魔王討伐に成功した勇者一行。一般家庭の出のあなたと彼女は旅の中で親交を深めていた。
実力だけで成り上がったあなたは、勇者と一緒に魔王を倒せばもっと名が上がると思っていたが実際は勇者ばかりが持ち上げられ、あなたの思い描いていた光景は空想のままに終わった。
自暴自棄になったあなたは酒に逃げるようになっていった。

後に、居心地の悪い自国を捨て、魔王討伐の功績を武器に彼女の考えた謀略で他国を乗っ取り、彼女はあなたを王にすることに成功した。子宝にも恵まれ、二人は幸せを手に入れた。
だが、あなたの中にある勇者への妬みも姫への憧れも消えることは無かった。それはあなたの心を蝕み、遂には勇者を殺し、姫を手に入れることを目的にした戦争を始めた。

お疲れ様です。勇者様、すごい人気ですよね。都に帰ってきてから毎日人だかりの中心にいる。

　おかげで私たちはこうして二人きりになれるんですけどね。勇者様が引き受けてくれなかったら私達の所に来ていたでしょう。

　……勇者様自身、民衆に囲まれるのが好きな人ですから、姫様は気が気でないでしょうね。

　あの、せっかく二人きりなんですからこっち向いてください……。勇者様が気になるのは分かりますけど、私を見て欲しいです。

……何が不満なんですか。勇者パーティの一番槍として多大な評価と報奨を貰いましたよね。それとも私のような貧相な体では満足いただけませんか？姫様が良いのですか……？

　私だけを見てください……。勇者様も姫様ももう私達とは関係ないじゃないですか。私はもう、あなたの事しか見えていません。大きくて優しいあなたの背中が大好きです。だから……。

______________________

　あなた、今日は、絶好のピクニック日和ですね。子ども達もはしゃいでます。

　もうっ！いつもいつもそんな険しい顔をしていないで下さい。子ども達が緊張しちゃうでしょう。戦争の真っ最中だろうと今はこのピクニックを楽しんでください。

　分かっていますよ。昔は共に戦った戦友ですものね。迷いが生じるのは仕方ないですよ。 　でも、あなたが王になって、勇者の国と対立関係になったのはあなたが望んだことです。私一人の体では満足できず、姫様をも求めたあなたの責任。 　どうなろうとお側にいますから……。不安な気持ちも、妬む気持ちも、全て理解している私に預けて下さい。あなたは戦争に勝つ事だけを考えて。

______________________

　あの勇者を敵にしたのが間違いでしたね。彼の強さは私達が誰よりも知っていた筈なのに。 　瓦礫の下敷きになれたおかげであなたと最期の言葉を交わすことができる。

　まずは、謝らせて下さい。私はあなたに依存し、あなたの自由を奪ってしまった。優しいあなたは好きでもない私と結婚して子どもを二人も作って下さった。ごめんなさい。そして、ありがとうございます。私はこの上なく幸せでした。 　そしてもう一つ、死ぬ間際だというのに、あなたのそばで死ねる事に悦びを感じてしまっています。無念であろうあなたに失礼ですよね。こんな悪女で申し訳ありません。

　……今、なんと？私の事を愛していると、仰いましたよね。 　口下手で照れ屋なのは知っていましたが、愛していただけているとは思いませんでした。人生最期の時にこんな幸福でいいのでしょうか。 　本来であれば子ども達の心配をするべきなのに、私は今あなたと愛し合えていた事実だけで幸せに溢れている。

　あなた、私の生涯はあなたのおかげでとても幸せなものでした。ありがとう。……さよなら。

・台本（ゆるボイ！）
勇者パーティのじゃない方同士で結婚してみた
https://twitter.com/yuru_voi

・台本制作者
光谷えま