約出来ました！
食べるのが今から楽しみで仕方ないです！
と言うことで先輩、お客さんの楽しみを奪わないためにも、早いところケーキ、出してください。

// ケーキを手渡す

ありがとうございます。
相変わらずの手際の良さ…流石は先輩です。
やっぱり先輩は働いてる姿が1番輝いて見えますね。
よっ、イブのバイト達人！
って、ちょっとからかい過ぎちゃいましたか？
ひょっとして…怒りました？
ですよね！これくらいなら先輩は怒ったりしないって事、私知ってましたし。
それに…今は5時過ぎ、あと1時間もしないうちにシフト交代じゃないですか。
あとちょっとですよ、頑張ってくださいね、先輩。

// ちょっと声抑えめで

それでバイトから上がったら、寄り道せずに真っ直ぐ帰ってきてくださいね？私、待ってますから。

ん？私は別に何も言ってませんよ？今日のこの時間帯は凄く混んでますし、誰かの声と聞き間違えたんじゃないですか？
それでは、あんまり長居しちゃうと他のお客さんにも迷惑ですし、私としても幸せな時間が待ってるので、この辺で失礼しますね。
このケーキは大切な人とゆっくり食べることにしますね、ではでは、お仕事頑張ってくださいねー！

// 場面転換　6字過ぎ頃、男性の家


（鼻歌）（クリスマスソングなど）

さて、もう6時になったしそろそろ先輩も帰ってくる頃かな〜。
お部屋の飾り付けも手料理の調理も大体終わったし、あとは料理の仕上げと盛り付けをパパッとやって先輩を玄関でお出迎えすれば…

// SE 家のドア開閉音

あれっ！？せ、先輩！？
なんでこんなに早く帰ってきてるんですか！？
まだ6時まわってすぐですよ！？
先輩がサンタさんになって私に夢と幸せを届けに来るには早すぎます！
帰ってくるまであと15分くらいはかかると思ったのに…
店長が事情を察して早めに上がらせてくれたんですか？
おかしいな…店長には何も伝えてなかったはずなんだけどな…
折角シフト代わってもらったのに5時過ぎにわざわざ1人でケーキを取りに来て、しかも先輩と楽しそうに話してたから間違いないって言われて帰らされた…帰ってきたら案の定だった、と。
全く店長め…気遣いの方向性が見当違いですよぉ…

// 開き直って

そうですよ、私は最初からイブの夜は先輩と過ごすって決めてました。
そのためにこうしてサプライズしようって考えて、
当日の6時までって中途半端な時間のシフト入れて、
先輩にそのシフトを押し付けて、
私だけが自由に動ける時間を作り出して…
ここまでの根回しするだけでも相当苦労したんですよ？
そこからさらにケーキ買って、
部屋の飾り付けして、手料理作って、
あわよくばそのまま告白したり、さらには組んず解れつな性なる夜を過ごそうって計画だったのに…
それがこんな形であっさりバレるなんて、ほんと、台無しですよ。
はぁ…折角、先輩に喜んで欲しくて計画してたって言うのに…
この責任、どう取るつもりなんですか？
え…！？確かに今日の晩を一緒に過ごしてくれるって言う提案は魅力的ですし、
何より私が望んでいた事でもありますけど…本当にいいんですか？
計画がご破算になった今、わざわざ私と一緒に過ごす義理は無いんですよ？
友達と一緒になって騒ぐとか、1人で拘りの一夜を過ごすとか…他にも色々とやりようはあるんじゃないですか？
まぁこのまま先輩が何処かに出かけて行ったら私は私でここで1人寂しくやけ食いしますけど。
……え？何か料理の中で気になる物があるんですか？
そのローストビーフですか？
あとは冷蔵庫からソースを取り出してかけるだけですけど…
もしかしてどこかに持って行って友達とかの誰か他の人と食べるんですか？
先輩のために作ったわけですから、私としてはそれでも構わないですけど…
一緒に食べよう、って…いいんですか？
私の事なんて別に考えなくたっていいんですよ？
これは私が勝手にやった事ですし、帰れって言われればすぐにでも帰りますし、それに…それに…

私の素直な気持ち…ですか？
それは…その…先輩と一緒に食べたい…です。
わかりました、それではお言葉に甘えて一緒に食べましょう。
最後の準備を済ませるのでちょっとだけ待っててくださいね。
あっ、別に手伝ってもらわなくても大丈夫ですよ？
そんな、私と一緒に過ごせて嬉しくなったから俺も何かしたい、なんて言われたら断れないじゃないですかー。
それなら…先輩は盛り付けが終わったお皿をテーブルまで持って行って下さい。
先輩との共同作業…
バイト先ではいつもやってるけど、こうして先輩の家ですると…なんだか夫婦みたいですね。
…‼︎今のは聞かなかった事にしてください。
すっごく恥ずかしいので…。

// 食後

お粗末様でした。
どうですか？美味しかったですか？
普段の会話から先輩が好きそうな料理と味付けにしたつもりだったんですけど…
そんな、褒めすぎですよ。
でも嬉しいです。毎日でも食べたいなんて言ってくれて。
もし先輩が良ければ本当に毎日でも作りますよ？
と言ってもこんなに豪華なものを毎日、って訳にはいきませんけど。
真心込めた、文字通り毎日食べたくなるような料理、作ってあげますよ、なんて。

// お互いしばし無言に
// 無言に耐えかねたように

その、わたしっ、ケーキ、持ってきますね。
ケーキ持ってくるだけですからね？本当ですよ？
本当にケーキ持ってくるだけですから、絶対に、覗いたりしないでくださいね？


お、お待たせしました…

// ミニスカサンタコスで出てくる
// 恥ずかしそうに

じゃ、じゃーん…。ど、どうですか？
サンタのコスプレしてみたんですけど…
似合ってますか…？
今日は後輩サンタが先輩にプレゼントを届けに来ましたー。
と言っても特に何も持ってきてないので、プレゼントは私、って事になりますけど。
もっと言えば、クリスマスイブの予定と恋人のプレゼント、です。
もしよかったら受け取ってください

