坊や。抵抗はやめて大人しく降伏したほうが身のためよ。

この地上で生き残っている吸血鬼は坊やただ一人。

もうどれだけ抵抗しても無駄よ。諦めなさい。

大人しく殺されるつもりはないって…

なら、殺すつもりはないって言ったら、降伏してくれる？

嘘じゃないわ。

今この場にわたししかいないのがその証拠。

もし殺すつもりなら、それこそもっとたくさんの兵を用意して囲えばいいだけの話だと思わない？

人間のわたしがわざわざ生身でたった一人、吸血鬼である坊やに立ち向かう必要はないでしょ？

お前なら手負の吸血鬼一人くらい余裕で狩れるだろって…

ふふっ、ずいぶん高く見積もられたものね。

ま、いいわ。

人間に不信感しか抱いていない坊やを口で説得できるなんて、最初から思ってなかったから。

ちょっと手荒な真似になるけど、坊やのこと捕まえさせてもらうわね。

(押し倒す)

はい、捕獲完了。

残念ながら、坊やではわたしには勝てない。

これでもわたし、人類最強だなんて言われてるのよ？

ん？覚悟は決めた？

そう…仲間の元に送ってほしいのね。

けどダーメ。坊やのお願いは聞き入れてあげない。

だってわたし、坊やのこと飼いたいって思ってるもの。

ふふっ、そうそう。

人類最強様のペットになれるのよ？光栄に思いなさい。

あらあら…そんなに暴れなくても…

わたしのペットになったら、坊やにとっては二つメリットがあるわ。

一つ目。お腹が空いてたまらない坊やに、わたしの血を飲ませてあげる。

ホントは骨の髄までしゃぶりつくしたいんでしょ？

え？そんなことしたら、お前が死ぬって？

ふふふ、ご心配なく。

輸血装置はちゃんと用意するし。

なにより、自分の命くらい自分で守れるわ。

そう、坊やに死ぬまで血を取られるつもりはないってこと。

二つ目。絶滅危惧種の吸血鬼がもう一度繁栄するチャンスを与えてあげる。

どういうことかって…

ふふふ…坊やったら、そんなに鈍いタイプじゃないはずよね？

わたしと子作り、しましょ？

あら、わたし一回でもそんなこと言ったかしら？

吸血鬼の絶滅が人類の悲願だなんて…

それは頭の狂った一部の連中が、勝手に喚き散らしてるだけよ。

吸血鬼が全滅の憂き目をみているのも、そういう連中が権力を握っているから。

それはともかく…坊やにならわたしの身体、預けてもいいわよ。

意味がわからない？

じゃあ分からせてあげるわね。こうやって…

(ディープキス)

どう？わたし、これでも坊やにはゾッコンなんだけど。

仲間のために命をかけて戦う坊や、とっても素敵だったわ。

こんな勇敢で優秀な血が絶えてしまうのは勿体ないって思ったの。

ねぇ、坊や…どっちの条件も、坊やにとっては最高のメリットだと思わない？

ふふ、安心して。

実験用のペットではなくて、愛玩用のペットだから。

もちろん、拷問なんてしないわ。

むしろ坊やがダメダメになるまで、可愛がってあげる。

あーあ…そんな「意地でも抵抗してやるぞ！」って顔されたら、ますますいじめたくなっちゃうじゃない。

さて、どっちが先がいいかしら…

坊やに先に血を飲ませるか、子作りを済ませてしまうか。

ん？先に血を飲みたい？

ふふっ、そーいうこと…

いいわよ。首筋、開けてあるから。

坊や、力を取り戻してわたしを殺すつもりでしょ？

ふふっ、それくらいお見通しよ。

坊やが一発逆転を狙うとしたら、そこしかないものね。

けど逆に言えば、そこさえ抑えてしまえば、わたしの完全勝利となるわ。

そう、これは戦い。

坊やが血を吸ってわたしを殺すか、わたしが坊やを抑え切るか…

あははっ！やっぱり戦いはこうでないと！

人間側のワンサイドゲームなんて、つまらないと思ってたのよねぇ！

生死をかけてお互いの命を削り合う…

それが戦いの醍醐味ってものでしょ？

いいわよ。全力でかかっておいで。

坊やのこと、必ず手に入れてみせるから。

ふふふっ…さぁ、最後の戦いを始めましょう。

・台本（ゆるボイ！）
俺には人類最強の女兵の誘いに乗るしか道が残されていなかった
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
松平蒼太郎