…放心、してるんですか？
その、ずっと黙っていられると自分で言った言葉がどんどん恥ずかしくなってくるんですけど。
感想でも要望でも何でもいいので何か言ってください…

えぇ！？見惚れてて全く聞いてなかったんですか！？
うぅ…
それならもう一度だけ言いますから、ちゃんと聞いててくださいね？
こんな事言うのすっごく恥ずかしいんですから。

// 呼吸音、意を決した感じで

後輩サンタから先輩に私っていうプレゼントを持ってきました。
今ならイブの夜の予定まで付いてきます。
先輩のことが好きすぎるが余りに突然サプライズを企てちゃうような危なっかしい面があって思わず先輩を揶揄う事があれば照れ屋になる時もあるけど、料理の腕には自信があって、何より先輩の事を一途に想う気持ちは誰にも負けない、そんな私。
それが、後輩サンタからのプレゼントです。

…その、この流れで言うのもずるい気がしますけど、
もしよければ先輩サンタからも何かプレゼントが欲しいです。
それも具体的なものじゃなくて、もっとこう…概念的な？
それこそ、私が先輩にあげたようなプレゼントが欲しいなあって思っているんですけど…ダメ、ですか？

…また黙って俯かないでください。
私もどうしたらいいかわからなくなっちゃいます。
やっぱり先輩からのプレゼントは無し、なんですか…？

あっ…
// 抱き寄せられる

もう…混乱して声が出なくなったからっていきなりハグですか？
仕方がない先輩ですね。ぎゅーっ。
その…今のハグが答え、って言うことでいいですよね？

…‼︎嬉しい。先輩と飛びっ切りのプレゼント交換しちゃいました。
あ、言うまでもないかもしれないことですけど、私からのプレゼントは返品不可、ですからね。
もちろん先輩からのプレゼントも返品するつもりはありませんから。
本当は他にもちゃんとした実物のプレゼントも準備したかったんですけどね。
サプライズの飾り付けや料理にお金使いすぎて気がついたらバイト代半月分が吹き飛んでました。
だから無理だったんです…ごめんなさい。
その分、愛情込めて料理は作りましたし、何より先輩に喜んで貰えたのでよし、ですね。
お陰でようやく先輩に思いっきり甘えられるようにもなりましたし。
先輩、大好きですよ。

ふぇ？何か忘れてること…？
あっ、そうだ。ブッシュドノエル…
確かにこの間まではこれを食べるためにクリスマスを待ってた、って言ってましたけど…
でも今はケーキよりも先輩に甘えていたいです。
ダメ…ですか？
あ！それなら先輩が私にあーんってしてください！
そうすれば先輩に甘えたままケーキが食べられます！
せんぱーい。私に食べさせてくださーい、
あーんっ。
わあぁ…！
ココアロールのふわふわ加減はそのままにいつも以上に濃厚なクリーム！
この味を私は求めていたんです！
ほらほら、先輩も食べてみてください！
あーん。
ふふっ、先輩もお顔蕩けちゃってますよ。
よっぽど美味しかったんですか？
それじゃあもう一口、あーん。
あっ、1人で何度もはずるいです。
次は私にください。あーん。

// 場面転換　ケーキ完食

ご馳走様でした！
沢山のご馳走、それに初めて食べるケーキ、そして先輩と2人っきり…
こんな素敵なクリスマスイブの夜は初めてです。
先輩に料理を美味しいって言ってもらえたのも嬉しいですし、ずっと憧れだったケーキもとっても美味しかったんですけど…その…
じーっ。
少しだけ、ふと気になった事があるんですよ。
さっき食べたブッシュドノエルと先輩の唇。
どっちの方が美味しいのかなあって。
確かめてみてもいいですか？
とは言いつつ、勝手に調べちゃいますね。

// （リップ音、キスした事がわかればOK）

んー。
ブッシュドノエルの方は食感と甘さとを兼ね備えていて、口の中を幸せにするって感じがしました。
先輩の唇の方は何というか…頭が痺れるって言うような身体が無意識にもっと求めちゃうような…危険な甘さ、って感じがしました。
わかりきってた事ですけど…
全然違うベクトルの良さがあって優劣はつけられそうにないですね。
でも…先輩の唇の方はおかわり自由、ですもんね。
だからもっと求めちゃいます！

// キス数回。

先輩？さっきから私ばっかり甘えてますけど、もっと先輩から求めてくれてもいいんですよ。
今日は聖なる夜なんですから。私としてはもっともっと性なる夜を先輩と過ごしたいです。
なんて、ちょっとベタすぎましたか？

ひゃっ！
// 押し倒される

あーあ、押し倒されちゃいました。
先輩も性なる夜を過ごしたくなっちゃいましたか？
それも…私と。
ねぇ先輩、この格好いくら暖房が効いている部屋と言えど流石に寒いです。
それなのにさっきのキスでもう身体中が熱くなって…なんだか変な感じします。
だから先輩から欲しいもの、沢山もらっていきますね。
代わりに先輩の欲しいもの、なんでもあげちゃいますから。
いいですよね？
だって今日の私は先輩だけのサンタで、先輩は私だけのサンタですから。

今年のクリスマスの夜は長くなりそうですね、先輩。

・台本（ゆるボイ！）
クリスマスイブにバイトから帰ったらシフト交代したはずの後輩がいました
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
えとのわーる(Stella)